まずは、黒の長めのコートに茶色めのワンピース。うーん、全然似合ってないわけではありません。美優羽さんは綺麗です。けどこれは地味すぎますね。没でしょう。
「これは多分ダメですね」
「うん。私もそう思うわ」
美優羽さんも、迷いなく没だと宣言しました。
次は黒の長い柄つきTシャツに黒のショートパンツ。
はっきり言います。お似合いです。カッコよさが出てきてます。美優羽さんは美人顔でもありますが、どちらかと言うとかわいい系の顔ですから、これはギャップがあっていいかも知れません。
ただ、美優羽さんこの系統の色があまり好きそうには見えません。なんだかしっくりきていない顔をしています。これから察するに、誰かに貰ったものをとりあえず試しているという感じでしょうか。
そう考えると、服と美優羽さんが喧嘩をしているようにも見えてきます。似合ってはいますが、没ですね。私がそれを伝えると、美優羽さんも同意してくれました。それでは次にいきましょう。
次は白のチノパンに白のデニムジャケット。これはけっこう大人っぽい印象を受けます。大人っぽい美優羽さんも素敵です。堪りません。
落ち着いている配色ですので、かなりいいと思います。大多数の人がこれでいいと言いそうです。ですが、私はどうもそうすることが出来なさそうです。
さっきの服同様に、美優羽さんの表情が冴えないからです。何故でしょうか。私は気になってしまいます。
「似合ってると思いますが、何か気に入らないのでしょうか?」
私がそう言うと、美優羽さんはちょっと苦笑いを浮かべます。
「実は、ズボン系があまりしっくりきていないのよね。こう、履き慣れてないからかしら」
なるほど。それなら、いくら似合う洋服でもダメですね。
「そしたら、スカートから選んだ方が良さそうですね。ズボン類は一旦仕舞いましょうか」
「そうね。そうするわ」
そう言うなり、美優羽さんはズボン類をウォークインクローゼットの中へと片付けていきました。
次は、デニムのロングスカートにボーダーのシャツの組み合わせです。これもいいですね。美優羽さんはとても素敵に思えます。
正直、美優羽さんレベルの方ならどんな服を着ても似合うので、どれでもいいような気はします。ただ、美優羽さんはしっくり来ていないようです。
その後も、1時間近く色々と服を見ていくのですが、中々決まりません。どれも素晴らしく美優羽さんには似合っているのです。似合っているのですが、どこか納得されていない様子なのです。
困りました。折角服の知識を身につけたのに、全く役に立っている気がしません。どうしましょうか。
一旦休憩し、着終えた服を片付けていきます。
「美優羽さん。中々納得のいく服装が見つかりませんね」
「そうねえ。どれもしっくりこないわ」
私と美優羽さんは弱音を吐きます。このままだと、本当に決まりそうにありません。何か手掛かりがあればいいのですが、それすらないのですからどうしようもありません。
そう言えば、今回の服装のコンセプトってなんでしたっけ? 確か奏さんとのお出かけに来ていく服。それで、奏さんにいい印象を与えられる服というのが、それだったはずです。
確か、奏さんは美優羽さんと好みが似ていて、しかも美優羽さん以上に好むというのを聞いたことがあります。バレンタインデーの付近でそんなことを言っていた気がします。
だったら、話は簡単です。
「そう言えば、美優羽さんはどんな服装が好きなんですか?」
「私? 白系のシャツにロングスカートかなあ。色は赤とかそういった系統かなあ」
「わかりました。それでは、私が選んでいいですか?」
そう言って、私は美優羽さんの洋服に手を付けました。
「い、いいけど。何か思いついたの」
「ええ。これでいいはずだと思います」
少し不安そうな美優羽さんを尻目に、私は自信満々に服を選びます。
