ポワンから課せられた、最期の試練は――私とルグレで殺し合うこと。
私とルグレは、そんな試練をさせるポワンの考えが理解できずにいた。
「ルグレと殺し合うって……どうして!?」
「ヒメナを殺すなんて……俺にはできません!! 師匠、何故そんなことをする必要があるのですか!?」
突拍子もない最終試練。
ポワンの修行のあまりの内容に、私とルグレは初めて拒否した。
ルグレと殺し合うなんて……意味わかんないよ!!
「お主らは二人共いずれ死ぬのじゃ。遅かれ早かれの」
「「!?」」
私とルグレが死ぬ……?
どういうこと!?
「強い弱いという話ではない。お主らは優しくもなく、致命的に甘いのじゃ」
優しくなくて、甘い……?
そんなことないよ……ルグレはずっと誰にでも優しかったし、私だってそれを見習って……!!
「想像してみるのじゃ。もし親友が刃を持ってお主らを襲ってきたらどうする? 親友を殺せないと、親友も何かあったんだろうと、そんな偽善の優しさを見せて親友に殺されるか?」
アリアが私に刃を向けてきたら……私はそうするかもしれない。
私が死んでアリアの何かしらの願いが叶ったり、アリアを守ったりできるなら、私は……アリアに殺されるかもしれない。
「お主らは二人共、死を選ぶじゃろう」
ポワンに見透かされている。
だけど、私が死んでそれでアリアが救われるならそれでいいじゃない……!!
「阿呆!!」
考えを見透かされたのか、叱責された。
怒気も含まれており、ポワンは険しい顔をしていた。
「甘えるな!! 生きるということは、想いの殺し合いなのじゃ!! ルグレ、お主は第三皇子として帝国を変えて戦争を止めるのじゃろう!? 小娘、お前は親友を守るのじゃろう!? その想いが嘘でないと、兄妹弟子を殺してワシに証明してみせよ!!」
え……?
今何て……?
ルグレが帝国の第三皇子って……?
じゃあルグレが止めたい父親って……帝国の皇帝……!?
「ワシの弟子は二人もいらぬ!! どちらかでも逃げようとすれば二人共ワシの手で殺してやるのじゃ!! 相手を殺す以外は許さん!!」
静寂が流れる。
私とルグレは対面しながらも、互いにどうすればいいか分からず困惑していた。
「……ヒメナ、師匠は本気だ。本気で俺達を殺し合わせる気だ」
「……ほえぇ……どうしよう……」
ポワンが何故こんなことを私達にさせようとしたのかはわからないけど、ルグレと殺し合えるはずがない。
だけど、ポワンから私達が逃げきれるはずもなく、二人でポワンと闘ったとしても、あっさり殺されるだけだろう。
唯一二人共生き残る可能性があるのは、ポワンが私達にハッパをかけるために殺し合わせようとしているフリをしていて、逃げても私達を殺さないという希望的観測に縋るしかない。
だけど、ポワンは多分本気だ。
フリーエンがアフェクシーの皆を皆殺しにした時も、ポワンなら誰一人傷つけず助けられたはずなのに、初志貫徹し私とルグレに全てを任せた。
ポワンは生死に対する執着が人よりはるかに薄い。
そのことも考えれば、私達を逃がすことなく殺し合わせることもするだろう。
「私……ルグレと殺し合いなんて出来ないよ……」
どうすればポワンに生かしてもらえるか、それしか考えられないし、何も思いつかない。
下手なことを言えば、その場で私とルグレは殺される可能性だってあるんだ。
「……ヒメナ」
どうやったら私もルグレも助かるのか考えていると、ルグレが声をかけてきてくれた。
きっと困ってるのを見兼ねたんだろう。
もしかしたら、今の状況を脱する名案を思いついたのかもしれない!!
そんな私の希望は――。
「やろう」
ルグレの一言に打ち砕かれる。
「やろうって……何を!? ポワンの言う通り殺し合うの!?」
ルグレは黙って頷く。
私はルグレの思わぬ反応に信じられず固まってしまった。
「師匠は本気だ。俺達が師匠から逃げられるすべなんてない。逃げようとして二人共師匠に殺されるくらいなら、俺達で殺し合って一人だけでも生き残った方がまだ良い。違うかい?」
両方死ぬくらいなら、一人の方が良い……その考えは分かるけど、私はルグレと殺し合いなんて出来ないよ……。
「それに師匠の言う事は最もだ……俺達の甘さがアフェクシーの村を滅ぼし、ジャンティをも殺した。その甘さはいずれ、自分自身も殺すことになるだろう」
私の想いに反したルグレは手甲をつけた両手を掲げ、戦闘態勢に入り――。
「俺はルグレ。アルプトラウム帝国第三皇子、ルグレ・アルプトラウム。俺は帝国に帰って、しなければいけないことがある!!」
闘気を纏って、私に突っ込んで来た。
「そのために俺は……ヒメナ!! 君を殺す!!」
こうして、五年間共に高め合ってきた私とルグレの、生き残りを掛けた殺し合いが始まったんだ。
私とルグレは、そんな試練をさせるポワンの考えが理解できずにいた。
「ルグレと殺し合うって……どうして!?」
「ヒメナを殺すなんて……俺にはできません!! 師匠、何故そんなことをする必要があるのですか!?」
突拍子もない最終試練。
ポワンの修行のあまりの内容に、私とルグレは初めて拒否した。
ルグレと殺し合うなんて……意味わかんないよ!!
