エマは巨体のトウミンと闘っていた。
二メートルを超える太った巨体。
それが闘気を纏い、ラージクラブを振るい続けてくる。
エマは暴風のような攻撃を避けながら、槍でトウミンの右腕を突き刺し――。
「魔技【爆破】」
爆発させる。
「痛いんだな」
しかし、トウミンの肉体の脂肪が分厚いせいか、右腕は思ったより爆破されておらず、ダメージはさほど無い。
「……面倒さね」
既に数度、魔法によって爆発させているが、トウミンにはダメージがあまりない。
単純な闘気の強さと肉体のタフさで、エマと闘っていた。
「いい加減オラにも殴らせるんだな」
自分が食らったダメージもお構いなしに、またクラブを振り始めたトウミン。
「この、脳筋バカがさ!」
トウミンに致命傷を与えるなら、外側ではなく内側から爆発させる必要がある――闘いながらそんな思考を巡らせていたせいか、エマはラージクラブを躱しきれずに両刃の槍で止めようとした。
いや、してしまった。
「バカはお前なんだな」
「ぎっ!?」
受け止めたと思いきや、何故かトウミンの攻撃を体に受け、エマは吹き飛んで近くの岩壁へ全身をぶつけ、砂煙を上げる。
砂埃が晴れると、エマの左腕は折れていた。
むしろ、犠牲が左腕だけで済んだのは幸いかもしれない。
それ程の威力であった。
「……ぐ……ウチの槍を……すり抜けた……!?」
確かに防御した。
しかし、その防御を貫通して殴られたことが予想される。
おそらくは、トウミンの魔法の影響であろう。
「オラの魔法は【透過】。物、透き通る」
トウミンの魔法【透過】。
その能力は、トウミンの体や触れている物は、物質を透き通らせる力。
エマの槍での防御を貫通して攻撃できたのは、そのためだ。
エマは左腕を使えない。
なんとか右腕だけで両刃の槍を扱い、トウミンを倒すしかない。
タフなトウミンを片手で倒すのは容易ではない。
しかしエマは、自身を侮りトウミンには油断があるのではないかと言動から察していた。
「【透過】……ね」
エマはブレアのように相手が侮っているからといって怒ったりなどはしない。
むしろ、その心の隙をいかに利用するかを冷静に考えていた。
折られた左腕は痛みで使えないため、右腕だけで槍を持つ。
「はああぁぁ!!」
そして何を思ったのか、一直線にトウミンへ向けて特攻していった。
「馬鹿なんだな」
一直線に向かったエマを迎え撃つため、クラブを振るうトウミン。
しかし、エマはあっさりと躱し懐へと入った。
直線的に突っ込めば、単調な攻撃が来ると考えていたのだ。
「馬鹿はあんただよ」
トウミンの下腹部に向けて、槍で突くエマ。
「いーや、お前なんだな」
だが、槍はトウミンの肉体を透過するだけで、トウミンは無傷だ。
トウミンの【透過】は壁などもすり抜けれるため、槍をすり抜けることなど容易であった……が――。
「いや、やっぱりあんただよ」
「うぷっ!?」
突如トウミンの身体は膨れ上がる。
エマはすり抜けてトウミンの体内にある槍を魔法によって爆発させたのだ。
「物質は【透過】出来ても、魔法は【透過】出来ないだろう?」
「おぼぼぼ……ぼっ!!」
トウミンは体内の爆発に身体が耐えれなくなり、その身を爆発させる。
周囲には巨体の体内が散乱し、トウミンは絶命した。
「冥土へ逝きな」
エマは負傷した左腕をぶら下げつつも、再び帝国の大軍にその身を投じた――。
*****
【電気】と【震動】。
ロランとカニバルの闘いは、天変地異とも呼べるモノだった。
周囲一帯には電撃が走り、震動によって地はひび割れを起こす。
無力のルーナはそれを遠巻きに見ることしか出来なかった。
ロランはルーナと違って、ブレア同様お構いなしに自軍を巻き込んでいた。
