「それにしても……不死のヒューゴか。『不死者にする能力』と『攻撃を無効化する能力』。二つの能力を持っている。厄介だな」

司は改めて、一族の上層部の者達の手強さを肌で感じ取っていた。
奏多達はこのエレベーターから、上層部の本部の最上階に向かうことになる。
奏多達の姿を見やりながら、一族の上層部、そして『破滅の創世』の配下達と相対した時の行動について、道すがらの相談を開始した。

「今のところ、『破滅の創世』の配下達は追ってきていない。さすがに、一族の上層部の本部に潜入してくるとは思えないが、用心に越したことはない。『破滅の創世』の配下達の手の内はまだ探れないのだろうが、今後、奏多様と此ノ里家の者を狙ってくるのは間違いないな」

司がこれまでの状況から推測を口にする。

「つーか、強奪で能力を奪えるのは厄介だな。アルリットがヒューゴの能力を奪わったら、大変なことになりそうだ」
「本当ね」

慧と観月は底の知れない『破滅の創世』の配下達の力に改めて畏怖した。

「まぁ、アルリットは不滅の王レン、忘却の王ヒュムノスと同じく、『破滅の創世』の幹部の一人だからな」

ひりつく緊張が慧の首元を駆け抜けて行く。
『破滅の創世』の配下の者達の中でもひときわ常軌を逸している存在が『幹部』と呼ばれる者だ。
アルリットもまた、『蒼天の王』として、蒼穹の銘を戴く幹部の一人である。

「とにかく、急ごう。ここで『破滅の創世』の配下達に襲われては元もこうもない」

事は急を要すると、司達『境界線機関』の者達は巨大なエレベーターに乗り込む。

「『破滅の創世』の配下達の狙いは俺だ。何とかしないと……」

戦局を見据えていた奏多は置かれた状況を重くみる。

「『破滅の創世』の配下達の狙いは奏多様。恐らく、何らかの形で接触してくるわね」

観月は響いてくるエレベーターが一気に上がる音に緊張を走らせる。
今は司達、『境界線機関』の機転で、『破滅の創世』の配下達の追っ手を振り切っている。
とはいえ、あくまでこれは超常の領域にある『破滅の創世』の配下への目眩まし程度。
倒すを確約するものではなく、どれほど妨げられるのかも未知数。

「一族の上層部はこの状況をどうするのかしら……?」

そう口火を切った観月は懸念を眸に湛えたままに重ねて問いかける。

「このまま、奏多様を上層部の本部で匿うつもりなのかしら?」
「その可能性は高いな。この状況になることを予め、推測していた、と考えるべきだ」

状況を踏まえた慧はそう判断する。一族の上層部の矜持。その悪辣なやり方を紐解けば、全てが合致したからだ。