『もしもし、海?今からそっち向かうけど何買っていけばいい?』



『あー、今ちょうどコンビニで色々買ってたから大丈夫だよ』



『わかった。後でお金払うから! とりあえず急ぐわ!』



 一方的に通話を切られてしまった。今どこにいるのか聞こうと思っていたのに。



「お会計、3160円になります」



 電話を終えたところでちょうど会計が終わったらしく財布を準備する僕ら。



「ねぇ、海? お財布忘れちゃった!」



「あぁいいよ。僕が払うから」



 財布から一万円を取り出し店員さんに渡す。真っ白なレジに置かれたいかにも重そうな量のお菓子や飲み物。



 わかることは、体に良くはないということだけ。



「お釣りが、6840円になります。ありがとうございました」



 お釣りを受け取り財布にしまう。財布の中の小銭を確認すると160円入っていたことに少し後悔する。160円出していればお釣りのキリがよかったのにと。



「ごめんねー、かーい。後でちゃんと返すから」



 泣きつくように縋り付いてくる彼女。何もこれが初めてではないのに。彼女は勉強や運動に関しては天才だが、どこかしら抜け落ちている部分があるので財布を忘れるなんて日常茶飯事。



 ひどい時は制服ではなくパジャマのまま学校に向かおうとしたことがあるくらい。正直彼女を一人にしてしまったらどうなるのか怖くて見ていられないに違いない。



「いいよ。ここは僕が払ったからさ」



「え、でも。あ、わかった!じゃあ貸しイチってことで」



「わかったよ。どんなことでもいいんだよね?考えておくよ」



「いやらしいことはダメだよ!」



「だ、だからそうやって僕を揶揄わないでよ!」



「だって、いつも冷静な海が取り乱すの見るの面白いんだもん」



「悪趣味すぎるよ」



 真っ白な歯を見せながらニヤける姿は、不審者そのものだった。



 コンビニから公園までは徒歩五分とそこまで遠くはない。それにしてもビニール袋の中身が重すぎる。中身を除いてみると1.5リットルのジュースが3本と大量のお菓子。そりゃ重いわけだ。



 ビニールの持ち手部分が重さに引っ張られて僕の掌に細く食い込んでいく。これが何よりも痛い。手を開いてみると掌に真っ赤な赤い線が横に一直線に伸びている。袋は頑丈だが、僕の手の方が先にギブアップを余儀なくされた。



 結局手で持つのは諦めて腕でジュースを袋ごと抱え込むことにした。視界が遮られてしまい、これもこれで大変なのに変わりはないが,,,