と言うわけで、奏お姉ちゃんと一緒に帰ることになった。しかし、奏お姉ちゃんは生徒会の仕事があるので、それまで私と楓は図書館で待っていることにした。
待っているといっても暇なので、私と楓は本を読んでおくことにした。
私は朝の読書時間に読んでいる本を読むことにした。なので、本をカバンの中から取り出して読み始めた。
ちなみに読んでいるのは、女の子が沢山出てくる異世界ファンタジー小説だ。私らしいと言えば私らしいか。
一方の楓は、図書館のどこから探してきたのだろうか。料理本を何冊も持ってきて、読み出していた。
本を読んでいる楓は目を輝かせている。そして、ページをめくるスピードも早い。普段の楓からは想像もできない早さだ。
そんなに面白い本なのだろうか。料理本で面白いとは一体どんな内容なのだろうか。
気になった私は楓の背後に立ち、気づかれないように本の内容を見てみた。
えっと……、これは肉じゃがのレシピ。次のページにとんだ。これは筑前煮のレシピ。それで次は、ひじきの煮付け。
本の内容はいたって普通のレシピ本という感じだった。一応プロの料理人が監修しているっぽいが、私が見た感じ何か目を輝かせて面白いと思う要素はない。
何が楓を惹きつけているのだろうか。私は気になって仕方がなかった。
「ど、どうかしましたか?」
背後に立っていた私に気付いたのか、楓は後を振り返っていた。
「あっ。えっとねえ、楓がすっごい面白そうに見ていたから何が面白いのか気になって……」
私は正直に思っていた事を答えた。まあ誤魔化すようなことでも無いしね。
私がそう言うと、楓は少し恥ずかしそうにしていた。
「実は、私料理が大好きなんです。だからこうやってレシピ本とか見ちゃうとつい興奮して読んじゃうんですね」
なるほど。楓は料理が好きなわけか。これは意外な発見だった。これは一緒に図書館にいないとわからなかったことだ。私はちょっと得した気分になった。
「へえー。私は本が面白いからかなあって思ってたけどそうだったんだ」
「面白い料理本があれば、それはそれで見てみたいですけどね」
楓は軽く笑いながら言った。
「けど、料理が大好きってことは腕にも自信があるのかしら?」
「そうですね。人並み以上にはできると思います。色んな研究をしているので」
楓は自信満々と言った感じだ。こんなに自信ありげな楓は初めて見た。こんなに自信があるなら、さぞ美味しいことだろう。私は楓の料理が食べてみたくなった。
「そんなに自信があるなら、一度でいいから食べにきてみたいなあ」
私がそう思ったことを口にすると、
「あ、あのっ。言ってくれれば作りますんでっ。いつか家に来てくれませんかっ?」
楓は少し固い声と赤みがかった頬をしていた。
ここまで楓が言うんなら一度行ってみたいものだ。
「いいわよ。いつか都合のいい時に連絡するね」
「おっ、お待ちしていますっ! いつでもどうぞ!」
楓は少し下を向いて目をギュッと閉じていた。
楓がそこまで言うのなら、いつか家に行ってみたいなあ。どんな家なんだろうか。私はまだ行ったことのない楓の家について、想像を膨らませていた。
そんなことを考えていると、ガラッと図書館の扉が開いた。
「美優羽ちゃーん、秋葉さーん。生徒会の仕事終わったから帰ろう」
奏お姉ちゃんの仕事がようやく終わったようだ。私は本をカバンの中にしまう。楓は持ってきた本を元の場所に戻しに行った。
「二人ともどんな話してたの?」
奏お姉ちゃんは微笑みながら聞いてくる。
「楓が料理得意だから、いつか楓の家に行ってもいいかって話をしてたの」
「へえー。ねえ秋葉さん。その時は私も一緒に行っていいかな?」
「いっ、いい……ですよ…………」
奏お姉ちゃんの無邪気な笑顔とは対照的に、楓は苦虫でも噛んだような表情をしていた。楓は何もないと言ったが、奏お姉ちゃんの時だけ露骨に態度を変えてる気がする。
一体何があったのだろう。私はそのことが気になって仕方なかった。
「それでね、会長さんは椅子があると思って座ろうとしたらないから尻餅ついたの。普通座る前に椅子があるか確認するはずなのに、あるって思い込んでて。確認って大事なんだなあって思ったよぉ」
奏お姉ちゃんは今日の生徒会であったエピソードを面白おかしく語ってくれた。私的に生徒会はもっとお固いイメージがあったが、こういう面白いこともやってるんだと感心した。
