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相馬君に連れられて、私達は比較的人が少ない病院の中庭のベンチに並んで腰掛けた。

外は相変わらずの清々しい晴天が広がっていて、昼下がりのこの気温はとてもぽかぽかして温かい。

そんな爽やかな秋晴れの下、天候とは裏腹に私達の間ではまたもや少し気まずい空気が流れる。

「……相馬君ごめんね。私無神経な事言って」

とりあえず、先程遮られてしまった気持ちをもう一度伝えるため、私は隣に座る相馬君を真っ直ぐに見た。

「ううん。朝倉さんが謝ることじゃない。……それよりも」

そこまで言うと、相馬君は急に険しい顔付きになると、神妙な面持ちで私の方へと向き直す。

「聞いたんだ。あいつが転校するって。それにあの事は誰も知らなかった。……どうせあれ以降あいつは君に何も言ってきてないんでしょ?」

それは初めて見せる怒りに満ちた目。
今まで穏やかな相馬君しか知らない私は、こんなに険しい表情をされた事に面を食らいながらも、ゆっくりと首を縦に振った。


すると、相馬君は深い溜息を吐くと、私から視線を外し再び前へと向き直した。

「あの時、朝倉さんが泣いていたからほっとけなくて追いかけたんだよ。でも、途中で見失って、暫く探していたらあいつが誰かと電話している所に出会したんだ」

そこまで話すと、相馬君はまるで溢れ出る怒りを堪えるように、拳を強く握りしめる。

「あの時は霊体で本当に良かった。お陰であいつの計画が全部聞けた。そこから君に早く伝えなきゃと思った瞬間、僕は病院で目が覚めたんだ。……結局君に伝える事は出来なかったけど、生身で動けるようになれたから、そこで出来ることをしようと思った」

相馬君の話で事の全貌が判明し、私は奥底にしまった筈の当時の嫌な記憶が再び蘇ってきて、小さく体が震え出す。

「……あの時は相馬君が来てくれて助かったよ。本当にありがとう」

それを何とか悟られまいと、私は無理矢理笑顔を作って大分遅くなってしまった感謝の気持ちを伝える。

「…………やめて」

それなのに、相馬君は余計辛そうな表情を見せてきて、聞こえるか聞こえないかの声で呟いた言葉が私の耳に届く。

「お願い。僕の前では正直に居てくれないかな?」

そしてもう一度こちらに顔を向けると、悔やむような、まるで罪を背負っているような相馬君の瞳が私を捉える。

「僕はお礼を言われる資格なんてない。こんな事になるなら、始めから君には目的を伝えるべきだったのに。あの時はまだ美菜がターゲットだったから、証拠がないと話が出来ないと思ったんだ……」

そこまで言うと、相馬君は再び私から視線を逸らすと、思い詰めるようにきつく目を閉じる。

「結果はどうあれ、君をこんな風に巻き込んでしまったのは全部僕のせいだ。……それで君には怖い思いをさせて、深い傷を残してしまった。……だから、君がこうして無理しているところを見ると罪悪感で押し潰されそうになる……」  

そう震える声で話し終えると、ゆっくりと目を開いた相馬君の表情。

それは廊下ですれ違った瀬川さんに声が届かなかった時や、ストラップが探し出せなくて屋上で悔やんでいた時と同じだった。

その原因は全て一杉君のせいないのに、なんで彼がこんなにも苦しまなきゃいけないの……?

何で相馬君が全部責任を負おうとするの……?