そうでもしないとカニバルは倒せない相手であり、何かしらの隙を見せると必ずつけ込まれるからだ。
「魔技【紫電】」
ロランが指を鳴らして放った、光速にも及ぶ紫色の電撃。
カニバルはそんな指向性を持った電撃を容易に躱す。
ロランは【瞬歩】で【紫電】を躱したばかりのカニバルの懐に入り、レイピアで体中を突き刺す。
「あいたたたた」
しかしカニバルは急所は避け、ダメージは軽傷に収まった。
カニバルはダメージに怯まず、ロランに魔技を放つ。
「魔技【ブレイク】」
高速震動させた掌底。
食らえば体内の骨を破壊される、恐ろしい魔技。
ロランはルーナとカニバルの戦闘を見ていたことからカニバルの魔法を察していたため、左腕に装備した円盾で受けようとせずに、大きく距離を取る。
「魔技【アースクラック】」
そんなロランを見てカニバルは、高速振動させた足を地面に叩きつけた。
すると大地が揺れ、小さい地割れを起こす。
ロランの着地地点の地面が割れ、ロランは地割れに足をとられた。
【瞬歩】で距離を詰めたカニバルは、持っているノコギリを高速振動させ、ロランへと切りかかる。
体制を整えたロラン。
しかし【瞬歩】でも逃げれないほど、既にカニバルのノコギリは眼前まで近付いていた。
直撃する、ルーナがそう思った時――。
「魔技【雷歩】」
カニバルの目の前からロランは消える。
カニバルの攻撃範囲外へと退避していた。
【瞬歩】を超えるロランオリジナルの光速移動術、魔技【雷歩】。
自身の神経系統に電気を巡らせ、脳の命令を即座に下す上、雷の如く光の速さで移動する魔技だ。
側から見れば瞬間移動にすら見える。
「んー、燃えない上に強いって、おじさんにとって一番厄介な敵だなぁ」
「厄介なのはお互い様だけどね」
カニバルは困ったように笑い、ロランはスリルを楽しむかのように笑った。
戦闘を眺めるルーナはただただ、二人との距離を感じるだけであった――。
二メートルを超える太った巨体。
それが闘気を纏い、ラージクラブを振るい続けてくる。
エマは暴風のような攻撃を避けながら、槍でトウミンの右腕を突き刺し――。
「魔技【爆破】」
爆発させる。
「痛いんだな」
しかし、トウミンの肉体の脂肪が分厚いせいか、右腕は思ったより爆破されておらず、ダメージはさほど無い。
「……面倒さね」
既に数度、魔法によって爆発させているが、トウミンにはダメージがあまりない。
単純な闘気の強さと肉体のタフさで、エマと闘っていた。
「いい加減オラにも殴らせるんだな」
自分が食らったダメージもお構いなしに、またクラブを振り始めたトウミン。
「この、脳筋バカがさ!」
トウミンに致命傷を与えるなら、外側ではなく内側から爆発させる必要がある――闘いながらそんな思考を巡らせていたせいか、エマはラージクラブを躱しきれずに両刃の槍で止めようとした。
いや、してしまった。
「バカはお前なんだな」
「ぎっ!?」
受け止めたと思いきや、何故かトウミンの攻撃を体に受け、エマは吹き飛んで近くの岩壁へ全身をぶつけ、砂煙を上げる。
砂埃が晴れると、エマの左腕は折れていた。
むしろ、犠牲が左腕だけで済んだのは幸いかもしれない。
それ程の威力であった。
「……ぐ……ウチの槍を……すり抜けた……!?」
確かに防御した。
しかし、その防御を貫通して殴られたことが予想される。
おそらくは、トウミンの魔法の影響であろう。
「オラの魔法は【透過】。物、透き通る」
トウミンの魔法【透過】。
その能力は、トウミンの体や触れている物は、物質を透き通らせる力。
エマの槍での防御を貫通して攻撃できたのは、そのためだ。
エマは左腕を使えない。
なんとか右腕だけで両刃の槍を扱い、トウミンを倒すしかない。
タフなトウミンを片手で倒すのは容易ではない。
