俺、カトーは今日という日を楽しみに待っていた。
ハカセに頼んでいた研究が完了したという報告を受けたからだ。
「ハカセ、例の装置、ついに完成したんだって?」
「うん。なんとか出来たけど、時間が掛かっちゃったね……ごめん」
「気にしなくていいんだよ。かなり無茶ななお願いだったし、個人的な理由だからね」
「動機は個人的かもだけど……もし異星人と戦闘になることがあれば、きっと役に立つはずだよ」
「それもそうか。じゃあ、早速使ってみよう。こういう場合、最初に試すのはやっぱり……」
「イチローだよね。既に呼んであります」
イチローは損な役割が多いな……。でも、イチローがちょうどいいんだよ……。
「さすが、ハカセ……よく分かってるな」
「おはよう、何の用?」
イチローが研究室にやってきた。
早朝から要件も言わずに呼び出されたので当然のように不機嫌な様子だ。
「そこに立っていてね。カメラをイチローに向けて……この青いボタンを押すと」
小さなカメラ付きディスプレイをイチローに向けてボタンを押すハカセ。
ディスプレイに何かが表示された。
「1500か……」
「それは凄いのか?」
「地球人だと大体5~10くらい。戦闘のプロでも100くらいかしら」
「そうなのか……。やっぱり俺たちは遺伝子的に地球人より強い種族なんだな」
「ちょ、いきなり何?まあ、いつもの事だけどさ……」
訳も分からず実験台にされたイチローだが、いつもの事なので慣れてしまっているようだ。
さすがイチロー、だからこういう場合はお前が呼ばれるんだけどな。
「イチロー、この機械はね、対象の強さを測ることができるのよ!」
「おお、ということは……。ついにサクラ氏の強さが判明する訳か!」
「そういうことね。その前にカトーの強さも調べましょう。カトー、そこに立って」
ついに自分の強さを数値として知ることができる。
曖昧だったサクラとの戦力差もこれで判明するという訳だ。
「了解。なんかドキドキするなあ。イチローより弱かったらどうしよう……」
ディスプレイに表示されたのは3万。
「さすがカトーね。イチロー20人分の強さじゃないの」
なかなかの数値だとは思うけど、きっとサクラはこれ以上なんだよな……。
「じゃあ、サクラを呼ぶね」
――
やがて部屋にやってきたサクラだったが、二日酔いのためフラフラで、目の下にもクマが出来ている。
焼肉屋にハマってしまい、毎晩のように通い詰めているようだ。
「おい、こんな状態で参考になるのか?これで勝っても嬉しくないぞ……」
「まあ、とりあえず測定してみましょう。サクラ、そこに立って」
「何ブツブツ言ってんのよ……。頭痛いんだから早くしてよね……」
サクラにカメラを向けてボタンを押すハカセ。
表示された数値は……。
「53万!」
え?このふざけた数値は何だよ?サクラは二日酔いで寝起きだぞ。
それなのに……俺は3万……。
「おい、どういうことだよ!壊れているんじゃないのか!もう一度俺を計り直してくれ」
再び測定してみたが、やはり3万……。
どうやら機械は正常らしい。
「そんなバカな……」
「用が済んだなら、もう行っていいか?もう一眠りしたい……」
ありえない……。
サクラが強いのは認めるけど、いくらなんでも差がありすぎる。
俺は軍の特殊部隊所属のエリート兵士だったんだ。
それなのに……なぜ、戦闘経験も無かったサクラに勝てないんだ……。
そう思ったら、自分の中で何かが切れたような感覚になった。
気付いたら……部屋を去るサクラを背後から奇襲攻撃していた。
だが、その瞬間……俺の意識はどこかに飛ばされてしまった。
――
私、ハカセはとんでもない瞬間を見てしまった。
あのカトーがサクラを背後から襲った。しかもその瞬間、カトーは宙を舞って反対側の壁に叩きつけられていたのだ。
一体何が起きたのだろう……状況把握できなくて、イチローと2人で立ち尽くしていた。
「おいコラ、カトー!二日酔いのか弱い女性に背後から不意打ちとはどういうことだ?そんなに死にたいのか?」
「サクラ、カトーは気絶してるから、また後で話そう。もう用は済んでいるので今はゆっくり休んで……」
「ちっ、嫌な気分だぜ……」
サクラ氏は頭を抱えてフラフラしながら、自分の部屋に戻っていった。
私はイチローと気絶したカトーを医務室に運び、改めて状況を整理してみる。
カトーは軍の特殊部隊に所属していただけの事はあり、やはり相当強いということは分かった。
だが……サクラは想像を遥かに超えていたのだ。
カトーとの戦力差はとても埋められない程に大きく、しかもそれが体調不良の状態であったこと。
実際、カトーの不意打ちにも余裕に対処できるどころか一撃で気絶させてしまったのだ。
万全な状態であれば、一体どれほどの数値になるんだろう……。
そういえば、サクラは『私より弱い人と付き合うとか考えられないかな~』って言ってたな……。
「サクラ、やっぱりそんな人いないよ……」