「生徒会にもそんなイタズラする人がいるのね。生徒会って真面目な人たちの集団ってイメージがあったから、そんなことするイメージがなかったわ」
私がそう言うと、奏お姉ちゃんは笑いながらそんなことないよーと、否定してきた。
「どっちかと言うと、変わった人の集まりだと思うよぉ。もちろんやる時はしっかりやるけどね」
奏お姉ちゃんは楽しそうに語った。
夢にまで見た奏お姉ちゃんとの帰り道。思っていた以上に会話が弾み楽しい。こうやって帰り道ならもしかして、素直に色々なことができるかもしれない。
そうなればもっと大胆なことだって……。私はこれからの期待に胸を躍らせていた。
その一方で気になることもある。楓がここまで一言も喋っていない。顔もそんなに楽しそうに見えない。
普段からそんなに明るい表情をする子ではないが、こんな顔をしているのは流石に気になってしまう。
一体どうしたのか。私が声をかけようとした時だった。
「秋葉さん……、ずっと黙っているけど楽しくなかった?」
奏お姉ちゃんが先に声をかけた。その顔は少し心配そうな顔だった。奏お姉ちゃんも同じことを思っていたらしい。
声をかけられた楓は首を横に振った。
「そんなことないですよ。ただ、お二人が楽しそうに会話をされていたので、邪魔をしてはいけないと思ってただけです」
楓は軽く微笑んでいた。それならいいのだが、楓も会話に入ってくればいいのに。私はそう思った。
「そうなの。ならよかったけど、秋葉さんも会話に入ってきていいんだよぉ」
「あっ、はい。わかりました」
楓は真顔で答えた。それから少しの間、3人の間を沈黙が包み込んだ。
いけない。何か喋らないと。そう思い口を開こうとすると、先に奏お姉ちゃんが言葉を発していた。
「そういえば、秋葉さんと美優羽ちゃんってどうして仲がいいの?」
奏お姉ちゃんは不思議そうにしていた。
「えっと、話しているうちに仲良くなったよね。楓?」
私が楓に問いかけると、楓は何故か黙り込んでしまった。少し待ってみたが、何も返事をする気配がない。何か地雷でも踏んでしまったのだろうか。
「か、楓……? どうしたの?」
そう問いかけると、楓は少し驚いていた。
「あっ、そっ、そうですね。私と美優羽さんとは話している間に仲良くなったんです」
楓は少し言葉を噛みながらも答えてくれた。よかった。てっきり仲がいいのは私が思い込んでるだけかと思ってしまったから、そう答えてくれて少し安心した。
「へえー。じゃあ秋葉さんからしたら美優羽ちゃんはどんな人?」
「とても優しい人で、私にとって恩人です」
楓は奏お姉ちゃんの問いに、即答でまっすぐな瞳で答えた。その目には曇り一つすら感じ取れなかった。
「お、恩人なんて大袈裟な! 私はただ仲良くしてるだけだよ」
私は照れ臭くなって楓の言葉を否定した。だが、楓はその目を変えることはなかった。
「いいえ。美優羽さんがどう思っていらっしゃっても、私にとっては恩人で大切な人なんです。奏さんにとってもそうなんでしょうけど、この気持ちは誰にも負けるつもりがありません」
楓はどこか覚悟が座っているようだった。ここまで強く自己主張の激しい楓は、初めて見たかもしれない。
「うわー。なぜか宣戦布告されちゃったよぉ。美優羽ちゃん」
奏お姉ちゃんは口を軽く開いて両手で押さえていた。
「だけど、美優羽ちゃんが他の友達にも大切に思われてるって知って嬉しくなったよぉ。お互い美優羽ちゃんを大事にしていこうね」
奏お姉ちゃんが手を差し出すと、楓はその手をぎゅっと強く握っていた。
「ええ。私負けませんので」
普段の楓からは想像もつかない力強い声で言った。とりあえず、これで仲良くなれたの……かな? それならよかった。私は少し安心した。
そんな事をしていると、私の家の前に着いた。帰り道はこれで終わりだ。
そう言えば、今日の帰り道は誰にもつけられている感覚がしなかった。いつもならもう2、3回は振り返ったり、早足になったりするのにそれもなかった。
「今日誰にもつけられなかった。これ、もしかしたらいいのかもしれない」
私がそう言うと、奏お姉ちゃんは私の手を握ってきた。
「そうなの! じゃあ明日から学校の日は一緒に帰ろう!」
「そうねっ。それで解決だわ!」
こうして、学校のある日は3人で一緒に帰ることになった。これがよかったかはわからないが、3人で帰りだしてからはつけられてる感覚がなくなった。