選び終えた私は、美優羽さんに服を託し一旦外に出ます。多分、これで大丈夫なはずです。私には確信めいたものがありました。
少しすると、美優羽さんから入っていいよー、と声が掛かりました。私はスムーズに部屋に入ります。
美優羽さんはローズグレイのAラインスカートに白色のシャツを着ていました。間違いなく似合っています。そして、これは美優羽さんの好みに近いものです。
「どう、ですか?」
「これは、私の好みだわ……」
美優羽さんはしっくり来ているようです。
「けど、それでいいのかしら。お姉ちゃんはこれで喜ぶかなあ?」
「大丈夫ですよ。バレンタインデーの前日とかに言っていたじゃないですか。美優羽さんと奏さんの好みは似ていると」
私の言葉に美優羽さんはハッとします。美優羽さんも察したようです。
「あくまで味覚だけの話かもしれません。ですが、服装もそうである可能性に賭けませんか? それに、しっくりくる服を着て元気にしている美優羽さんを見るのが、奏さんは一番嬉しいんじゃないでしょうか?」
私はメガネをクイっとあげて、少しキメ顔をします。これはいいこと言えたはずです。
「その通り……。その通りだわ! 楓ありがとう! 楓に頼んでよかったわ!」
美優羽さんは私の手をギュッと握り、ブンブンと上下に振りました。
よかったです。私も力になれたようです。少し嬉しくなりました。
本当なら、ここでわざとダメな服を提案した方が、私の恋路は叶いやすかったのかもしれません。しかし、それで本当にダメな失敗をしてしまえば、私の信頼が落ちてしまうでしょう。
そうなれば、私への信頼度が下がってしまうのは明らかです。なので、これは損をして得を取ったわけです。まあ、あと好きな人が悲しむ姿を見たくなかったというのもありますけどね。
そんなわけで、服装が決まりました。これで一安心です。
服装が決まってからは、服が決まった勢いでということで、どこを回るかも決めていきました。それも美優羽さんの好みを活かした形で決めることになりました。
そんなわけで、私の今日1日は大成功というわけです。あとは、美優羽さんのデートが上手くいくことを祈りましょう。まあ、告白とか付き合うとかまではいかない程度に。
お出かけ当日の朝7時。天候にも恵まれ、晴天といった感じ。私はなんてついているのだろう。神様ありがとうございます。起きるなり、私は神様に感謝をした。
それから1時間経った8時。
「美優羽ちゃん。私は準備できたよー」
奏お姉ちゃんはもう準備ができたようだ。私はというと、着替え終わってはいるから、あとはメイクのみだ。それもあと少しというところ
「ちょっと待ってて。もう少しでできるから」
奏お姉ちゃんを待たせないよう、けど、慌てないようそこそこのスピードでメイクをしていく。あまり派手すぎず、ナチュラルな感じで。それが私の好みだから。きっと奏お姉ちゃんもそんな感じだろう。
少ししてメイクが終わる。私はカバンを持って、部屋の外に出る。
「お待たせ! どう?」
今日の私を見た奏お姉ちゃんは少し目を見開く。それからとびっきりの笑顔を私に魅せてくれた。
「うん! 似合ってるよぉ」
奏お姉ちゃんは喜んでいるようだ。うん。やはり、楓の言った通りだった。楓に頼んで正解だったな。私はそう確信した。
「あっ、ありがとうっ。べ、別に今日のために特に服を選んだとかないんだからねっ!」
私の口は相変わらず素直になれない。それを知っていてか、奏お姉ちゃんは微笑んでいる。
「わかってるよぉ。私もどう?」
そう言って、奏お姉ちゃんはひらりとその場で軽く回った。服装は白のカッターシャツに、深緋色のスカート。メイクはナチュラル系。私を写し鏡にしたような形だ。
答えは、一つしかない。
「に、似合ってるわよ」
ちょっと尖りながら、恥ずかしがりながらも、答えは素直に出せた。それを聞いて、奏お姉ちゃんは、うふふと軽く笑った。
「よかったぁ。それじゃあ、行こうか」
