餃子は流石に食べ切れないものはバットに移して時雨が冷凍庫に閉まっていた。また後日食べられるように。
作り過ぎちゃった、と言ってたもののさくらの仕事の内容のことで色々と気にしてしまったのを打ち消すため黙々と作り過ぎたものだが……。
「もう遅くなっちゃったし後片付けはうちらがやるから宮部くんは帰りなさい」
とさくらが言った。
「申し訳ないです。でも餃子、美味かったしサラダと卵スープのコツ、時雨さんに教わって……4人で楽しく食べれて楽しかったです、あ……あと」
と清太郎が言う。
「さくらさん、今週末はよろしくお願いします。少しだけでもうちの母さんに会ってください」
これで3度目の打診になる。病院、さっきの食事中、そして今。
さくらは口を閉ざすが、頷いた。
「わかったわ。……色々とあの時話聞いてくれたし、心配しないでって伝えるためにも会うわ。仕事も夕方前には終わりそうだから、連絡お願いします」
「よかったね、清太郎。私もおばさんに会うの楽しみ……て、里枝さんにほぼ毎日会ってるから久しぶりって気もしないけど」
「……確かに。こないだ見た時すごく似てた」
さくらと藍里は笑う。清太郎もホッとしたようだ。
「じゃあまた明日からもよろしくね……あ、見送りに……いててて」
時雨は腕を引っ張られる。さくらが引っ張ったのだ。そして藍里を清太郎の方に突き出して
「藍里、玄関先まで見送ってきな」
「……えっ、あ、うん」
さくらは藍里と清太郎を2人きりにさせたかったのである。
2人は玄関から出てドアを閉める。再び2人きり。仄かな電気にもうすっかり周りは暗くなっている。
2人は見つめあって笑い合う。
「2人きりにさせられたね」
「そうだな、また明日会うのに……てか餃子の匂い明日まで残りそう」
「すごいニンニクマシマシ……っ」
清太郎は藍里を抱きしめた。不意でびっくりしている。そしてそのあとキスをした。
「互いに同じもん食ってるから気にしない」
と清太郎はさらにキスをする。藍里ももっとキスをする。2人は立ったまま腕をぎゅっと抱きしめて体密着させ何度もキスをする。
「はいはい、終わり。これ以上は……なっ! じゃあ帰る! おやすみ!」
「おやすみっ……もぉ」
清太郎は走って去っていった。藍里はドキドキしつつもなぜあんなに抱いてキスをしたのか分からなかった。
ふぅ、と余韻に浸りながらもドアを開けると玄関にあたふたしてる時雨とさくらが。
どうみてもさっきまでドアの覗きスコープから見ていたのではと思うくらいの距離。
「いや、別に覗き見とか……してないよ」
「うんうん、ただその藍里が心配で、案の定キス……」
やはり二人はのぞいていたのだ。藍里は顔を真っ赤にした。
「もぉ! なに覗いてんのよっ!」
「ごめん、ごめん……そんなつもりじゃ」
と必死に謝る時雨。さくらも宥める。
「藍里、片づけするよ。時雨くんはもう休んでていいから」
「えっ、やるよやる。さくらさんも明日仕事でしょ」
さくらは首を振る。彼女が家事をするのはどれくらいぶりだろうか。藍里は思い出す。
「もうこれから私もやることにしたから。あ、ちゃんとお金払うけど」
「いや、むしろもう……お金はいらない。それにさくらさんは弁当屋で一緒に働こう!
ってまだ給料貰ってない身が何を言うって感じかもだけどさ……」
さくらが時雨に頭ピン、と弾く。
「でしょ。それにあなたがこれから稼ぐって言うなら私も家事やって二人でジャンジャン稼ごうよ。弁当屋の仕事は……考えておくわ。今の仕事の方が効率良く稼げるし」
「……そ、かぁ」
やはり時雨は表情が曇る。でも効率良く稼げるのは事実である。
「はいはい、時雨くんは先にお風呂入って。私たちで片付けするから」
「わかった。じゃあよろしくお願いします」
と時雨は二人に頭を下げた。
藍里とさくら、ふたりで台所。初めてである。横に並んで料理する日が来た。なんだか藍里は不思議な気持ちでさくらが洗ったものをすすいでマットの上に乗せていく。
よく時雨の横で手伝っていたが、彼はささっとやるが手際よく、しかしさくらはチャチャっと洗って終わり、そういうところを綾人が指摘していたのを瞬間思い出したがまぁいいかと流した。
藍里はさくらの横顔を見る。今は化粧をしていないが明らかに昔よりも若返った気もしなくもない。
「なぁに、私の顔見て。ちゃっちゃかやって風呂入って早く寝よ」
「うん……なんかママが台所にいるの珍しいからつい見ちゃった」
「珍しいって……昔はよくいたじゃん」
「そうでしたね」
「もう、忘れたの?」
「なんか時雨くんのイメージ」
「まぁそうよねぇ……」
さくらは笑った。
「藍里、時雨くん……どう?」
「えっ?」
どう、というのはどの意味でなのか? と藍里はさくらを見た。
「なに動揺してんの。家族としてどうなんかって。……二人仲良いしさ。まさか変な関係じゃないよね」
「じゃないし。でもゲームもしてくれるし勉強も教えてくれるし、話し相手になってくれる」
と藍里は動揺する気持ちを抑えて無難に答えるとさくらは