私はカトーを見ながら、静かに呟いていた。
ハカセに頼んでいた研究が完了したという報告を受けたからだ。
「ハカセ、例の装置、ついに完成したんだって?」
「うん。なんとか出来たけど、時間が掛かっちゃったね……ごめん」
「気にしなくていいんだよ。かなり無茶ななお願いだったし、個人的な理由だからね」
「動機は個人的かもだけど……もし異星人と戦闘になることがあれば、きっと役に立つはずだよ」
「それもそうか。じゃあ、早速使ってみよう。こういう場合、最初に試すのはやっぱり……」
「イチローだよね。既に呼んであります」
イチローは損な役割が多いな……。でも、イチローがちょうどいいんだよ……。
「さすが、ハカセ……よく分かってるな」
「おはよう、何の用?」
イチローが研究室にやってきた。
早朝から要件も言わずに呼び出されたので当然のように不機嫌な様子だ。
「そこに立っていてね。カメラをイチローに向けて……この青いボタンを押すと」
小さなカメラ付きディスプレイをイチローに向けてボタンを押すハカセ。
ディスプレイに何かが表示された。
「1500か……」
「それは凄いのか?」
「地球人だと大体5~10くらい。戦闘のプロでも100くらいかしら」
「そうなのか……。やっぱり俺たちは遺伝子的に地球人より強い種族なんだな」
「ちょ、いきなり何?まあ、いつもの事だけどさ……」
訳も分からず実験台にされたイチローだが、いつもの事なので慣れてしまっているようだ。
さすがイチロー、だからこういう場合はお前が呼ばれるんだけどな。
「イチロー、この機械はね、対象の強さを測ることができるのよ!」
「おお、ということは……。ついにサクラ氏の強さが判明する訳か!」
「そういうことね。その前にカトーの強さも調べましょう。カトー、そこに立って」
ついに自分の強さを数値として知ることができる。
曖昧だったサクラとの戦力差もこれで判明するという訳だ。
「了解。なんかドキドキするなあ。イチローより弱かったらどうしよう……」
ディスプレイに表示されたのは3万。
「さすがカトーね。イチロー20人分の強さじゃないの」
なかなかの数値だとは思うけど、きっとサクラはこれ以上なんだよな……。
「じゃあ、サクラを呼ぶね」
――
やがて部屋にやってきたサクラだったが、二日酔いのためフラフラで、目の下にもクマが出来ている。
焼肉屋にハマってしまい、毎晩のように通い詰めているようだ。
「おい、こんな状態で参考になるのか?これで勝っても嬉しくないぞ……」
「まあ、とりあえず測定してみましょう。サクラ、そこに立って」
「何ブツブツ言ってんのよ……。頭痛いんだから早くしてよね……」
サクラにカメラを向けてボタンを押すハカセ。
表示された数値は……。
「53万!」
え?このふざけた数値は何だよ?サクラは二日酔いで寝起きだぞ。
それなのに……俺は3万……。
「おい、どういうことだよ!壊れているんじゃないのか!もう一度俺を計り直してくれ」
再び測定してみたが、やはり3万……。
どうやら機械は正常らしい。
「そんなバカな……」
「用が済んだなら、もう行っていいか?もう一眠りしたい……」
ありえない……。
サクラが強いのは認めるけど、いくらなんでも差がありすぎる。
俺は軍の特殊部隊所属のエリート兵士だったんだ。
それなのに……なぜ、戦闘経験も無かったサクラに勝てないんだ……。
そう思ったら、自分の中で何かが切れたような感覚になった。
気付いたら……部屋を去るサクラを背後から奇襲攻撃していた。
だが、その瞬間……俺の意識はどこかに飛ばされてしまった。
――
私、ハカセはとんでもない瞬間を見てしまった。
あのカトーがサクラを背後から襲った。しかもその瞬間、カトーは宙を舞って反対側の壁に叩きつけられていたのだ。
一体何が起きたのだろう……状況把握できなくて、イチローと2人で立ち尽くしていた。
「おいコラ、カトー!二日酔いのか弱い女性に背後から不意打ちとはどういうことだ?そんなに死にたいのか?」
「サクラ、カトーは気絶してるから、また後で話そう。もう用は済んでいるので今はゆっくり休んで……」
「ちっ、嫌な気分だぜ……」
サクラ氏は頭を抱えてフラフラしながら、自分の部屋に戻っていった。
私はイチローと気絶したカトーを医務室に運び、改めて状況を整理してみる。
カトーは軍の特殊部隊に所属していただけの事はあり、やはり相当強いということは分かった。
だが……サクラは想像を遥かに超えていたのだ。
カトーとの戦力差はとても埋められない程に大きく、しかもそれが体調不良の状態であったこと。
実際、カトーの不意打ちにも余裕に対処できるどころか一撃で気絶させてしまったのだ。
万全な状態であれば、一体どれほどの数値になるんだろう……。
そういえば、サクラは『私より弱い人と付き合うとか考えられないかな~』って言ってたな……。
「サクラ、やっぱりそんな人いないよ……」
私はカトーを見ながら、静かに呟いていた。