「すごいっ、すごいっ!」
 あたしは遥ちゃんに向かってパチパチと力いっぱい拍手をおくった。
「えへへ、どうもありがとう」
 うれしそうにはにかむ遥ちゃん。
「スゴイよ、遥ちゃん! まるでプロみたい。どこかで習ってるの?」
 ほめたつもりだったけど、なぜか遥ちゃんの表情はちょっぴり曇った。
「うん……半年前までは、市内のダンススクールに通ってたんだけど」
「通ってた?」
 辞めちゃったのかな? でも、どうして?
 遥ちゃんは自分の栗色の髪の毛に手をやりながら、
「同じスクールに通う子たちに、ちょくちょく言われるようになったんだ。あの子、日本人じゃないよね、って」
 と、小さくため息をついた。
「わたしのおばあちゃん、アメリカ人なの。お父さんは日本とアメリカのダブルで、お母さんは日本人で。わたしは生まれてからずっと日本で暮らしてるんだけど、いろんなひとから、外国の子なの? とか、日本人離れしたスタイルだよね、とか言われるようになって。みんな悪気はないんだろうけど、外国人、外国人って指さされるのがなんか苦しくて。英語なんか全然話せないのに」
 やさしい遥ちゃんの顔に、深い悲しみの色がよぎる。
「だから、ひとりで練習してるの?」
 あたしの言葉に、遥ちゃんは静かにうなずく。