これでストーカー問題は解決した。私はそう思っていた。
待っているといっても暇なので、私と楓は本を読んでおくことにした。
私は朝の読書時間に読んでいる本を読むことにした。なので、本をカバンの中から取り出して読み始めた。
ちなみに読んでいるのは、女の子が沢山出てくる異世界ファンタジー小説だ。私らしいと言えば私らしいか。
一方の楓は、図書館のどこから探してきたのだろうか。料理本を何冊も持ってきて、読み出していた。
本を読んでいる楓は目を輝かせている。そして、ページをめくるスピードも早い。普段の楓からは想像もできない早さだ。
そんなに面白い本なのだろうか。料理本で面白いとは一体どんな内容なのだろうか。
気になった私は楓の背後に立ち、気づかれないように本の内容を見てみた。
えっと……、これは肉じゃがのレシピ。次のページにとんだ。これは筑前煮のレシピ。それで次は、ひじきの煮付け。
本の内容はいたって普通のレシピ本という感じだった。一応プロの料理人が監修しているっぽいが、私が見た感じ何か目を輝かせて面白いと思う要素はない。
何が楓を惹きつけているのだろうか。私は気になって仕方がなかった。
「ど、どうかしましたか?」
背後に立っていた私に気付いたのか、楓は後を振り返っていた。
「あっ。えっとねえ、楓がすっごい面白そうに見ていたから何が面白いのか気になって……」
私は正直に思っていた事を答えた。まあ誤魔化すようなことでも無いしね。
私がそう言うと、楓は少し恥ずかしそうにしていた。
「実は、私料理が大好きなんです。だからこうやってレシピ本とか見ちゃうとつい興奮して読んじゃうんですね」
なるほど。楓は料理が好きなわけか。これは意外な発見だった。これは一緒に図書館にいないとわからなかったことだ。私はちょっと得した気分になった。
「へえー。私は本が面白いからかなあって思ってたけどそうだったんだ」
「面白い料理本があれば、それはそれで見てみたいですけどね」
楓は軽く笑いながら言った。
「けど、料理が大好きってことは腕にも自信があるのかしら?」
「そうですね。人並み以上にはできると思います。色んな研究をしているので」
楓は自信満々と言った感じだ。こんなに自信ありげな楓は初めて見た。こんなに自信があるなら、さぞ美味しいことだろう。私は楓の料理が食べてみたくなった。
「そんなに自信があるなら、一度でいいから食べにきてみたいなあ」
私がそう思ったことを口にすると、
「あ、あのっ。言ってくれれば作りますんでっ。いつか家に来てくれませんかっ?」
楓は少し固い声と赤みがかった頬をしていた。
ここまで楓が言うんなら一度行ってみたいものだ。
「いいわよ。いつか都合のいい時に連絡するね」
「おっ、お待ちしていますっ! いつでもどうぞ!」
楓は少し下を向いて目をギュッと閉じていた。
楓がそこまで言うのなら、いつか家に行ってみたいなあ。どんな家なんだろうか。私はまだ行ったことのない楓の家について、想像を膨らませていた。
そんなことを考えていると、ガラッと図書館の扉が開いた。
「美優羽ちゃーん、秋葉さーん。生徒会の仕事終わったから帰ろう」
奏お姉ちゃんの仕事がようやく終わったようだ。私は本をカバンの中にしまう。楓は持ってきた本を元の場所に戻しに行った。
「二人ともどんな話してたの?」
奏お姉ちゃんは微笑みながら聞いてくる。
「楓が料理得意だから、いつか楓の家に行ってもいいかって話をしてたの」
「へえー。ねえ秋葉さん。その時は私も一緒に行っていいかな?」
「いっ、いい……ですよ…………」
奏お姉ちゃんの無邪気な笑顔とは対照的に、楓は苦虫でも噛んだような表情をしていた。楓は何もないと言ったが、奏お姉ちゃんの時だけ露骨に態度を変えてる気がする。
一体何があったのだろう。私はそのことが気になって仕方なかった。
「それでね、会長さんは椅子があると思って座ろうとしたらないから尻餅ついたの。普通座る前に椅子があるか確認するはずなのに、あるって思い込んでて。確認って大事なんだなあって思ったよぉ」
奏お姉ちゃんは今日の生徒会であったエピソードを面白おかしく語ってくれた。私的に生徒会はもっとお固いイメージがあったが、こういう面白いこともやってるんだと感心した。
「生徒会にもそんなイタズラする人がいるのね。生徒会って真面目な人たちの集団ってイメージがあったから、そんなことするイメージがなかったわ」
