「――と、こんなふうに、冒険者ランクが上がるとそれなりにメリットもあるんです!」
「はぁ、なるほど」
一緒にミリアとご飯を食べた後、ミリアは何やら持ってきた資料と共にプレゼンを始めだした。
上級の冒険者になることでのメリットについて、その魅力をすごい語られた。
なぜD級パーティである俺たちに、そんな話をするのだろうと思ってぼうっと聞いていると、そんな俺たちの態度に気づいたのか、ミリアは肩を落としていた。
「なんでそんな他人事みたいな感じなんですか?」
「え、だって、実際に他人事ですし。そんな上級冒険者の説明をされても、俺たちには関係ない話って感じなんですよね。なぁ、リリ?」
「そうですね。そもそも、私なんてまだ冒険者になって日も経ってないので、よく分からないです」
たまに一緒に行動をしていて忘れそうになるが、リリは本当に最近冒険者になったばかりだ。
俺だって、最近急に冒険者ランクを上げてもらったばかり。もちろん、上を目指すという心構えが重要なのはわかるが、わざわざ家にまで来て説明するほどのことなのだろうか。
ミリアはそんな会話をする俺たちのことをジトっとした目で見ると、大きめの咳ばらいを一つして言葉を続けた。
「むしろ、だから、こうやってお話に来てるんですよ。これから、冒険者ランクを上げていって欲しいんです。……アイクさん達、最後にクエスト受けたのいつか覚えてますか?」
ミリアにそんなことを言われて、俺とリリは顔を向かい合わせて、ミリアに問われたことを思い出そうと眉間に力を入れた。
「ガルドさんの依頼が最後だったかな?」
「アイクさん、あれはクエストじゃないですよ。盗賊団のが最後では?」
「あー、そっか。……あれ? それもクエストじゃないよな?」
直近の依頼を思い出そうとしてみたのだが、不思議と全然思い出せそうになかった。そう言われれば、最近冒険者ギルドからのクエストを受けていないきがする。
あれ? 本当に最後にクエスト受けたのっていつだ?
「わざとですか? わざとなんですか? ……リリさんの初クエスト依頼、受けてないですよね?」
俺達がいつまで経っても答えられずにいると、ミリアは少し肩をプルプルと震わせながらこちらにジトっとした目を向けてきた。
「えっと、怒ってます?」
「怒ってはないです! A級パーティ三組に、アイクさん達がD級だってこと驚かれて、管理不足を疑われてもっ、怒ってないです!」
ミリアはえらく具体的な例を出しながら、ぷりぷりとしていた。
どうやら、完璧に怒っているようだった。
「A級パーティ? ……いったい、誰がそんなことを?」
「A級パーティ4組で行う大規模なクエストに飛び入りで参加したことは、もう知っているんですからね」
俺がしらばっくれていると思ったのか、ミリアはこちらに言及するような目を向けてきていた。
パーティ4組の大規模なクエスト。その単語を聞いて、つい数日前の出来事を思い出した。
ブルクからの帰り道。そこで突然声をかけられて一緒に大規模なクエストに参加したことがあった。
「あの人たち、A級だったのか。どおりで強いと思ったら……」
「A級パーティの中に混ざって、D級パーティが活躍するなんて普通ならありえないんですよ? そんな報告を受けると、当然『道化師の集い』のパーティランクも上げないとってなったんですけど……」
「そもそもクエストをあまり受けていないから、上げられないと」
「そうなんですよ。それなのに、アイクさん達はクエスト受けないで、どんどんレベル上がっていきますし、レベルと冒険者ランクの差が開いていく一方なんです」
そういえば、ジョブが進化したばかりの頃のステータスがC級レベルだと言われていた気がした。
その頃からステータスもレベルも上がってきているのに対して、冒険者ランクはC級にもなっていない。
確かに、一方的にステータス差ができていくよな。
「念のためにお聞きしますけど、もしかして、冒険者ギルドのこと嫌っているとかではないんですよね?」
「え、それはもちろんですよ。ていうか、嫌う理由もないですし」
「ですよね。よかったです。……結構、上の方がそれを本気で心配してたので、何か不手際があったから、クエストを受けないんじゃないかとか」
特に冒険者ギルドに対して思うようなところはなかった。でも、傍から見たら冒険者ギルドを避けてレベル上げしているようにも見えるよな。
あまり悪目立ちもしたくないし、冒険者ギルドとは良い関係でいたい。
そんなふうに考えられているのなら、その誤解は解いておいた方がいいだろうな。
「それで、クエストを受けない理由をお聞きしてもいいですか?」
ミリアはそう言うと、少しだけ真剣な表情になった。
そういえば、今まで深く話してこなかったから、何か事情があると本気で思われているのかもしれない。
