私はポツリと呟いてから、六弥くんと同じ教室に入った。
 同じ教室に入ったあと、今野琳達は私たちを見ていた。
 だが、今野琳達の机とくっつけていた机を元に戻して、自分の机に座った。
 今野琳達は驚いた様子だったが、私は気にならなかった。
 工藤の過去の話をされて、私は自分のことのように考えていた。
 さっきほど買ってきたドリンクを両手で握りしめて、何も書かれていない黒板をじっと見つめていた。
「何してんの?」
 横から誰かの声がすると思い、振り返るとそこには工藤がいた。
「……いや…なにも」
 私は言葉に詰まりながら返事をした。
「…そう」
 私に返事した後、工藤はまた机に突っ伏していた。
 キーンコーンカーコーン キーンコーンカーコーン
 鐘が鳴り響きわたる中、品川先生はドアを開けて、クラスを見渡してから壇上に立った。
「起立・礼、お願いします」
 今日の日直の男女が声を揃えて、品川先生に礼をした。
「今日から本格的に授業始めていきます。あ、その前に工藤くん、ご家族はどうですか」
 品川先生は教科書を揃えてから、前を向き直して、寝ていた工藤に言っていた。
 寝ていた工藤は呼ばれたのに起きなかったので、品川先生は工藤の席まで行き、黙って寝ている工藤を何も発さずに立っていた。
 その様子をクラスメイトはどういうこと? なになに? と工藤のことを知らないクラスメイト達はコソコソと席の隣にいる人達に話していた。
 私はまずい状況になったと思い、六弥くんを見ると目が泳いでいた。
 こりゃあ、本当にやばいらしい。どうしよう。
 そんなことを考えていたら、工藤がむくっと起き上がり、目を擦っていた。
「やっと起きましたか」
 品川先生は両腕を腰に置いて、工藤を睨みながら冷たい声で発した。
「……なんですか。まだ授業始まってないんですか」