数日後、清太郎と共に担任へ弁当屋でバイトをしていることを報告する藍里。担任は清太郎の働いている弁当屋で、仕事もうまくいっているというと、そうか、それなら大丈夫かと言うだけであった。
藍里と清太郎が教室に戻った。するとクラスメイト三人衆が2人に駆け寄る。
「何か酷いことされた? 言われた?」
「大丈夫。バイト頑張れってくらい」
「そうかー。でも宮部くんと同じところで働けるならいいよねぇ」
3人は藍里を椅子に座らせる。
「こないだよー、藍里が病み上がりっつーのに。俺がいなかったらどうなってたんだろうか」
「そうよね。無理しないでね、藍里ちゃん。あの担任のことはもう無視の無視!」
優香は声がデカく清太郎から声小さくしろ、と怒られてテヘヘと笑った。
するとなつみは雑誌を持ってきた。
「2人きりだったら何しれてたかわからないよ。藍里ちゃん可愛いから。さぁ、気持ち切り替えてー。藍里ちゃんは何が好きなのある? 芸能人とか歌手とかキャラとか」
「……えっと」
表紙が綾人だった。隣にはダブル主演の尊タケルもいるが藍里はまじまじと綾人を見てしまう。清太郎はすぐ取り上げた。
「ちょ、宮部くんなにするのよー。あ、さっきさぁ綾人見てたよね? まさか好きだったりする?」
なつみは清太郎から雑誌を返してもらおうと必死だ。藍里は立ち上がって代わりに雑誌を手に取った。そしてそれを見る。
自分の父親である綾人、そして数ページめくるとインタビュー記事と映画の娘役オーディションのことも書いてある。
「やっぱり好きなの、綾人のこと……」
藍里は反応しない。その姿を清太郎は見る。オーディションは岐阜、愛知、三重それぞれで行われる、選ばれれば綾人演じる主人公の娘役として映画に出演できて芸能活動とすることができる。
選ばれなくても各事務所からのスカウトで芸能活動ができると書いてあった。そこには昔藍里が所属していた事務所の名前もあった。
「……藍里?」
清太郎は自分の腕に藍里がぎゅっと右手で掴んでいた。
「な、なんでもない。どっちかと言えばこの隣の尊タケルのほうが私は好き」
藍里は嘘をついた。
「へー、結構おじさんとか好きなんだ。意外な藍里」
「まぁね……」
「てか絶対オーディションとか受けたら一発合格だよ、藍里」
「無理無理、オーディションだなんて。特技とかないし」
清太郎はそういう藍里をじっと見ていた。そんなはずはないと。
クラスメイト三人衆は賑やかにしている中、その中のアキだけはなんか浮かない顔だ。
「……」
彼女はスマートフォンを見た。その画面を見るととあるメール画面が。
『この度は推薦ありがとうございました。橘綾人娘役オーディション第一次審査に合格いたしましたのでご連絡いたしました。次回の審査に関しましてご本人様とも連絡をお取りしたいと思いますのでご本人様に以下の書類を推薦者様から渡していただきたいです』
という文字が。アキは項垂れていた。
「アキ、どうしたの……」
「な、何でもない! 私も尊タケル好きだよ。今度映画出るらしいじゃん。コテージでの殺人事件ミステリー!!!」
「ああ。なんかテレビで見たきがする」
と藍里は取り繕っていた。
心の中ではオーディションが気になってはいた。子供の頃、子役で何度かオーディションを受けた。さくらがいつも見守っててくれた。
「藍里は大丈夫。藍里はできる!」
そう言い聞かせてくれていた。
でもほとんどメインのオーディションには落ちて端役しかもらえない。セリフも一つあるか無いか。
家に帰ると綾人がさくらに向かって罵倒している。
「おまえがちゃんとレッスンの時のことをメモして藍里に復習させることをしてないからだ!」
「マネージャーを違う人に任せた方がいいんじゃ無いの? 大した仕事取らないくせに家事も中途半端なんだけど。こんなんだったら藍里、受からないよ」
……藍里はそれを目の前で見てきた。何で自分がダメだったのにさくらが怒られているのだろうか。
その次に思い出したのはさくらと藍里が二人きりになった場面。
「あんたがトチるからダメになるの! 受からないとお父さんに怒られるのは私なんだからね!」
「……ごめんなさい……ごめんなさい」
「何で泣くの! 泣きたいのは私なのよ!」
さくらから大量の涙。綾人の前では流さなかった涙が両目から。藍里は何も言えなかった。
そして次は台所で家事をしているさくら。調理、食器洗い、全てを一人でしていた。
綾人はソファーでゴロンとして次のアマチュア舞台の台本を読んでいた。
「藍里、おいで」
藍里は綾人の元に行く。この部屋はさくらのいるキッチンから見えない。
タバコの匂いが服からも、手からも。藍里はぎゅっと綾人を抱きしめる。
「藍里、温かいだろ」
「うん……」
「ほら、もっと触ってよ」
綾人は藍里の手を握り綾人の服の中に引き寄せ……。
「!!」
