真偽は、僕から見て完全に道化師になっていた。
結婚に縛られ、会社に縛られ、夢を失った道化師に。
目指すと約束したあの青春から逸脱だ。
方向性が違ったようだ。
できると思うことはできるの信念を曲げるつもりを僕は変える気はない
エロスに逃げた彼を責めるつもりもない。
彼は、彼なりの夢を描いているのだ。
たまに様子を確認する。
連絡をとっている。
「お元気ですか?お久しぶりです。真人です。
私は、いまもできることと、できないことの狭間にいます。
14歳のとき送った君との約束をはっきり覚えています。
できると思ったことはできると胸をはり教育のシステムの変化を求めたあの頃が懐かしいです。私はいまでもできると思っていますが、それでも時間と忍耐力が必要なようです。16年の月日が経ち、ドバイを中心に活動しています。
日本国は、老害により新しい挑戦を嫌う傾向にあるようです。
ドバイの私立の大学で、グループでの授業を行えるようになってきました。AIによりその創造性は著しく伸びてきています。しかし、自分一人のできることはわずかです。家庭の諸事情も有ると思いますが、真偽の状況を聞かせていただければ幸いです」

「家庭を持ち、企業の仕事をこなし充実感もあります。仕事では、プログラムを組み自動運転する機械が火星にまでいきました。この企業をやめる勇気が自分にはありません。君に答えるだけの力を私は持ち合わせていません。いまの幸せを創ることはできています。いまは目の前の幸せを見つけ、真人と共創できることがありましたらお気軽に連絡ください」

家庭をもち幸せに過ごしていることが分かった。
約束を果たせていない無念の思いが伝わってくる。
しかし、このままお互いの距離を詰めないほうが得策だと結論づけた。
無理に彼を誘っても無駄である。その後、すっかり疎遠になった。