「『スティール』……打ち止めか」

「アイクよ、良いスキルは手に入ったか?」

 俺たちは瀕死状態のイビルスネークというモンスターを倒すことに成功した。

そして、今は俺がイビルスネークからできるだけ『スティール』をしてスキルをありったけ奪い取っていた。

『スティール』をした後に『鑑定』をしても何も反応しなくなったので、スキルは全て奪いつくしたということだろう。

 奪ったスキルに鑑定をかけてみたが、どうやら目的にスキルは奪えていなかった。

「良いスキルはあったけど、『魔源』を相殺できるような物はなかったな」

常時魔力を放出し続ける『魔源』。それを相殺できるようなスキルを奪いたかったが、そもそもこのモンスターがそのスキルを持っていなかったらしい。

 どうやら、『魔源』を相殺できるようなスキルを見つけるのには、結構時間がかかりそうだ。

「あの、さっきアイクさんが使ってたスキルって闇魔法ですよね?」

 先程の戦闘を終えて、俺がスキルを奪いつくしたのを待ってからアリスがそんなことを聞いてきた。

 闇魔法は道徳的な点などから、違法の魔法と呼ばれる禁忌の魔法だ。その魔法を学ぶとことさえも罰しられる魔法。

 それを使いこなしていたことがどうしても気になったのだろう。

「ああ。ちょっと色々あって、闇魔法の伝道師とやり合ったことがあってな。その時に奪ったんだよ」

「や、やり合ったんですか!? そ、それでアイクさんはその人に勝ったと?」

「そいつだけではないぞ。アイクは闇闘技場の優勝者でな。そいつらからスキルを奪いまくったんじゃ」

「や、闇闘技場って、本当にあるんですか!?」

 そうだよな。普通は闇闘技場があるってだけでも驚くものだ。しかも、それに加えてそこで優勝した人が目の前にいるというのだから、驚きも隠せなくなるだろう。

「結構使いやすいから使ってるんだよ。あんまり人前で使えないから、少し自重しないとなんだけどな」

 どうも盗賊との親和性がいいのか反射的に使うのが闇魔法になってしまっている。そんな反射的に使っていい技ではないんだけどな。

「せっかくだから、イビルスネークに奪ったスキル試してもいいか?」

「ふむ。一思いに屠ってやってくれ」

 ルーナもいちおうはモンスター側だったこともあるせいか、瀕死のイビルスネークを見てそんな言葉を口にしていた。

 この瀕死の状態で放置をしておくのもなんだか可哀想だしな。

 俺は先程奪ったスキルの中から、今後使えるような物をピックアップして瀕死のイビルスネークに手のひらを向けた。

「まぁ、イビルスネークの素材は高く売れるからなぁ。あんまり傷つけて値が下がるようなことはしない方が得策――」

「『ブレス』」

 俺がそのスキルの名前を呼ぶと、手のひらに禍々しい赤い球体のような物が形成された。そして、その球体がブルっと震えた瞬間、その熱を全て一直線のエネルギー波に変えたようにしてイビルスネークを焼き払った。

「あつっ」

 イビルスネークは丸焦げに焼かれてしまい、ダンジョンの床に焦げたような跡が大きく残ってしまった。

 素材の価値がある。そう聞いておいたはずなのに、それを焼き払ってしまった。

「……アイクよ、貴様は思った以上に馬鹿なのか?」

「いや、『魔源』がな。そう、『魔源』が悪いんだよ」

 イビルスネークを丸焼きにしてしまって、売れる状態ではなくなってしまった状態を見て、ルーナは呆気にとられたようにそんなことを口にしていた。

「なんかアイクさんが闇闘技場で優勝したっていうのも、納得ですね」

「いや、前まではこんなにじゃなかったんだって。本当に」

「前にワイバーンをほぼ一撃で仕留めたくせに、何を言っているんじゃ」

 強くてすごいって言う反応を超えて、二人は呆れるような反応をしていた。

 モンスターのスキルを奪い取って、それを『魔源』で増幅させて放つ魔法。その組み合わせによって、俺は以前よりもだいぶ強くなってしまっているらしかった。

 ……いよいよバケモノ染みてきた気がする。