ついにこの日がきてしまった。
 私は卒業証書が入っている丸筒を握りしめる。これからのことを考えると不安と緊張で押しつぶされそうだった。
 今から誰かに告白するため、手に汗握っているのではない。そんな青春は私には無縁で、好きな人すらいない。
 高校を卒業したら、大学生になる。ということは、梨美とはもう毎日のように会えないのだ。三年間同じクラスで、双子のようにずっと二人で行動していたが、進学先は別だ。私は私立の経済学部へ、梨美は国立の教育学部へ進む。
 別々の学校へ通うことになるのは寂しい。梨美とはずっと一緒にいたい。友達としてごく当たり前な気持ちであるが、私はその気持ちに上乗せするものがある。

 梨美がいなくなると、私は友達すらつくれない。服だって何を着ればいいのか分からないし、どんな持ち物を買えばいいのか分からない。
 梨美がいないと、私は何もできないので梨美が傍にいないと不安で不安で仕方ない。
 こんなにも私が依存している梨美とは、入学初日に梨美から話しかけてくれてすぐに仲良くなった。

「香澄って呼んでいい?」

 そう言った梨美はとても明るくて、あ、この人多分クラスで人気者の立ち位置になるなと思った。
 教室の端で本を読んでいるような友達が少ない女子にはなりたくなかったし、漫画やアニメの話だけで奇声を上げて盛り上がる女子にもなりたくなかった。
 友達をつくろうと自ら行動に移すことはできなくて、話しかけられるのを待っていただけの私が選好みするのもおかしな話だが、仲良くなる相手は選ばなければ今後のスクールカーストに関わってくると思った。
 誰と友達になろうと考えあぐねていた私は、すぐに梨美と仲良くした。
 最初はそういう計算があったけれど、梨美と話すのは楽しくて、気づけば親友になっていた。

 私はそれまで、どちらかといえば大人しいグループに属していた。クラスでいじめがあればそれを静観するタイプだ。悪乗りするわけでなく、いじめのターゲットになるでもない。
 高校は中学と違っていじめはなかったけれど、スクールカーストは存在した。
 私は梨美と一緒にいることで、カーストの上位に居た。
 それが誇らしく思うこともあったけれど、全部梨美のお陰であって、私自身がどうにかして掴み取った場所ではない。

 ある日、クラスメイトの女子に言われたことがある。

「香澄ちゃんって、梨美ちゃんと似てるよね」

 ぎくっとした。
 何でもないような顔をして「そうかな?」と言ってみたけれど、内心冷や汗をかいていた。
 その子の言うとおりだったからだ。
 私は梨美の真似をしていた。似ているのは当然だ。

 肩より少し長いストレートの髪も、色のついたリップクリームも、体操服のズボンは腰より少しずらして履くことも、ノートのとり方も、鞄の形も、全部梨美に似せた。
 全く同じだとすぐにばれてしまうので、似ているものを探して身に付けていた。
 例えば、クラスメイトが使用している蛍光マーカーは黄色とピンクが断トツで多いが、梨美は緑色を使っていた。だから梨美が持っているマーカーとは違うメーカーの緑色を買った。梨美が朝読書で読んでいる小説が太宰治なら、私は夏目漱石を読んだ。
 朝読書で太宰治なんて教科書に出てくるような本を読むのは、クラス内で梨美くらいだった。最近流行りの恋愛小説や、漫画を小説にしたものや、国語の教科書を読む生徒がほとんどである。その中で、梨美は皆とは違うジャンルの本を読んでいて、それがとても恰好よかった。
 夏目漱石の小説は面白くなかったけど、梨美と同じになれたようだった。

 梨美の真似をすると、ワンランク上の自分になれたようで楽しかったし嬉しかった。
 小学生の頃、今の私のように人の真似をする女子がいたけれど、彼女もこんな気持ちだったのかと思うと、あの時心の中で責めていた自分を恥ずかしく思う。