こうして、私と奏お姉ちゃんのお出かけは始まっていったのであった。
「これは多分ダメですね」
「うん。私もそう思うわ」
美優羽さんも、迷いなく没だと宣言しました。
次は黒の長い柄つきTシャツに黒のショートパンツ。
はっきり言います。お似合いです。カッコよさが出てきてます。美優羽さんは美人顔でもありますが、どちらかと言うとかわいい系の顔ですから、これはギャップがあっていいかも知れません。
ただ、美優羽さんこの系統の色があまり好きそうには見えません。なんだかしっくりきていない顔をしています。これから察するに、誰かに貰ったものをとりあえず試しているという感じでしょうか。
そう考えると、服と美優羽さんが喧嘩をしているようにも見えてきます。似合ってはいますが、没ですね。私がそれを伝えると、美優羽さんも同意してくれました。それでは次にいきましょう。
次は白のチノパンに白のデニムジャケット。これはけっこう大人っぽい印象を受けます。大人っぽい美優羽さんも素敵です。堪りません。
落ち着いている配色ですので、かなりいいと思います。大多数の人がこれでいいと言いそうです。ですが、私はどうもそうすることが出来なさそうです。
さっきの服同様に、美優羽さんの表情が冴えないからです。何故でしょうか。私は気になってしまいます。
「似合ってると思いますが、何か気に入らないのでしょうか?」
私がそう言うと、美優羽さんはちょっと苦笑いを浮かべます。
「実は、ズボン系があまりしっくりきていないのよね。こう、履き慣れてないからかしら」
なるほど。それなら、いくら似合う洋服でもダメですね。
「そしたら、スカートから選んだ方が良さそうですね。ズボン類は一旦仕舞いましょうか」
「そうね。そうするわ」
そう言うなり、美優羽さんはズボン類をウォークインクローゼットの中へと片付けていきました。
次は、デニムのロングスカートにボーダーのシャツの組み合わせです。これもいいですね。美優羽さんはとても素敵に思えます。
正直、美優羽さんレベルの方ならどんな服を着ても似合うので、どれでもいいような気はします。ただ、美優羽さんはしっくり来ていないようです。
その後も、1時間近く色々と服を見ていくのですが、中々決まりません。どれも素晴らしく美優羽さんには似合っているのです。似合っているのですが、どこか納得されていない様子なのです。
困りました。折角服の知識を身につけたのに、全く役に立っている気がしません。どうしましょうか。
一旦休憩し、着終えた服を片付けていきます。
「美優羽さん。中々納得のいく服装が見つかりませんね」
「そうねえ。どれもしっくりこないわ」
私と美優羽さんは弱音を吐きます。このままだと、本当に決まりそうにありません。何か手掛かりがあればいいのですが、それすらないのですからどうしようもありません。
そう言えば、今回の服装のコンセプトってなんでしたっけ? 確か奏さんとのお出かけに来ていく服。それで、奏さんにいい印象を与えられる服というのが、それだったはずです。
確か、奏さんは美優羽さんと好みが似ていて、しかも美優羽さん以上に好むというのを聞いたことがあります。バレンタインデーの付近でそんなことを言っていた気がします。
だったら、話は簡単です。
「そう言えば、美優羽さんはどんな服装が好きなんですか?」
「私? 白系のシャツにロングスカートかなあ。色は赤とかそういった系統かなあ」
「わかりました。それでは、私が選んでいいですか?」
そう言って、私は美優羽さんの洋服に手を付けました。
「い、いいけど。何か思いついたの」
「ええ。これでいいはずだと思います」
少し不安そうな美優羽さんを尻目に、私は自信満々に服を選びます。
選び終えた私は、美優羽さんに服を託し一旦外に出ます。多分、これで大丈夫なはずです。私には確信めいたものがありました。