しかしエマは、自身を侮りトウミンには油断があるのではないかと言動から察していた。
「【透過】……ね」
エマはブレアのように相手が侮っているからといって怒ったりなどはしない。
むしろ、その心の隙をいかに利用するかを冷静に考えていた。
折られた左腕は痛みで使えないため、右腕だけで槍を持つ。
「はああぁぁ!!」
そして何を思ったのか、一直線にトウミンへ向けて特攻していった。
「馬鹿なんだな」
一直線に向かったエマを迎え撃つため、クラブを振るうトウミン。
しかし、エマはあっさりと躱し懐へと入った。
直線的に突っ込めば、単調な攻撃が来ると考えていたのだ。
「馬鹿はあんただよ」
トウミンの下腹部に向けて、槍で突くエマ。
「いーや、お前なんだな」
だが、槍はトウミンの肉体を透過するだけで、トウミンは無傷だ。
トウミンの【透過】は壁などもすり抜けれるため、槍をすり抜けることなど容易であった……が――。
「いや、やっぱりあんただよ」
「うぷっ!?」
突如トウミンの身体は膨れ上がる。
エマはすり抜けてトウミンの体内にある槍を魔法によって爆発させたのだ。
「物質は【透過】出来ても、魔法は【透過】出来ないだろう?」
「おぼぼぼ……ぼっ!!」
トウミンは体内の爆発に身体が耐えれなくなり、その身を爆発させる。
周囲には巨体の体内が散乱し、トウミンは絶命した。
「冥土へ逝きな」
エマは負傷した左腕をぶら下げつつも、再び帝国の大軍にその身を投じた――。
*****
【電気】と【震動】。
ロランとカニバルの闘いは、天変地異とも呼べるモノだった。
周囲一帯には電撃が走り、震動によって地はひび割れを起こす。
無力のルーナはそれを遠巻きに見ることしか出来なかった。
ロランはルーナと違って、ブレア同様お構いなしに自軍を巻き込んでいた。
そうでもしないとカニバルは倒せない相手であり、何かしらの隙を見せると必ずつけ込まれるからだ。
「魔技【紫電】」
ロランが指を鳴らして放った、光速にも及ぶ紫色の電撃。
カニバルはそんな指向性を持った電撃を容易に躱す。
ロランは【瞬歩】で【紫電】を躱したばかりのカニバルの懐に入り、レイピアで体中を突き刺す。
「あいたたたた」
しかしカニバルは急所は避け、ダメージは軽傷に収まった。
カニバルはダメージに怯まず、ロランに魔技を放つ。
「魔技【ブレイク】」
高速震動させた掌底。
食らえば体内の骨を破壊される、恐ろしい魔技。
ロランはルーナとカニバルの戦闘を見ていたことからカニバルの魔法を察していたため、左腕に装備した円盾で受けようとせずに、大きく距離を取る。
「魔技【アースクラック】」
そんなロランを見てカニバルは、高速振動させた足を地面に叩きつけた。
すると大地が揺れ、小さい地割れを起こす。
ロランの着地地点の地面が割れ、ロランは地割れに足をとられた。
【瞬歩】で距離を詰めたカニバルは、持っているノコギリを高速振動させ、ロランへと切りかかる。
体制を整えたロラン。
しかし【瞬歩】でも逃げれないほど、既にカニバルのノコギリは眼前まで近付いていた。
直撃する、ルーナがそう思った時――。
「魔技【雷歩】」
カニバルの目の前からロランは消える。
カニバルの攻撃範囲外へと退避していた。
【瞬歩】を超えるロランオリジナルの光速移動術、魔技【雷歩】。
自身の神経系統に電気を巡らせ、脳の命令を即座に下す上、雷の如く光の速さで移動する魔技だ。
側から見れば瞬間移動にすら見える。
「んー、燃えない上に強いって、おじさんにとって一番厄介な敵だなぁ」
「厄介なのはお互い様だけどね」
カニバルは困ったように笑い、ロランはスリルを楽しむかのように笑った。
戦闘を眺めるルーナはただただ、二人との距離を感じるだけであった――。