 高校三年間の私は梨美で作られたと言っても過言ではない。
 そんな私は、今日で高校を卒業する。つまり、梨美からも卒業しなければならないということだ。

 大学生にもなって、「梨美は最近何色のマーカーを使ってる?」「どんな本を読んでる?」「今日の服はどんな感じ?」「髪型は?」「どんな子と友達?」など、聞けるはずがない。
 「何でそんなこと聞くの?」と変な顔をされるに決まっている。
 私は大学生になって、どうすればいいだろう。どんなものを持てばいいだろう。身の振り方はどうすればいいのだろう。
 私は卒業後、路頭に迷うこととなるのだ。

 周囲では最後に写真を撮るべく、制服を着て筒を持っている生徒たちの声が楽しそうに響いている。
 校舎裏で撮ったり、校庭で撮ったり。教室からも声がする。
 私も梨美と写真を撮りたい。
 けれど、それよりも、四月のことを想像すると途端に胃が痛くなる。

 階段を上り、教室へ入ると数人のクラスメイトが携帯からシャッター音を出して笑っていた。
 最後だからと梨美は色んな人と写真を撮っている。時間を考えると恐らくもうこれで撮影会は終わりだろう。
 私は数人と撮っただけだ。いくら梨美の近くにいて、梨美に似せても、人望まで同じではない。
 梨美と帰ろうと思っていたのだが、思ったより梨美に話しかける人が多く、私は特に意味もなく卒業証書が入った丸筒を持ってぷらぷらと歩いていた。
 もう終わっただろうと思って教室へ戻って来たのだが、もう少し遅く戻った方がよかったなと少しだけ後悔した。

 私に気付いた梨美は大きく手を振り、「香澄!」と私の名前を呼んだ。応えるように手を振ると、梨美の傍にいた子たちが空気を読んで「絶対連絡してね!また会おうね!」と言葉を残して教室から出て行った。
 一気に静まり返った教室には、私と梨美の二人だけ。
 梨美は笑顔で「どこ行ってたのさー」と私の肩を叩いた。

「梨美、人気者だね」

 率直な感想を口にした。

「そうかな?」
「そうだよ」
「あ、香澄と写真まだ撮ってないよね。撮ろうよ」

 梨美はスカートのポケットから携帯を取り出した。
 肩を寄せ合い、口角を上げて写る。
 シャッター音がしたあと、写真を確認すると私は可愛くなかった。梨美は可愛く写っている。
 いくら梨美に似せたところで、梨美のように可愛くなるわけではない。それくらい分かっているが、やはり現実を突きつけられると落ち込んでしまう。

「保存保存っと」

 梨美は大事そうに保存し、今度は私の肩に腕をまわして撮った。
 やはりこれも、私は可愛くない。
 もう少し遠くから撮ればマシに写るのに。

「はぁ、あたしらも大学生になるんだねぇ」

 携帯をポケットに収め、梨美はしみじみと言った。
 誰かの机に腰を下ろし、見納めするように教室をぐるりと見渡す。

「大学は別々だけど、絶対また遊ぼうね。ってか入学式がある週の土曜日に会おうよ」
「いいね」

 今から会う約束を取り付けられ、私はほっとした。
 大学で上手くやっていけるだろうか。
 私はこの三年間ずっと梨美頼りでやってきた。高校でできた友達はすべて、梨美が紹介してくれた子だ。移動教室に変更になったときは梨美が真っ先に教えてくれたし、修学旅行の班決めでは梨美が誘ってくれたし、何もかも梨美が私を引っ張ってくれていた。
 そんな梨美から離れることになる。
 三年間で染み付いたものは、なかなか落ちてくれない。

「帰ろっか。あれ、香澄、そのキーホルダーちびかわじゃん」

 鞄を背負い、腰を上げると梨美が気づいた。
 私の鞄に付けているキーホルダーは、最近街中で見かけることが多い、ちびかわというキャラクターだ。
 まるまると太っている猫がとても愛らしく、人気上昇中のキャラクターは、梨美の筆箱にもついている。