私がそう言うと、奏お姉ちゃんは笑いながらそんなことないよーと、否定してきた。
「どっちかと言うと、変わった人の集まりだと思うよぉ。もちろんやる時はしっかりやるけどね」
奏お姉ちゃんは楽しそうに語った。
夢にまで見た奏お姉ちゃんとの帰り道。思っていた以上に会話が弾み楽しい。こうやって帰り道ならもしかして、素直に色々なことができるかもしれない。
そうなればもっと大胆なことだって……。私はこれからの期待に胸を躍らせていた。
その一方で気になることもある。楓がここまで一言も喋っていない。顔もそんなに楽しそうに見えない。
普段からそんなに明るい表情をする子ではないが、こんな顔をしているのは流石に気になってしまう。
一体どうしたのか。私が声をかけようとした時だった。
「秋葉さん……、ずっと黙っているけど楽しくなかった?」
奏お姉ちゃんが先に声をかけた。その顔は少し心配そうな顔だった。奏お姉ちゃんも同じことを思っていたらしい。
声をかけられた楓は首を横に振った。
「そんなことないですよ。ただ、お二人が楽しそうに会話をされていたので、邪魔をしてはいけないと思ってただけです」
楓は軽く微笑んでいた。それならいいのだが、楓も会話に入ってくればいいのに。私はそう思った。
「そうなの。ならよかったけど、秋葉さんも会話に入ってきていいんだよぉ」
「あっ、はい。わかりました」
楓は真顔で答えた。それから少しの間、3人の間を沈黙が包み込んだ。
いけない。何か喋らないと。そう思い口を開こうとすると、先に奏お姉ちゃんが言葉を発していた。
「そういえば、秋葉さんと美優羽ちゃんってどうして仲がいいの?」
奏お姉ちゃんは不思議そうにしていた。
「えっと、話しているうちに仲良くなったよね。楓?」
私が楓に問いかけると、楓は何故か黙り込んでしまった。少し待ってみたが、何も返事をする気配がない。何か地雷でも踏んでしまったのだろうか。
「か、楓……? どうしたの?」
そう問いかけると、楓は少し驚いていた。
「あっ、そっ、そうですね。私と美優羽さんとは話している間に仲良くなったんです」
楓は少し言葉を噛みながらも答えてくれた。よかった。てっきり仲がいいのは私が思い込んでるだけかと思ってしまったから、そう答えてくれて少し安心した。
「へえー。じゃあ秋葉さんからしたら美優羽ちゃんはどんな人?」
「とても優しい人で、私にとって恩人です」
楓は奏お姉ちゃんの問いに、即答でまっすぐな瞳で答えた。その目には曇り一つすら感じ取れなかった。
「お、恩人なんて大袈裟な! 私はただ仲良くしてるだけだよ」
私は照れ臭くなって楓の言葉を否定した。だが、楓はその目を変えることはなかった。
「いいえ。美優羽さんがどう思っていらっしゃっても、私にとっては恩人で大切な人なんです。奏さんにとってもそうなんでしょうけど、この気持ちは誰にも負けるつもりがありません」
楓はどこか覚悟が座っているようだった。ここまで強く自己主張の激しい楓は、初めて見たかもしれない。
「うわー。なぜか宣戦布告されちゃったよぉ。美優羽ちゃん」
奏お姉ちゃんは口を軽く開いて両手で押さえていた。
「だけど、美優羽ちゃんが他の友達にも大切に思われてるって知って嬉しくなったよぉ。お互い美優羽ちゃんを大事にしていこうね」
奏お姉ちゃんが手を差し出すと、楓はその手をぎゅっと強く握っていた。
「ええ。私負けませんので」
普段の楓からは想像もつかない力強い声で言った。とりあえず、これで仲良くなれたの……かな? それならよかった。私は少し安心した。
そんな事をしていると、私の家の前に着いた。帰り道はこれで終わりだ。
そう言えば、今日の帰り道は誰にもつけられている感覚がしなかった。いつもならもう2、3回は振り返ったり、早足になったりするのにそれもなかった。
「今日誰にもつけられなかった。これ、もしかしたらいいのかもしれない」
私がそう言うと、奏お姉ちゃんは私の手を握ってきた。
「そうなの! じゃあ明日から学校の日は一緒に帰ろう!」
「そうねっ。それで解決だわ!」
こうして、学校のある日は3人で一緒に帰ることになった。これがよかったかはわからないが、3人で帰りだしてからはつけられてる感覚がなくなった。
これでストーカー問題は解決した。私はそう思っていた。