・【面白そうだなと思って作った服】


 私は何かイジりがいがあるような気がして、ちょっと詰めてみることにした。
「面白そうな服って何? 私が着れそうな服があるということ?」
「まっ、まあ……しゅ、趣味とか、じゃないんですけども……」
 何だこの感じ。何か見たことある。これはアレだ。私だ。
 変な性癖が友達にバレそうになっている時の私だ。
 もしかするとリュウって……
「めっちゃいやらしい服、作ったことがあるの?」
「そういうわけじゃないです! 仲間内でいいなみたいな感じになって!」
 めっちゃデカい声出すじゃん、と思いつつ、ついニヤニヤしてしまう。
 そっか、そっか、リュウも私と一緒で服の癖があるのねぇ、それは似た者同士で興奮するわぁ。
 私は優しく諭すように、
「大丈夫、私もいろんな服好きだから。変わった服を着ること、前の世界でもあったからさ。私に見せてごらん? その服」
「えっ、梨花は向こうの世界ではモデルだったんですか?」
 モデルという職業はこっちにもあるみたいだ。
 えっと、どうしよう、まあいいか、
「そう、私モデルだったの。さらに自分で服を作ることもあってね」
 と言うと、嬉しそうにパァっと顔を明るくしたリュウ。
「服! 自分で作っていたんだ! じゃあ変わった服の耐性もあるよね!」
 変わった服の耐性という言い方し始めたなぁ、と思いつつ、私は、
「そうそう、だからその変わった服というヤツを見せてよ。私めっちゃ服好きだから」
「そ、それなら……あくまで、あくまでね! 研究のために作っただけで! 変わり種のアイスみたいなもんで!」
 いやまだ見せていないのに、すっごい言い訳を走らせる。
 焦り過ぎて敬語じゃなくなっているし、それはいいんだけども。
 というかリュウの作った変わった服って何だろう、ボンテージとかかな、結構ハードなのかな、それともハードにされたいのか。
 ボンテージとか着たら、どんな魔法使えるんだろうとか思っていると、
「じゃ! じゃあ! 見せるね! このチャイナドレス!」
 とリュウが言って「えぇっ!」と思った。
 こっちの世界でもチャイナって言ったと思った瞬間に、いや私の言い回しに変換されるのかとも思ったり、でもそれ以上にチャイナドレスがあるなんて、とも思ったり。
 そしてリュウが見せたその服はなんと鬼神騎士に出てくるエイリーのチャイナドレス激似だったのだ!
「エイリーだ!」
 つい叫んでしまった私。変な顔されていないかなとすぐにリュウのほうを見ると、リュウはそんな私が言ったことなんて多分耳に入っていないくらい、耳まで真っ赤にして立っていた。
「この脚のスリットは、その、動きやすいという意味もあるん、だってさ……」
 脚の長すぎるスリットもまんまエイリーの服だ。
 この赤色を基調として、ドラゴンっぽい金色の模様が全身に走っているところもまさに。
 胸のところが大胆に開いているところもまさに漫画のチャイナドレスだった。
 これ、もしや私、エイリーの技が使えるようになるの……? と思いながら、すぐさまチャイナドレスを手に取ると、リュウは、
「えっと、これ、大丈夫かな……多分、梨花のサイズに合うと思うんだけども。この服は多少サイズが合わなくても、ピッタリくるような魔力を入れているから綺麗に収まるはず、なんだけども」
「着る! ありがとう! リュウ! 大好き!」
 そう言って今すぐ着替えようとするとリュウが慌てて、
「外出るから! 他の服もよろしく!」
 と言って玄関から外に出た。
 私はリュウの背中がまだ見えている段階から着替え始めていた。
 だってエイリーの服が着れるなんて夢のようだから。
 私は完成させることができなかったから、このピッチリと収まる感覚を味わうことができなかった。