「可愛いよね、ちびかわ。あたしも好き」
「だ、だよね」

 梨美は私のキーホルダーを触りながら、ちびかわの愛らしさを堪能している。

「でも香澄ってこういうの好きだっけ?」
「え?」
「あたしが筆箱につけてるの知ってるよね?それ見たときの香澄の反応があんまり良くなかった気がしたから」

 鋭い。
 あの時はちびかわの存在を知らず、「変な猫だな」以上の感想が持てなかった。
 ここ最近、ちびかわの認知度は上がり、ニュースで見かけてから慌てて購入したのだ。
 世間で可愛いと言われ始め、梨美が持っているキャラクター。買わない理由がなかった。

「ちびかわ、好きになったの?」

 ただの世間話にしては、射貫くような視線だ。
 「好きになったの?」の裏に「またあたしの真似?」という言葉が隠れているようで、ごくりと喉を鳴らした。
 まさかばれているのでは。
 これは、私を試しているんじゃないだろうか。
 三年間、一度も梨美から「それってあたしの真似じゃない?」なんて指摘を受けたことはない。指摘されたところで恐らく私は否定したし、逃げ切ろうとしらを切っていたはずだ。

「香澄?」

 私の顔を覗き込むように、下から見上げる。

「ちびかわ、いつから好きになの?」

 怖いくらいにじっと見つめられる。
 梨美の表情には「正直に言え」とはっきり書いてある。
 誰かから聞いたのだろうか。似てるね、真似だね、と耳打ちされたのだろうか。
 間違いではない。その通りだ。
 けれど私がそれを認めるには、とても勇気がいる。

 この場で曖昧に答えて逃げ切ったとして、大学生になったら私はどうすればいいのだろう。
 真似なんてしてないよ、と言ったとして、その後はどうなるのだ。
 大学生になって私服を考える時、梨美にそれとなくどんな服を着ているか聞いたとして、真似しないんじゃなかったの?と鼻で笑われるのではないか。

 そんな想像をしていると、思考はどんどんマイナスの方向へ傾く。

 梨美は変わらずじっと私の答えを待っている。
 もう、言ってしまおう。
 真似しているのは事実だ。
 この場で白状した方が早く楽になれる気がする。
 じんわりと拳から汗が滲み、鼓動が早くなる。
 私は梨美から視線を外し、気づかれないように息を吐いた。

「あの、実は、その通りで…」

 何と切り出せばいいか分からず、ごにょごにょと小さく口を動かす。
 梨美は聞き取れなかったのか、目をぱちくりさせて首を傾げた。

「私が、その、梨美を…お手本にしてたから」

 真似をした、と断言する勇気はなくて柔らかい言い方しかできない。
 梨美の口から何も発せられることはなく、私は恐る恐る続ける。

「私、センスがないから、人気者の梨美をお手本にしたら間違いないと思ったの…」

 本当だ。嘘じゃない。
 周りを見渡すと、皆可愛いものを持っている。それを堂々と「これ可愛いでしょ」と言えるのも羨ましかった。
 可愛いポーチや鞄、靴を見ると自分が持っているものが恥ずかしくなって、隠したくなる。
 別に私が持っているこれを可愛いと思って買ったんじゃなくて、ただ安かったから買っただけ。そんな言い訳を心の内で並べないと、自分を保てなかった。

「ちびかわは、好きって程じゃない。でも梨美が持ってる上に有名だから、私も便乗して買ってみただけなの」

 未だに梨美と視線を絡めることができなくて、斜め下を見る。
 床に落ちている消しゴムのカスや小さな埃は、高校生活最後の掃除をいつも通り雑に行ったことを物語っている。
 散らばっている中でも一番細長い消しカスを眺め、梨美からの言葉を待つが一向に喋らない。
 呆れて声も出ないのだろうか。
 何も喋らない梨美の顔を見るのが怖くて、俯いた状態から動けずにいる。

