「天文占星省の専門家によれば、巨大隕石は1時間後にセレシア侯爵家に直撃。この屋敷を中心に半径20キロは爆風で跡形もなく消し飛ぶそうです」
「半径20キロ……? は……? え……?」
セレシア侯爵家は王城のすぐそば、王都のほぼ中央に位置している。
だからここを中心に半径20キロってことは、つまり王都の端から端まで綺麗さっぱり更地になっちゃうってこと!?
「その外側も甚大な被害が予想され……つまりここ王都は1時間後に壊滅します」
「じょ、冗談よね……?」
「冗談かどうかは、どうぞマリア様ご自身の目でご確認くださいませ。既に空に、飛来する巨大隕石の姿を見ることができますので」
アイリーンを従えて慌てて中庭に出た私は、手でひさしを作りながらおそるおそる空を見上げた。
すると――、
「な――っ!! なんて大きさなの!?」
悠然と空に浮かんだ巨大な隕石を目の当たりにして、私の喉がゴクリと鳴った。
あんな巨大なものが空から落ちてくるなんて――!
「先ほど見た時よりもかなり大きく見えますね……かなり近づいているようです」
アイリーンが感情を押し殺しながら呟いた。
「あれが今からここに落ちてくるのよね……?」
「左様にございます」
「嘘でしょ……?」
「残念ながら本当です」
「…………」
「…………」
私とアイリーンが中庭で言葉を失っていると、セバスチャンがやってきた。
「マリア様、そのご様子ですと既にアイリーンから詳細はお聞きしておられるようですな」
「セバスチャン……ええ、聞いたわ」
「では話は早うございますな。王都で一番足の速い馬車を用意いたしました。一刻も早くこの場からお逃げください。1時間で進める距離程度では気休め程度にしかならないでしょうが、落下予想地点であるこの場所にいるよりははるかにマシなはずですから」
「……」
「どうされましたマリア様? 事態は一刻を争います。もはや猶予はありません。どうかすぐに馬車にお乗り下さい」
「この私が……セレシア侯爵家令嬢マリア=セレシアが、たかが石ころ一つに右往左往して逃げ惑うなんて、なんて屈辱なの……!」
「マリア様、今はそんなことを言っている場合では――」
「そうよ、なぜ私が逃げないといけないのよ!」
「お気持ちは分かります。ですが今は1メートルでも距離を取ることが先決なのです。どうかお聞き入れ下さいませ」
深く首を垂れ、必死に私に逃げるように言葉を尽くしてくるセバスチャン。
だがしかし私は逃げたくなかった。
たかが石ころ一つで無様に逃げ惑うなんてことは、王国で最も権勢あるセレシア侯爵家の令嬢たる私には、到底受け入れられなかった――!
すると突然、私の中に猛烈な闘気が巻き起こってきた。
それとともに、かつて封印した古の記憶が鮮やかによみがえってきたのだ――!!
「いいえ逃げないわ。全て私に任せなさい。この聖天使マリアにね!」
私はアイリーンとセバスチャンに向かって高らかに宣言した――!
「半径20キロ……? は……? え……?」
セレシア侯爵家は王城のすぐそば、王都のほぼ中央に位置している。
だからここを中心に半径20キロってことは、つまり王都の端から端まで綺麗さっぱり更地になっちゃうってこと!?
「その外側も甚大な被害が予想され……つまりここ王都は1時間後に壊滅します」
「じょ、冗談よね……?」
「冗談かどうかは、どうぞマリア様ご自身の目でご確認くださいませ。既に空に、飛来する巨大隕石の姿を見ることができますので」
アイリーンを従えて慌てて中庭に出た私は、手でひさしを作りながらおそるおそる空を見上げた。
すると――、
「な――っ!! なんて大きさなの!?」
悠然と空に浮かんだ巨大な隕石を目の当たりにして、私の喉がゴクリと鳴った。
あんな巨大なものが空から落ちてくるなんて――!
「先ほど見た時よりもかなり大きく見えますね……かなり近づいているようです」
アイリーンが感情を押し殺しながら呟いた。
「あれが今からここに落ちてくるのよね……?」
「左様にございます」
「嘘でしょ……?」
「残念ながら本当です」
「…………」
「…………」
私とアイリーンが中庭で言葉を失っていると、セバスチャンがやってきた。
「マリア様、そのご様子ですと既にアイリーンから詳細はお聞きしておられるようですな」
「セバスチャン……ええ、聞いたわ」
「では話は早うございますな。王都で一番足の速い馬車を用意いたしました。一刻も早くこの場からお逃げください。1時間で進める距離程度では気休め程度にしかならないでしょうが、落下予想地点であるこの場所にいるよりははるかにマシなはずですから」
「……」
「どうされましたマリア様? 事態は一刻を争います。もはや猶予はありません。どうかすぐに馬車にお乗り下さい」
「この私が……セレシア侯爵家令嬢マリア=セレシアが、たかが石ころ一つに右往左往して逃げ惑うなんて、なんて屈辱なの……!」
「マリア様、今はそんなことを言っている場合では――」
「そうよ、なぜ私が逃げないといけないのよ!」
「お気持ちは分かります。ですが今は1メートルでも距離を取ることが先決なのです。どうかお聞き入れ下さいませ」
深く首を垂れ、必死に私に逃げるように言葉を尽くしてくるセバスチャン。
だがしかし私は逃げたくなかった。
たかが石ころ一つで無様に逃げ惑うなんてことは、王国で最も権勢あるセレシア侯爵家の令嬢たる私には、到底受け入れられなかった――!
すると突然、私の中に猛烈な闘気が巻き起こってきた。
それとともに、かつて封印した古の記憶が鮮やかによみがえってきたのだ――!!
「いいえ逃げないわ。全て私に任せなさい。この聖天使マリアにね!」
私はアイリーンとセバスチャンに向かって高らかに宣言した――!