「そう」
と言ってそこからは喋らなかった。
作り過ぎちゃった、と言ってたもののさくらの仕事の内容のことで色々と気にしてしまったのを打ち消すため黙々と作り過ぎたものだが……。
「もう遅くなっちゃったし後片付けはうちらがやるから宮部くんは帰りなさい」
とさくらが言った。
「申し訳ないです。でも餃子、美味かったしサラダと卵スープのコツ、時雨さんに教わって……4人で楽しく食べれて楽しかったです、あ……あと」
と清太郎が言う。
「さくらさん、今週末はよろしくお願いします。少しだけでもうちの母さんに会ってください」
これで3度目の打診になる。病院、さっきの食事中、そして今。
さくらは口を閉ざすが、頷いた。
「わかったわ。……色々とあの時話聞いてくれたし、心配しないでって伝えるためにも会うわ。仕事も夕方前には終わりそうだから、連絡お願いします」
「よかったね、清太郎。私もおばさんに会うの楽しみ……て、里枝さんにほぼ毎日会ってるから久しぶりって気もしないけど」
「……確かに。こないだ見た時すごく似てた」
さくらと藍里は笑う。清太郎もホッとしたようだ。
「じゃあまた明日からもよろしくね……あ、見送りに……いててて」
時雨は腕を引っ張られる。さくらが引っ張ったのだ。そして藍里を清太郎の方に突き出して
「藍里、玄関先まで見送ってきな」
「……えっ、あ、うん」
さくらは藍里と清太郎を2人きりにさせたかったのである。
2人は玄関から出てドアを閉める。再び2人きり。仄かな電気にもうすっかり周りは暗くなっている。
2人は見つめあって笑い合う。
「2人きりにさせられたね」
「そうだな、また明日会うのに……てか餃子の匂い明日まで残りそう」
「すごいニンニクマシマシ……っ」
清太郎は藍里を抱きしめた。不意でびっくりしている。そしてそのあとキスをした。
「互いに同じもん食ってるから気にしない」
と清太郎はさらにキスをする。藍里ももっとキスをする。2人は立ったまま腕をぎゅっと抱きしめて体密着させ何度もキスをする。
「はいはい、終わり。これ以上は……なっ! じゃあ帰る! おやすみ!」
「おやすみっ……もぉ」
清太郎は走って去っていった。藍里はドキドキしつつもなぜあんなに抱いてキスをしたのか分からなかった。
ふぅ、と余韻に浸りながらもドアを開けると玄関にあたふたしてる時雨とさくらが。
どうみてもさっきまでドアの覗きスコープから見ていたのではと思うくらいの距離。
「いや、別に覗き見とか……してないよ」
「うんうん、ただその藍里が心配で、案の定キス……」
やはり二人はのぞいていたのだ。藍里は顔を真っ赤にした。
「もぉ! なに覗いてんのよっ!」
「ごめん、ごめん……そんなつもりじゃ」
と必死に謝る時雨。さくらも宥める。
「藍里、片づけするよ。時雨くんはもう休んでていいから」
「えっ、やるよやる。さくらさんも明日仕事でしょ」
さくらは首を振る。彼女が家事をするのはどれくらいぶりだろうか。藍里は思い出す。
「もうこれから私もやることにしたから。あ、ちゃんとお金払うけど」
「いや、むしろもう……お金はいらない。それにさくらさんは弁当屋で一緒に働こう!
ってまだ給料貰ってない身が何を言うって感じかもだけどさ……」
さくらが時雨に頭ピン、と弾く。
「でしょ。それにあなたがこれから稼ぐって言うなら私も家事やって二人でジャンジャン稼ごうよ。弁当屋の仕事は……考えておくわ。今の仕事の方が効率良く稼げるし」
「……そ、かぁ」
やはり時雨は表情が曇る。でも効率良く稼げるのは事実である。
「はいはい、時雨くんは先にお風呂入って。私たちで片付けするから」
「わかった。じゃあよろしくお願いします」
と時雨は二人に頭を下げた。
藍里とさくら、ふたりで台所。初めてである。横に並んで料理する日が来た。なんだか藍里は不思議な気持ちでさくらが洗ったものをすすいでマットの上に乗せていく。
よく時雨の横で手伝っていたが、彼はささっとやるが手際よく、しかしさくらはチャチャっと洗って終わり、そういうところを綾人が指摘していたのを瞬間思い出したがまぁいいかと流した。
藍里はさくらの横顔を見る。今は化粧をしていないが明らかに昔よりも若返った気もしなくもない。
「なぁに、私の顔見て。ちゃっちゃかやって風呂入って早く寝よ」
「うん……なんかママが台所にいるの珍しいからつい見ちゃった」
「珍しいって……昔はよくいたじゃん」
「そうでしたね」
「もう、忘れたの?」
「なんか時雨くんのイメージ」
「まぁそうよねぇ……」
さくらは笑った。
「藍里、時雨くん……どう?」
「えっ?」
どう、というのはどの意味でなのか? と藍里はさくらを見た。
「なに動揺してんの。家族としてどうなんかって。……二人仲良いしさ。まさか変な関係じゃないよね」
「じゃないし。でもゲームもしてくれるし勉強も教えてくれるし、話し相手になってくれる」
と藍里は動揺する気持ちを抑えて無難に答えるとさくらは
「そう」
と言ってそこからは喋らなかった。