学校の最寄り駅よりふた駅前で降りて、しばらく街中をイヤフォンで音楽を聴きながら歩いていた。
音楽を聴いている時だけは、何も考えずに居られるから幸せだった。
詩の中の物語に足を踏み入れば、私という腐ったフィルター越しに見る世界も少しは綺麗に写った。
しばらくして、登校時間が近づいて来たのを確認すると、私は電車に乗り込んだ。
学校に着いて上履きに履き替える。
2-3という看板が目に入り、そこに向かって歩いていく。
ぼーっと歩いていると、突然、後ろからどんっと、押された。
「おっはよー!涼華」
真帆だ。昨日颯の事を考えていてあまり眠れなかったせいか、その声がよく耳に響く。
おはよう、と返すと真帆が顔を覗き込んでくる。
「ねえ涼華、顔色悪くない?クマ酷いよ??」
余りにオブラートのない言葉に笑ってしまいそうになる。
真帆はその名の通り、真っ直ぐな性格をしている。
だからこそ、たまに、この子と話すのがどうしようもなく嫌になる。
私という人間を真っ向から否定してくるみたいで。
だけど、そんな卑屈な自分が1番嫌い。
「ちょっと寝不足でさ、大丈夫大丈夫」
へらへらと笑ってみせる。
2人で足並みを揃えて教室に入り、隣の席に座る。
「涼華」
いつになく真剣な顔で真帆に呼びかけられる。




この、瞳が嫌なのだ。



真っ直ぐな瞳が。




昔の私、そっくりな瞳が。



「ん?どうした?」
あえてふんわりと、刺激をしないように聞く
「そういう涼華の態度、私すごく嫌い。隠されるのもすごく嫌。私達、友達でしょ?」



ああ。
嫌悪感が少しずつ姿を表す。
イライラする。
手がプルプルと震える。
抑えなきゃ。
本音を言ったら、皆離れていっちゃうんだから。




何が、何が友達だ。




「言いたくないことだってあるんだよ」
必死に抑えたつもりだった。
でも私は、真帆の心に火をつけてしまったらしい。
「涼華、友達にも平気で嘘つけるの?私、そういうの、やめて欲しいんだけど」
だめ、だめ。
だめ。
そう思えば思うほど、私の中の怪物が、大きくなって言った。
周りの人が気付き始めてこっちをちらちらと見ているのが伝わってくる。











「お節介なんだよ、真帆。善意の押し売り、正直言って迷惑だから」
ああ、言ってしまった。
颯と出会って、私の本心に気付かれてから、彼の前では、ある程度言いたいことを思い切りぶつけていた。
だからこそ、その癖が抜けなかったのかもしれない。
嫌われてももいい彼にだからこそ言えた言葉を嫌われたくない彼女にまでぶつけてしまった。
真帆が目を大きく見開いた。
真っ直ぐな瞳からぽろぽろと大きな水滴が垂れている。
「ひどい…涼華」



「え、どうしたの真帆ちゃん」



真帆の周りにぞろぞろと女の子が集まっている。




ああ、まるで私だけが、世界の外側にいるようだ。



誰かが密かに、でも確かに私を罵っている。
誰も私の味方はしてくれない。
その瞬間、あの時の光景がフラッシュバックした。
息が、鼓動が速くなる。











「涼華、後で職員室に来なさい」







「涼華、風花を泣かせて楽しいのかよ」







「涼華ちゃん最低、風花ちゃん、明日から涼華ちゃんを抜きにして遊ぼう」














誰か、私を守って。
お願いだから。
離れて、いかないで。
私は、
わたしは、










ひとりぼっちなの?