リンのかわいらしいわがままによって一緒に過ごす時間が増えてから数日後、またメイヤから相談事を受けました。
「美術館、ですか?」
『そうなのよ。一部の者たちが欲しがり始めてね……』
「あの、メイヤ様。美術館とはどういう施設なのでしょう?」
『ああ、そこから話さないといけないわよね。〝美術館〟と言うのは彫刻や絵画、貴重な装飾品などを飾る場所よ』
「……それって。またドワーフたちからの要望ですか?」
『いいえ。幻獣などからの要望ね。自分たちの像を造ってもらい、それを飾ってもらうつもりなのよ』
「……なんのためでしょう?」
『……さあ?』
メイヤがわからないと言っている以上、僕たちにもわかりませんね。
ですが、美術館ですか。
音楽堂と同じような目にあわなければいいのですが……。
『ちなみに美術館はそんなに凝った作りじゃなくても大丈夫よ』
「そうなんですね。また音楽堂作りの二の舞はごめんでした」
『基本的に像などを飾るだけだもの。どういったものを飾るのかは知らないけれど、魔法の空調設備と飾った像などを照らしあげる照明器具。それに全体を照らす照明さえあれば十分だと考えているわ』
「またドラゴンたちが口を出してこないでしょうね?」
『そっちは心配しなくても大丈夫よ。自分たちの宝の一部も飾ってほしいとは要望が来たけれど、美術館自体にはあまり興味がないそうだから』
「それはよかった。じゃあ、手早く作った方がいいのでしょうか?」
『オーダーとしては音楽堂のように全面クリスタルの外装がほしいそうだけれど大丈夫?』
「慣れたので大丈夫です。あと、ドラゴンからもクリスタル強化の魔術や遮熱結界を習っているのですぐにでもできますよ」
『わかったわ。ただ、美術館作りにも口を出したがっている幻獣がいるのよねえ……』
「……難しい要求じゃなければ受け入れます」
『そうしてあげて。さて、土地は確保してあるから頑張ってきてね』
「わかりました。行きましょう、リン」
「うん!」
確保してある土地、と言う場所に行くとニンフやエアリアル、そしてウィンディの姿までありました。
彼女たちが今回の依頼主でしょうか?
『よく来てくださいました、契約者様、守護者様』
『申し訳ありません。この者たちの要望が爆発寸前までたまっておりまして……』
「構いませんよ。それで、どの程度の建物を作りますか?」
『音楽堂と同じサイズの建物をお願いできますでしょうか?』
『最初は展示物も少ないでしょうがどんどん増やしていく予定ですので』
「いいでしょう。それでは一気に作ってしまいますね」
僕は音楽堂の作製で手慣れたクリスタルの建物を建ててしまいます。
魔力開閉式のドアも取り付け、傷ついたり割れたりしないようにするための魔法をかけ、内部の遮熱処理まで一気にすませました。
魔力回復用のポーションは数本のみましたが……。
『素晴らしいです、契約者様。これほどの建物ができるだなんて』
『ええ。あとは内側の建物、美術館の工事ですね』
「そちらはまるでわかりませんが、大丈夫ですか?」
『私たちはよく知っていますので』
『人間に化けてよく行っておりました』
「ウィンディ、それっていいのですか?」
『……あまりよくはありませんが、止める理由もなく』
「それで、木材はこの前使った木材でいいのでしょうか?」
『いえ、美術館自体には木材を使う必要がありません』
「木材を使わない?」
『様々な建築様式があるのです。まずは1階から作っていきましょう』
1階は基本的に岩の壁と床がメインになりました。
ところどころ木の板を細く貼り合わせた場所を作っていますがこれはなんのためでしょう?
1階には〝順路〟と言うものがあり、これをぐるっと回って見て回るように設計されているようです。
いまはなにも置かれていないので殺風景ですが。
『さて、次が2階部分です。契約者、ここに木でできた階段をつけてください幻獣たちが上り下りできるような。あと、小さい者たちでも大丈夫に設計を』
「難しいですね……このような感じでしょうか?」
『うーん、もう少し段差を低くしてあげてください。その方が上りやすそうです』
「わかりました。この程度でしょういかがです?」
『これなら大丈夫ですね。2階に参りましょう』
とりあえず2階部分も岩の床で敷き詰めてもらいたいと言うことでしたので、指示通り岩の床で敷き詰めます。
1階には光が届かなくなりましたが魔力式照明器具をある程度設置して回ったので問題ないでしょう。
『さて、2階部分ですがとりあえず順路を作ってしまいましょう。そこから本格的な作業開始です』
嫌な言葉が出てきましたがとりあえず順路を作りましょう。
2階の壁はすべて木材で細い木材を並べるようにして作るように指示され、なんだか温かみのある空間になりました。
さて、ここからが本題のようですね……。
『契約者様、壁を縦に開けてそこに少しだけ空間を空けた二枚のクリスタルを貼ってください』
「いいですが……どの程度の広さを?」
『ここからここまで。できますか?』
「楽勝ですが……遮熱や割れないようにもしたほうがいいですよね?」
『お願いいたします』
僕は指示された部分の壁を消し、代わりにクリスタルの壁を貼り直しました。
ニンフはこのあとどうするのでしょうか?
