私が『インターネットの終わりの始まり』に気付いたのは高校生の時のことだ。その頃、私はネット上で炎上事件を起こしていた人物と直接コンタクトを取ることに成功し、彼と会話をすることが出来たのだが、その中で知った事実は衝撃的なものばかりだった。

ネットリンチが横行する中で、インターネット上だけで済まない深刻な犯罪が引き起こされるようになったことは、当時からニュースなどで取り上げられており知ってはいたが、まさか『現実でも同じことが行われている』とは考えていなかったからだ。彼は、自分の犯した犯罪を反省することなく、インターネットがもたらす恩恵や自由さを享受するばかりで『インターネットは素晴らしい』と言い続けていたが、「そんなことは絶対にあり得ない」と頑なに信じていたのだ。今にして思えば実に子供っぽい思考だったが、彼なりに真剣に『インターネットの終わりの始まり』を考えていたらしいと分かっただけでも良かったのかもしれない。私もまた、彼が語る理想郷の話を聞いたおかげで、インターネットをただ利用するだけでなく活用する方法を模索してみる気にならなければ今の私は無かったはずだ。

『インターネットを終わらせることが出来るのは、インターネットだけだ』

この言葉が私の胸に今も刻まれているのは、きっと彼の影響が大きいのだと思う。私は今でも彼を尊敬しているし感謝もしているが二度と会いたくないと思っている。何故なら会う度に口論になってしまうからである。

私には、彼に会わねばならない用件があった。しかし今は連絡手段が絶たれてしまっているためそれは叶わない。

だが、もしも奇跡が起きて、どこかの街角で再び出会うことがあるとしたら、まず真っ先に「さようなら」を言いたいと思う。それがどんな結果を招くことになるのか分からないが、それでも、私は彼にさようならを言わなければならない。なぜなら『インターネットの終わりの始まり』は私の手の中に収まっているからだ。