「お主らは二人共いずれ死ぬのじゃ。遅かれ早かれの」
「「!?」」
私とルグレが死ぬ……?
どういうこと!?
「強い弱いという話ではない。お主らは優しくもなく、致命的に甘いのじゃ」
優しくなくて、甘い……?
そんなことないよ……ルグレはずっと誰にでも優しかったし、私だってそれを見習って……!!
「想像してみるのじゃ。もし親友が刃を持ってお主らを襲ってきたらどうする? 親友を殺せないと、親友も何かあったんだろうと、そんな偽善の優しさを見せて親友に殺されるか?」
アリアが私に刃を向けてきたら……私はそうするかもしれない。
私が死んでアリアの何かしらの願いが叶ったり、アリアを守ったりできるなら、私は……アリアに殺されるかもしれない。
「お主らは二人共、死を選ぶじゃろう」
ポワンに見透かされている。
だけど、私が死んでそれでアリアが救われるならそれでいいじゃない……!!
「阿呆!!」
考えを見透かされたのか、叱責された。
怒気も含まれており、ポワンは険しい顔をしていた。
「甘えるな!! 生きるということは、想いの殺し合いなのじゃ!! ルグレ、お主は第三皇子として帝国を変えて戦争を止めるのじゃろう!? 小娘、お前は親友を守るのじゃろう!? その想いが嘘でないと、兄妹弟子を殺してワシに証明してみせよ!!」
え……?
今何て……?
ルグレが帝国の第三皇子って……?
じゃあルグレが止めたい父親って……帝国の皇帝……!?
「ワシの弟子は二人もいらぬ!! どちらかでも逃げようとすれば二人共ワシの手で殺してやるのじゃ!! 相手を殺す以外は許さん!!」
静寂が流れる。
私とルグレは対面しながらも、互いにどうすればいいか分からず困惑していた。
「……ヒメナ、師匠は本気だ。本気で俺達を殺し合わせる気だ」
「……ほえぇ……どうしよう……」
ポワンが何故こんなことを私達にさせようとしたのかはわからないけど、ルグレと殺し合えるはずがない。
だけど、ポワンから私達が逃げきれるはずもなく、二人でポワンと闘ったとしても、あっさり殺されるだけだろう。
唯一二人共生き残る可能性があるのは、ポワンが私達にハッパをかけるために殺し合わせようとしているフリをしていて、逃げても私達を殺さないという希望的観測に縋るしかない。
だけど、ポワンは多分本気だ。
フリーエンがアフェクシーの皆を皆殺しにした時も、ポワンなら誰一人傷つけず助けられたはずなのに、初志貫徹し私とルグレに全てを任せた。
ポワンは生死に対する執着が人よりはるかに薄い。
そのことも考えれば、私達を逃がすことなく殺し合わせることもするだろう。
「私……ルグレと殺し合いなんて出来ないよ……」
どうすればポワンに生かしてもらえるか、それしか考えられないし、何も思いつかない。
下手なことを言えば、その場で私とルグレは殺される可能性だってあるんだ。
「……ヒメナ」
どうやったら私もルグレも助かるのか考えていると、ルグレが声をかけてきてくれた。
きっと困ってるのを見兼ねたんだろう。
もしかしたら、今の状況を脱する名案を思いついたのかもしれない!!
そんな私の希望は――。
「やろう」
ルグレの一言に打ち砕かれる。
「やろうって……何を!? ポワンの言う通り殺し合うの!?」
ルグレは黙って頷く。
私はルグレの思わぬ反応に信じられず固まってしまった。
「師匠は本気だ。俺達が師匠から逃げられるすべなんてない。逃げようとして二人共師匠に殺されるくらいなら、俺達で殺し合って一人だけでも生き残った方がまだ良い。違うかい?」
両方死ぬくらいなら、一人の方が良い……その考えは分かるけど、私はルグレと殺し合いなんて出来ないよ……。
「それに師匠の言う事は最もだ……俺達の甘さがアフェクシーの村を滅ぼし、ジャンティをも殺した。その甘さはいずれ、自分自身も殺すことになるだろう」
私の想いに反したルグレは手甲をつけた両手を掲げ、戦闘態勢に入り――。
「俺はルグレ。アルプトラウム帝国第三皇子、ルグレ・アルプトラウム。俺は帝国に帰って、しなければいけないことがある!!」
闘気を纏って、私に突っ込んで来た。
「そのために俺は……ヒメナ!! 君を殺す!!」
こうして、五年間共に高め合ってきた私とルグレの、生き残りを掛けた殺し合いが始まったんだ。