『さすがは契約者様の創造魔法。水漏れの心配もない。では始めましょう』
「え?」
「うわぁ! 綺麗!」
ニンフがやったこと、それはクリスタルの間に綺麗な水を発生させたことです。
そうすることで、外からの光が取り込まれ、水による屈折で神秘的な輝きを帯びました。
『契約者様。残り3面もお願いいたします』
「わかりました。2階はこうするんですね」
『ええ。それから、あとで、足元の岩の上に土と短い草を生やしていただけますか? 自然の草むらを表現したいのです』
「いいですよ。とりあえず、壁を先に片付けましょう」
ニンフの要望通り壁に穴を開けてクリスタルを貼る作業を繰り返したあとは草原を作る作業となりました。
そして、そのあと階段作りもお願いされて3階も作るようです。
建物の高さ的にそれが限界ですが……。
『契約者様、まずはこの階を歩けるようにしたあと、この階をドーム状に2枚のクリスタルで覆ってください』
「ドーム状?」
『ああ。イメージをお送りいたします』
ニンフから送られてきたイメージはこの階全体を半球上にすっぽり包む形に天井を作ってほしいと言うものでした。
イメージさえあれば簡単なのですが……なにに使うのか?
とりあえず、足場を作りニンフのイメージ通りの天井を作ります。
するとニンフもそこに水を張り……。
「シント、すっごく綺麗だよ!」
「そうですね。幻想的です」
『契約者様。この階も2階と同じく土と草原で覆っていただけますか?』
「わかりました。わかりましたが……なにを飾るのでしょう?」
『それはそのときのお楽しみと言うことで』
ニンフの考えはよくわかりませんが、とりあえず美術館の建物は完成したようです。
ただ、メイヤの話だといろいろなものを展示して初めて意味を成すとか。
そちらはどうするのでしょう?
「美術館、ですか?」
『そうなのよ。一部の者たちが欲しがり始めてね……』
「あの、メイヤ様。美術館とはどういう施設なのでしょう?」
『ああ、そこから話さないといけないわよね。〝美術館〟と言うのは彫刻や絵画、貴重な装飾品などを飾る場所よ』
「……それって。またドワーフたちからの要望ですか?」
『いいえ。幻獣などからの要望ね。自分たちの像を造ってもらい、それを飾ってもらうつもりなのよ』
「……なんのためでしょう?」
『……さあ?』
メイヤがわからないと言っている以上、僕たちにもわかりませんね。
ですが、美術館ですか。
音楽堂と同じような目にあわなければいいのですが……。
『ちなみに美術館はそんなに凝った作りじゃなくても大丈夫よ』
「そうなんですね。また音楽堂作りの二の舞はごめんでした」
『基本的に像などを飾るだけだもの。どういったものを飾るのかは知らないけれど、魔法の空調設備と飾った像などを照らしあげる照明器具。それに全体を照らす照明さえあれば十分だと考えているわ』
「またドラゴンたちが口を出してこないでしょうね?」
『そっちは心配しなくても大丈夫よ。自分たちの宝の一部も飾ってほしいとは要望が来たけれど、美術館自体にはあまり興味がないそうだから』
「それはよかった。じゃあ、手早く作った方がいいのでしょうか?」
『オーダーとしては音楽堂のように全面クリスタルの外装がほしいそうだけれど大丈夫?』
「慣れたので大丈夫です。あと、ドラゴンからもクリスタル強化の魔術や遮熱結界を習っているのですぐにでもできますよ」
『わかったわ。ただ、美術館作りにも口を出したがっている幻獣がいるのよねえ……』
「……難しい要求じゃなければ受け入れます」
『そうしてあげて。さて、土地は確保してあるから頑張ってきてね』
「わかりました。行きましょう、リン」
「うん!」
確保してある土地、と言う場所に行くとニンフやエアリアル、そしてウィンディの姿までありました。
彼女たちが今回の依頼主でしょうか?