藍里は我にかえる。
「藍里ちゃん、大丈夫?」
「……大丈夫……」
藍里は清太郎と目を合わせた。
藍里と清太郎が教室に戻った。するとクラスメイト三人衆が2人に駆け寄る。
「何か酷いことされた? 言われた?」
「大丈夫。バイト頑張れってくらい」
「そうかー。でも宮部くんと同じところで働けるならいいよねぇ」
3人は藍里を椅子に座らせる。
「こないだよー、藍里が病み上がりっつーのに。俺がいなかったらどうなってたんだろうか」
「そうよね。無理しないでね、藍里ちゃん。あの担任のことはもう無視の無視!」
優香は声がデカく清太郎から声小さくしろ、と怒られてテヘヘと笑った。
するとなつみは雑誌を持ってきた。
「2人きりだったら何しれてたかわからないよ。藍里ちゃん可愛いから。さぁ、気持ち切り替えてー。藍里ちゃんは何が好きなのある? 芸能人とか歌手とかキャラとか」
「……えっと」
表紙が綾人だった。隣にはダブル主演の尊タケルもいるが藍里はまじまじと綾人を見てしまう。清太郎はすぐ取り上げた。
「ちょ、宮部くんなにするのよー。あ、さっきさぁ綾人見てたよね? まさか好きだったりする?」
なつみは清太郎から雑誌を返してもらおうと必死だ。藍里は立ち上がって代わりに雑誌を手に取った。そしてそれを見る。
自分の父親である綾人、そして数ページめくるとインタビュー記事と映画の娘役オーディションのことも書いてある。
「やっぱり好きなの、綾人のこと……」
藍里は反応しない。その姿を清太郎は見る。オーディションは岐阜、愛知、三重それぞれで行われる、選ばれれば綾人演じる主人公の娘役として映画に出演できて芸能活動とすることができる。
選ばれなくても各事務所からのスカウトで芸能活動ができると書いてあった。そこには昔藍里が所属していた事務所の名前もあった。
「……藍里?」
清太郎は自分の腕に藍里がぎゅっと右手で掴んでいた。
「な、なんでもない。どっちかと言えばこの隣の尊タケルのほうが私は好き」
藍里は嘘をついた。
「へー、結構おじさんとか好きなんだ。意外な藍里」
「まぁね……」
「てか絶対オーディションとか受けたら一発合格だよ、藍里」
「無理無理、オーディションだなんて。特技とかないし」
清太郎はそういう藍里をじっと見ていた。そんなはずはないと。
クラスメイト三人衆は賑やかにしている中、その中のアキだけはなんか浮かない顔だ。
「……」
彼女はスマートフォンを見た。その画面を見るととあるメール画面が。
『この度は推薦ありがとうございました。橘綾人娘役オーディション第一次審査に合格いたしましたのでご連絡いたしました。次回の審査に関しましてご本人様とも連絡をお取りしたいと思いますのでご本人様に以下の書類を推薦者様から渡していただきたいです』
という文字が。アキは項垂れていた。
「アキ、どうしたの……」
「な、何でもない! 私も尊タケル好きだよ。今度映画出るらしいじゃん。コテージでの殺人事件ミステリー!!!」
「ああ。なんかテレビで見たきがする」
と藍里は取り繕っていた。
心の中ではオーディションが気になってはいた。子供の頃、子役で何度かオーディションを受けた。さくらがいつも見守っててくれた。
「藍里は大丈夫。藍里はできる!」
そう言い聞かせてくれていた。
でもほとんどメインのオーディションには落ちて端役しかもらえない。セリフも一つあるか無いか。
家に帰ると綾人がさくらに向かって罵倒している。
「おまえがちゃんとレッスンの時のことをメモして藍里に復習させることをしてないからだ!」
「マネージャーを違う人に任せた方がいいんじゃ無いの? 大した仕事取らないくせに家事も中途半端なんだけど。こんなんだったら藍里、受からないよ」
……藍里はそれを目の前で見てきた。何で自分がダメだったのにさくらが怒られているのだろうか。
その次に思い出したのはさくらと藍里が二人きりになった場面。
「あんたがトチるからダメになるの! 受からないとお父さんに怒られるのは私なんだからね!」
「……ごめんなさい……ごめんなさい」
「何で泣くの! 泣きたいのは私なのよ!」
さくらから大量の涙。綾人の前では流さなかった涙が両目から。藍里は何も言えなかった。
そして次は台所で家事をしているさくら。調理、食器洗い、全てを一人でしていた。
綾人はソファーでゴロンとして次のアマチュア舞台の台本を読んでいた。
「藍里、おいで」
藍里は綾人の元に行く。この部屋はさくらのいるキッチンから見えない。
タバコの匂いが服からも、手からも。藍里はぎゅっと綾人を抱きしめる。
「藍里、温かいだろ」
「うん……」
「ほら、もっと触ってよ」
綾人は藍里の手を握り綾人の服の中に引き寄せ……。
「!!」
藍里は我にかえる。
「藍里ちゃん、大丈夫?」
「……大丈夫……」
藍里は清太郎と目を合わせた。