 でもこっちのこの服はどうやら魔力で体にフィットするみたいで、言っていた通り、ピッチリとフィットできて、ちょっとエロいなと思って心が躍った。
 これは囲みがすごいのでは、そんなことを考えながら、自分の体をまじまじと見た。
 いやいや他の服も着替えるんだった。
 それを思い出して、僧侶の服と魔法使いの服を着た。
 最後に普段着に戻して、リュウを呼んだ。
「終わりましたね」
 と部屋に入ってきたところで、すぐに私はチャイナドレス、というかエイリーの服にした。
「どう! 可愛いでしょ!」
 するとリュウは体をビクンと波打たせてから、
「か、可愛いです……」
 と開いた口が閉じず、リュウのほうが全然可愛かった。花持たせろよ、おい。
 ちょっと挙動不審になっているリュウをからかいたくなった私は、
「ねぇ、リュウ、こういうの好きなんだぁ」
 と言って前かがみになって胸を寄せてみると、リュウは首をブンブン横に振ってから、
「いやいや! 堂々と立っている梨花のほうがカッコ良くて好きだよ!」
「ちょっとぉ、リュウ、カッコイイよりも可愛いって言ってよ」
「可愛い! それは勿論可愛い! エキゾチックで本当に素敵だと思うよ!」
 すぐ可愛い以外も言うんだから、可愛いな。
 まあ胸はこれくらいにして、と思いながら脚のスリットを前面に押し出し、
「どう?」
 と言ってみると、少々困惑しながらも、
「走りやすそうですね!」
「いやそうじゃなくて!」
「その……えっとぉ……脚が綺麗ですね……」
「つまり?」
「あの、力強くてカッコイイです……」
「可愛いでしょ!」
 と全力でツッコんだんだけども、段々私も恥ずかしくなってきたので、止めることにした。
 こんなあからさまにドキドキしているような顔をされたら、そんなん鏡になるだろ。
 私は魔法使いの恰好になると、
「おっ、似合っています。すっごい可愛いですよ」
 と余裕ある感じで言ってきたので、すぐさまエイリーのチャイナドレスに戻ると、リュウが吹きだしてしまい、またいちいち反応して可愛いな、おい。
「リュウ、こっちはどう?」
「だから可愛いですから、そんな可愛いと梨花さん」
 と言ってから真剣な瞳でこっちを見てきたリュウ。
 いよいよ慣れたかなと思っていると、
「抱きしめたくなります」
 と言ってから、ふわっと優しく私のことを抱きしめてきたリュウに私は声にならない声が出た。
 心臓のバクバクが止まらず、わわわわぁぁぁと思っていると、ゆっくりと離れてからリュウが、
「最高に可愛いです。でもそれは服の力ではなくて、梨花さんに魅力があるからです」
 そう言って頬を赤めながらも笑った。
 マジかよ、何これ、こんなイベントって急に起こります? 私は焦りながら、僧侶の恰好にした。
 するとリュウはまた嬉しそうに、
「その恰好も似合いますね、やっぱり梨花はスタイルが良いからどんな恰好をしてもカッコイイし、可愛いですね!」
 めっちゃ褒めてくれて、アガる……とか思っていると、リュウが、
「ところで、各服を着た時、何らかの魔力を感じましたか?」
 と言われた時にそういうこと一切考えていなかったことに気付いた。
 リュウは純粋に魔力の話ができることを楽しみに待っているといった感じなんだけども、私はもう服をリュウに見せるということしか考えていなかったので、あわあわしていると、
「もしかすると魔力のこと、考えていませんでしたか?」
 とハッキリ図星を突かれて、ぐうの音も出ず俯くと、
「それだけ服を気に入ってくださったということですよね、有難うございます。梨花さんで本当に良かったです」
 うわっ、こういうところも肯定してくれるのかよ、最高過ぎる。
「じゃ、じゃあ改めて服の魔力を見てみますね!」
 そう言って私は今着ている僧侶の服で、自分の心の奥の魔力を見てみた。