「ねえねえ涼華、聞いてよ」
またか。
「んー?どうしたの?」
①貼り付けた笑顔と、話を聞いているという態度
「お爺ちゃんから聞いたんだけどね、この街には、ある女の子の霊魂が残ってるんだって、それでねヤナギの花を持って、出ておいでって3回家の中で唱えると、出てくるらしいよ、女の子が!!」
「あーはいはい出たよ、真帆ほんと好きだよねそういうオカルト系の話」
②交友期間に応じた多少のいじり
「ちっちっち!涼華は分かってないなあ、オカルトなんかとは違うんだよ」
「そーなの?」
③話に合わせた少々の自分の意見や疑問の発言



これを私は、会話の方程式と、呼んでいる。
これに倣えば友情関係なんて、そつなくこなせる。
なんにも面白くはないけれど。
昨日の自殺未遂から一転、私は今日も何故だか学校に来ている。
というか、ほとんど足が自然に学校に来ていた。
私はまず、学校という空間がさほど好きでは無い。
陰キャやら陽キャやらという言葉を使って、自分とは異なる個性の人間を互いに弾き出す。
評価される生徒は自分の努力をひけらかす人ばかり。
全くもって何が楽しいのかが分からない。
そういえば、昨日の男の子は何組なのだろうか。
そもそも、何年なのか、ましてや名前すら分からない。
彼と放課後にあったら、そのまま屋上から飛び降りてやろうかな。
そんなことをぼんやり考えながら真帆と廊下を歩いていると、ふと、お日様のような匂いがまた、私の鼻を掠めた。
振り返った先にはあの男の子がいた。
友達と数人で楽しそうに遊ぶ背中から人生最高、ちょー楽しいみたいな雰囲気を感じる。
勝手で申し訳ないけど、妬ましい。
やっぱりあの人を見るとムカつく。
言いたいことを言う姿が、どうにも気に食わないから。
空気なんか読めない、というか、さらさら読む気もなさそうだ。
彼が自分の筆箱を投げては、キャッチ投げてはキャッチする反復運動を繰り返すところを終始イライラしながら見つめてしまった。