『境界線機関』の者達が、ヒューゴの位置を確認し、即座に布陣する。

「おいおい、物騒だな。俺を捕らえるつもりか」

ヒューゴは自分を取り囲む『境界線機関』の者達を見る。

「まあ、俺を捕らえることなんて、不可能に近いがな」

ヒューゴは自分を取り囲む『境界線機関』の者達を改めて見渡した。
それをきっかけに、得物を手にした『境界線機関』の者達が次々に突撃を敢行する。

「おっと! だから、俺はここで死ぬつもりはないって言っているだろう!」

ヒューゴは忌まわしくも見慣れた悪意を視界に収めた。

「くっ……!」

想定外の出来事を前にして、『境界線機関』の者達は驚愕する。
ヒューゴの能力。死んだ者をアンデット、つまり不死者にすることのできるそれは、この状況下でも絶対的な強さを発揮した。
飛行機の墜落で亡くなったはずの人達が、まるでアンデットのように蘇ったのだ。

「なっ!」

奏多は自分を取り囲む乗客達を見つめた。

「こいつは……!」
「……どうなっているの?」

想定外の出来事を前にして、慧と観月は驚愕する。

「ど、どうして……?」
「ほええ、大変です。皆さんが奏多くんを取り囲んでいますよ!」

奏多と結愛は混乱する頭でどうにか言葉を絞り出す。

「ちっ、この状況も、奴の仕業か」
「そんな……。これもヒューゴの能力によるものなの……」

慧と観月の反応も想定どおりだったというように、ヒューゴの表情は変わらない。

「不死能力。その能力、本当に素晴らしいね。ねー、一族の上層部さん」
「……冬城聖花の時と同じように、機会を見計らって俺の能力を奪う魂胆ってわけか」

アルリットの目に宿った殺意を前にしても、ヒューゴは余裕綽々という感情を眸に乗せる。

「うん、そうだね。あの人間の能力はかなり便利だよ」

ヒューゴが抱いた疑問に、アルリットが嬉々として応える。
そう、便利――あるいは使い道があるとでも言い換えてもいい。
その言葉の裏には『聖花の能力には利用価値がある』という事実がある。

奏多を取り囲む乗客達。
彼らはみな、虚ろな眼差しで、とても正気の沙汰とは思えなかった。

ヒューゴの能力。死んだ者をアンデット、つまり不死者にすることのできるそれは、この状況下でも絶対的な強さを発揮している。
恐らくは無理やり、アンデットにさせられているのだろう。

「皆さん、これ以上は行かせませんよ! 私達にとって、奏多くんは大切な存在です!」
「……結愛!」

乗客達が無理やり、アンデットにさせられている。
何とか状況を飲み込んだ結愛は勇気を振り絞り、奏多のもとに向かった。