『よく来てくださいました、契約者様、守護者様』
『申し訳ありません。この者たちの要望が爆発寸前までたまっておりまして……』
「構いませんよ。それで、どの程度の建物を作りますか?」
『音楽堂と同じサイズの建物をお願いできますでしょうか?』
『最初は展示物も少ないでしょうがどんどん増やしていく予定ですので』
「いいでしょう。それでは一気に作ってしまいますね」
僕は音楽堂の作製で手慣れたクリスタルの建物を建ててしまいます。
魔力開閉式のドアも取り付け、傷ついたり割れたりしないようにするための魔法をかけ、内部の遮熱処理まで一気にすませました。
魔力回復用のポーションは数本のみましたが……。
『素晴らしいです、契約者様。これほどの建物ができるだなんて』
『ええ。あとは内側の建物、美術館の工事ですね』
「そちらはまるでわかりませんが、大丈夫ですか?」
『私たちはよく知っていますので』
『人間に化けてよく行っておりました』
「ウィンディ、それっていいのですか?」
『……あまりよくはありませんが、止める理由もなく』
「それで、木材はこの前使った木材でいいのでしょうか?」
『いえ、美術館自体には木材を使う必要がありません』
「木材を使わない?」
『様々な建築様式があるのです。まずは1階から作っていきましょう』
1階は基本的に岩の壁と床がメインになりました。
ところどころ木の板を細く貼り合わせた場所を作っていますがこれはなんのためでしょう?
1階には〝順路〟と言うものがあり、これをぐるっと回って見て回るように設計されているようです。
いまはなにも置かれていないので殺風景ですが。
『さて、次が2階部分です。契約者、ここに木でできた階段をつけてください幻獣たちが上り下りできるような。あと、小さい者たちでも大丈夫に設計を』
「難しいですね……このような感じでしょうか?」
『うーん、もう少し段差を低くしてあげてください。その方が上りやすそうです』
「わかりました。この程度でしょういかがです?」
『これなら大丈夫ですね。2階に参りましょう』
とりあえず2階部分も岩の床で敷き詰めてもらいたいと言うことでしたので、指示通り岩の床で敷き詰めます。
1階には光が届かなくなりましたが魔力式照明器具をある程度設置して回ったので問題ないでしょう。
『さて、2階部分ですがとりあえず順路を作ってしまいましょう。そこから本格的な作業開始です』
嫌な言葉が出てきましたがとりあえず順路を作りましょう。
2階の壁はすべて木材で細い木材を並べるようにして作るように指示され、なんだか温かみのある空間になりました。
さて、ここからが本題のようですね……。
『契約者様、壁を縦に開けてそこに少しだけ空間を空けた二枚のクリスタルを貼ってください』
「いいですが……どの程度の広さを?」
『ここからここまで。できますか?』
「楽勝ですが……遮熱や割れないようにもしたほうがいいですよね?」
『お願いいたします』
僕は指示された部分の壁を消し、代わりにクリスタルの壁を貼り直しました。
ニンフはこのあとどうするのでしょうか?
『さすがは契約者様の創造魔法。水漏れの心配もない。では始めましょう』
「え?」
「うわぁ! 綺麗!」
ニンフがやったこと、それはクリスタルの間に綺麗な水を発生させたことです。
そうすることで、外からの光が取り込まれ、水による屈折で神秘的な輝きを帯びました。
『契約者様。残り3面もお願いいたします』
「わかりました。2階はこうするんですね」
『ええ。それから、あとで、足元の岩の上に土と短い草を生やしていただけますか? 自然の草むらを表現したいのです』
「いいですよ。とりあえず、壁を先に片付けましょう」
ニンフの要望通り壁に穴を開けてクリスタルを貼る作業を繰り返したあとは草原を作る作業となりました。
そして、そのあと階段作りもお願いされて3階も作るようです。
建物の高さ的にそれが限界ですが……。
『契約者様、まずはこの階を歩けるようにしたあと、この階をドーム状に2枚のクリスタルで覆ってください』
「ドーム状?」
『ああ。イメージをお送りいたします』
ニンフから送られてきたイメージはこの階全体を半球上にすっぽり包む形に天井を作ってほしいと言うものでした。
イメージさえあれば簡単なのですが……なにに使うのか?
とりあえず、足場を作りニンフのイメージ通りの天井を作ります。
するとニンフもそこに水を張り……。
「シント、すっごく綺麗だよ!」
「そうですね。幻想的です」
『契約者様。この階も2階と同じく土と草原で覆っていただけますか?』
「わかりました。わかりましたが……なにを飾るのでしょう?」
『それはそのときのお楽しみと言うことで』
ニンフの考えはよくわかりませんが、とりあえず美術館の建物は完成したようです。
ただ、メイヤの話だといろいろなものを展示して初めて意味を成すとか。
そちらはどうするのでしょう?