「…香澄」

 じっくり時間を空けて、梨美は私の名前を呼んだ。
 何を言われるのかとびくびくしながら、視線を床から梨美の足元へ移動させた。

「やっぱりそうなの!?」

 少し大きい声は、責めるようなきついものではなくどちらかというと驚愕の色が混ざっていた。
 私は口を開けずに「うん」と音を発するのが精一杯だった。

「持ってるものがあたしと似てるなぁ、とは思ってたんだけど、自意識過剰かなぁとも思って聞けなかったんだよね」

 そっかそっか、と続ける梨美から嫌悪は感じられず、むしろ明るく楽しそうだった。
 誰しも黙って真似をされたら嫌な気になると思っていたので、私は思わず視線を梨美の足元から顔へと移した。
 そこには笑顔があって、つい眉を寄せて首を傾げてしまう。

「つまり、あれでしょ、自分で言うの恥ずかしいけどさ」

 梨美はちらちらと私の反応を見ながら、照れたように後頭部を掻いた。

「つまり、あたしに憧れてるってことでしょ?」

 今度は私が目をぱちくりとさせる番だった。
 憧れている。
 間違ってはいない。良い言い方をすると、そういうことだ。
 梨美をお手本に、参考に、私は色々な物を選んだ。
 そこに憧れが入っていたのは事実だ。

「香澄ってあたしに憧れてんの?なんて聞けないじゃん。自意識過剰女ってイタイじゃん。だからずっと気になってたんだよねー。良かった、聞けて。そっかそっか、やっぱり憧れてたんだ。へへ」

 梨美のプラス思考に脱帽した。
 普通、「真似してたんだ、あっそ」と嫌がるものだ。真似をされて嬉しい人間に出会ったことがない。「あいつに真似された」「同じ鞄買わないでほしい」などの話はあちこちでされている。自分一人だけ持っていたはずの物が故意にお揃いにされる不快感。
 その不快感は、どうやら梨美にはないらしい。
 真似、と言うのではなく憧れと表現した梨美は、根からの明るい女の子だ。梨美を普通の枠に収めるのは、間違いだった。

「香澄、さっきから静かだね」

 梨美が笑いながら言うものだから、私もつられて笑ってしまう。
 想像していた反応とは正反対で、体の力が抜けていく。
 こんなことならもっと早く言えばよかった。

「私、不安なの」
「何が?」
「大学には梨美がいないから、私は何を着て、何を持てばいいのか分からないの。ずっと梨美をお手本にしてたから、不安なの」

 卒業式が近づくにつれてずっと抱いていた不安を初めて打ち明けた。
 中学生までの自分は何も考えていなかった。そのため、センスのない人間だと陰でこそこそ嘲笑されていた。
 今思い出しても、確かにボーダーのシャツにチェックのズボンはセンスがないと思われても仕方がない。
 それに気付いたときの恥ずかしさは半端ではなく、自分で選ぶものに自信が持てなくなった。
 大学でも同じように味わうのかと思うと、不安と恐怖が襲いかかる。