少しすると、美優羽さんから入っていいよー、と声が掛かりました。私はスムーズに部屋に入ります。
美優羽さんはローズグレイのAラインスカートに白色のシャツを着ていました。間違いなく似合っています。そして、これは美優羽さんの好みに近いものです。
「どう、ですか?」
「これは、私の好みだわ……」
美優羽さんはしっくり来ているようです。
「けど、それでいいのかしら。お姉ちゃんはこれで喜ぶかなあ?」
「大丈夫ですよ。バレンタインデーの前日とかに言っていたじゃないですか。美優羽さんと奏さんの好みは似ていると」
私の言葉に美優羽さんはハッとします。美優羽さんも察したようです。
「あくまで味覚だけの話かもしれません。ですが、服装もそうである可能性に賭けませんか? それに、しっくりくる服を着て元気にしている美優羽さんを見るのが、奏さんは一番嬉しいんじゃないでしょうか?」
私はメガネをクイっとあげて、少しキメ顔をします。これはいいこと言えたはずです。
「その通り……。その通りだわ! 楓ありがとう! 楓に頼んでよかったわ!」
美優羽さんは私の手をギュッと握り、ブンブンと上下に振りました。
よかったです。私も力になれたようです。少し嬉しくなりました。
本当なら、ここでわざとダメな服を提案した方が、私の恋路は叶いやすかったのかもしれません。しかし、それで本当にダメな失敗をしてしまえば、私の信頼が落ちてしまうでしょう。
そうなれば、私への信頼度が下がってしまうのは明らかです。なので、これは損をして得を取ったわけです。まあ、あと好きな人が悲しむ姿を見たくなかったというのもありますけどね。
そんなわけで、服装が決まりました。これで一安心です。
服装が決まってからは、服が決まった勢いでということで、どこを回るかも決めていきました。それも美優羽さんの好みを活かした形で決めることになりました。
そんなわけで、私の今日1日は大成功というわけです。あとは、美優羽さんのデートが上手くいくことを祈りましょう。まあ、告白とか付き合うとかまではいかない程度に。
お出かけ当日の朝7時。天候にも恵まれ、晴天といった感じ。私はなんてついているのだろう。神様ありがとうございます。起きるなり、私は神様に感謝をした。
それから1時間経った8時。
「美優羽ちゃん。私は準備できたよー」
奏お姉ちゃんはもう準備ができたようだ。私はというと、着替え終わってはいるから、あとはメイクのみだ。それもあと少しというところ
「ちょっと待ってて。もう少しでできるから」
奏お姉ちゃんを待たせないよう、けど、慌てないようそこそこのスピードでメイクをしていく。あまり派手すぎず、ナチュラルな感じで。それが私の好みだから。きっと奏お姉ちゃんもそんな感じだろう。
少ししてメイクが終わる。私はカバンを持って、部屋の外に出る。
「お待たせ! どう?」
今日の私を見た奏お姉ちゃんは少し目を見開く。それからとびっきりの笑顔を私に魅せてくれた。
「うん! 似合ってるよぉ」
奏お姉ちゃんは喜んでいるようだ。うん。やはり、楓の言った通りだった。楓に頼んで正解だったな。私はそう確信した。
「あっ、ありがとうっ。べ、別に今日のために特に服を選んだとかないんだからねっ!」
私の口は相変わらず素直になれない。それを知っていてか、奏お姉ちゃんは微笑んでいる。
「わかってるよぉ。私もどう?」
そう言って、奏お姉ちゃんはひらりとその場で軽く回った。服装は白のカッターシャツに、深緋色のスカート。メイクはナチュラル系。私を写し鏡にしたような形だ。
答えは、一つしかない。
「に、似合ってるわよ」
ちょっと尖りながら、恥ずかしがりながらも、答えは素直に出せた。それを聞いて、奏お姉ちゃんは、うふふと軽く笑った。
「よかったぁ。それじゃあ、行こうか」
こうして、私と奏お姉ちゃんのお出かけは始まっていったのであった。