それは、奇妙な出会いだった。
 ある夏の暑い日。二人は自転車同士の事故で出会った。原因は、39度の熱があるのに学校へ行こうとしていた和歌のせいである。ふらふらと、自転車を漕いでいるものだから幸人がぶつかっててしまったのだ。幸人は、和歌の熱に気づいて病院に連れて行った。もちろん親も来たが、その対応は酷いものだった。
母 「あら 病院に来なくても良かったのに」
幸人 「は?何言ってるんだ?39度も熱があるんだから病院来て当たり前だろ」
母 「そうかしら。ほっとけば治るわよ。」

幸人は、これ以上話しても無駄だと思った。

母 「あなたも、余計なことしてくれたわね。これじゃあ診察料がかかるじゃない」
幸人 「娘より金ですか。本当に親ですか?」
母 「血は、繋がってないけど一応ね」
和歌 「もうやめて お母さんが私を疎ましく思ってるのは、わかってるからさ。君もありがとう!」
幸人 「……。」
 それから、幸人と和歌は、毎日一緒に登校するようになった。連絡先も交換した。お互いが、好きになるのも時間の問題だった。二人が出会った日の1年後、幸人は和歌に告白した。はれて二人は、付き合うことになった。付き合い出した頃から、和歌の家庭環境はどんどん悪くなっていった。幸人は、そのことを知らされて無かった。知ることになるのは、和歌が殺された時だった。それは、衝撃的なニュース。16年前まだ0歳の子供の母親を殺した事件があった。真相は、後妻が犯人で、その子供も16歳になってから殺した。その家は、和歌の家だった。幸人は、もっと和歌から家庭環境を聞いていれば、そう思わずにはいられなかった。それは、寒い冬の朝だった。
 その日の夕方、不思議なゲーセンに出会った。そのゲーセンは、チェーン店ではないようだし今までには見たこともない商品が沢山並んでいた。そのゲーセンで強いゲーム機に勝てば、死んだ人と10分だけ話せるという。もちろん幸人は、そのゲームをプレイした。何回かやった時やっと勝てた。そしたら手鏡が機械から出てきた。そこには和歌が映っていた。
和歌「久しぶり。まさか話せる日が来るなんてね。」
幸人「本当だね。早速本題に入るけど、何で言ってくれなかったの?僕だって、君の役にたちたかった。」
和歌「何でだろうね。貴方といれるだけで私は幸せだったの。殺されるかもと思っても、貴方がいればそれで良かった。未来などなくても、私は今が幸せだからそれで良かったの。生きてても辛いことしかなかったのに、貴方が幸せにしてくれた。それだけでいいの。」
幸人「僕はそれだけじゃ駄目だった。僕は、君との未来を描きたかったよ。君には…………君だけには、生きてて欲しかった。」
和歌「そう言って貰って生まれて良かった。嗚呼そろそろタイムリミットだ。じゃあまた生まれ変わって出会えたら、一緒に幸せになろうね。バイバイ」
幸人「……。」
彼女のためにも、僕は幸せになろうと心に決めた。気づいたら手の中にあった手鏡は消えていた。

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