「自分の好きな物でよくない?あたし、好きな物しか買わないよ」

 それができたら苦労しない。
 私と梨美は性格から違う。梨美は堂々と好きな物を公言して好きな物を身に付けることができるけど、私はそんなことできない。

「でも、私にはセンスがないから」
「えー、そんなこと言ってたら楽しくないよ」

 楽しいか楽しくないかの二択であれば後者だ。
 好き嫌いは関係なく、梨美を見てから決めているのだから。

 もじもじと両手の指を弄ぶように動かしていると、梨美がその手を取った。

「じゃあ一緒に選んでいこうよ」

 その言葉が温かく、私の胸の中にじんわりと溶けていく。
 そうか、そういうこともできたんだ。
 考えてみれば、梨美は他人を悪く言うような心の狭い子ではない。私の後ろめたい気持ちが大きすぎたのだ。
 もし早い段階でこのことを伝えていれば、学校帰りに制服姿のまま、二人で楽しくショッピングをするという未来もあったのかもしれない。服を買った後は、アイスかクレープを食べて帰宅する。そんな想像をすると、少しばかりの後悔が押し寄せた。
 高校生活が満足のいくものでなかった、というわけではない。梨美のおかげでとても楽しい三年間を送ることができた。しかし、二人で悩みながら服を選んだり、アクセサリーや小物を買いに出掛けたことはなかった。
 梨美が可愛いと言ったものを「本当だ!可愛いね!」と同調し、「じゃあお揃いで買おうよ」となった物が三つあるくらいだ。

「大学初日は入学式だからみんなスーツだよね。二日目から私服になるのかな?派手な格好よりはシンプルな感じか、清楚な感じがいいと思うんだよね。パンツスタイルじゃなくてロングスカートで、髪型ハーフアップがいいと思う」

 梨美は真剣な表情で、顎に手を当てて考えている。
 私はというと、「そ、そうなんだ…?」と首を傾げながら答えることしかできない。
 その様子を見て梨美ははっとした表情になった。

「明日空いてる?一緒に買いに行こうよ」
「あ、明日?」
「いきなりだったかな?」
「そうじゃないけど、でも、いいの?」
「いいに決まってるじゃん。むしろ駄目なんてことがある?」

 何もかも吹き飛ばすような笑みだった。

「それじゃあ、明日いいかな?」
「当然よ。隣街に大きなショッピングセンターができたらしいから、行ってみよう!午後一時に駅集合ね」

 決まりだ、とでも言わんばかりに鞄をも持ち直し、筒で私の腕を軽く叩く。
 梨美が扉の方へ歩き始めたので、私は梨美の後ろを歩く。

 こんなにあっさり終わるとは、思わなかった。
 喧嘩別れするかもしれないと不安だったけれど、もっと早く言えばよかったという後悔に変わった。
 梨美は凄い。
 私もこんな人間になりたいと思う。
 友達は多くて、自信で溢れていて、誰とでもすぐ仲良くなれる梨美はきっと大学でも人気者になるだろう。
 持つ物一つでうじうじする私とは大違いだ。

 梨美みたいになりたい。

 そう思ったが、これも真似ではないのか。
 梨美の持ち物だけでなく今度は梨美の性格までも真似しようというのか。
 いや違う。
 真似なんて言葉で片づけるのは違う。
 憧れ。
 その言葉がしっくりくる。

 前を向いて歩く梨美の後ろにいたが、少し歩く速度を上げて、梨美の隣を歩いた。
 廊下の窓から入ってくる風に生徒の声が乗っている。
 階段を下りて靴を履き替え、校門まで行くと梨美はポケットから携帯を取り出した。

「この辺でも写真撮ろうよ」

 校門に書かれている学校名をフレームに入れる。
 これが高校生活最後の写真だな、としんみり思った。

 画面に映っている位置を確認していると、梨美が変顔を始めた。

「ちょっと、梨美、笑わせないでよ!」
「だって学校で撮るの最後だよ!?綺麗な写真はいっぱい撮ったし、最後くらい変顔で撮ろうよ」

 そう言って黒目を寄せ、口を窄める。
 梨美の顔がおかしくて、私はついつい声を上げて笑った。

「もう、香澄も変顔してよ」
「む、無理!はははっ」

 私は梨美の腕に自分の腕を絡ませて、シャッターボタンを押した。
 変顔をして、と言い寄る梨美と口を大きく開けて笑っている私。

 今まで撮った写真の中で、一番のものだった。
 すぐに待ち受け画面にする。
 何度見ても二人とも良い表情で、とても楽しそうだ。
 私はきっとこの日のことを忘れないだろうし、この写真をずっと大切にするだろう。

 卒業して寂しい気持ちはあるけれど、それよりも明日が待ち遠しく、梨美の隣で帰り道を歩いた。