そう思った俺は、相手がミリアだからということもあって素直に口を開くことにした。
「大した理由ではないですよ? ただクエストを受けるより、個人的に依頼を受けたりした方がお金がいいですし、欲しい素材はクエスト受けなくても取りに行けるので、クエスト受ける意味がないって感じですかね」
「うっ、そこを突かれると痛いですね。というか、そのお金の稼ぎ方って上級冒険の中でも、やってる人って一握りですよ」
確かに依頼を個人的に受けるためには、それなりの知名度が必要になる。そのためには、その背景として多くのクエストを達成して実力があることを証明しなければならない。
その両方を満たさないで個人的に商人とかとやり取りをしているって、確かに傍から見たら異常なのかもしれないな。
「無理強いはしませんけど、クエストを受けるメリットというのもあるんです。闇雲に時間をかけて魔物を探すよりも、この場所にいるという情報を与えてもらって倒す方が効率的じゃないですか?」
「それは、確かにありますね」
「それに、普通に魔物を討伐した場合は魔物の素材を売ったお金しか利益になりません。でも、クエストを通してもらえれば、クエストの報奨金として別でお金が発生します。なので、レベルを上げる点でも、お金を稼ぐ上でもクエストを受けた方が得なのです」
そこまで言われて、ミリアの言い分も一理あるなと思った。
ただランダムに魔物肉を採取するのではなく、欲しい魔物がいるのならその魔物を狩るクエストがないかを確認するくらいはしてもいいかもしれない。
そうすれば、結果として追加で報酬がもらえることになる。
それに、強い魔物を相手にしたいときとかは積極的にクエストを受けてもいいかもしれない。
リリもせっかく新しい短剣を手に入れたんだし、試し切りもしたいだろうしな。
……何かしらのクエストを受けてみるか。
「確かに、自由が利かないことを除けがいいかもしれませんね。少し、考えておきます」
「良かったです。ぜひ、そうしてみてください。あ、それと、冒険カードの更新だけでも今日中にしちゃいませんか?」
そんなミリアの言葉に誘われて、俺達はミリアと共に冒険者ギルドに向かったのだった。
「はぁ、なるほど」
一緒にミリアとご飯を食べた後、ミリアは何やら持ってきた資料と共にプレゼンを始めだした。
上級の冒険者になることでのメリットについて、その魅力をすごい語られた。
なぜD級パーティである俺たちに、そんな話をするのだろうと思ってぼうっと聞いていると、そんな俺たちの態度に気づいたのか、ミリアは肩を落としていた。
「なんでそんな他人事みたいな感じなんですか?」
「え、だって、実際に他人事ですし。そんな上級冒険者の説明をされても、俺たちには関係ない話って感じなんですよね。なぁ、リリ?」
「そうですね。そもそも、私なんてまだ冒険者になって日も経ってないので、よく分からないです」
たまに一緒に行動をしていて忘れそうになるが、リリは本当に最近冒険者になったばかりだ。
俺だって、最近急に冒険者ランクを上げてもらったばかり。もちろん、上を目指すという心構えが重要なのはわかるが、わざわざ家にまで来て説明するほどのことなのだろうか。
ミリアはそんな会話をする俺たちのことをジトっとした目で見ると、大きめの咳ばらいを一つして言葉を続けた。
「むしろ、だから、こうやってお話に来てるんですよ。これから、冒険者ランクを上げていって欲しいんです。……アイクさん達、最後にクエスト受けたのいつか覚えてますか?」
ミリアにそんなことを言われて、俺とリリは顔を向かい合わせて、ミリアに問われたことを思い出そうと眉間に力を入れた。
「ガルドさんの依頼が最後だったかな?」
「アイクさん、あれはクエストじゃないですよ。盗賊団のが最後では?」
「あー、そっか。……あれ? それもクエストじゃないよな?」
直近の依頼を思い出そうとしてみたのだが、不思議と全然思い出せそうになかった。そう言われれば、最近冒険者ギルドからのクエストを受けていないきがする。
あれ? 本当に最後にクエスト受けたのっていつだ?
「わざとですか? わざとなんですか? ……リリさんの初クエスト依頼、受けてないですよね?」
俺達がいつまで経っても答えられずにいると、ミリアは少し肩をプルプルと震わせながらこちらにジトっとした目を向けてきた。
「えっと、怒ってます?」
「怒ってはないです! A級パーティ三組に、アイクさん達がD級だってこと驚かれて、管理不足を疑われてもっ、怒ってないです!」
ミリアはえらく具体的な例を出しながら、ぷりぷりとしていた。
どうやら、完璧に怒っているようだった。
「A級パーティ? ……いったい、誰がそんなことを?」
「A級パーティ4組で行う大規模なクエストに飛び入りで参加したことは、もう知っているんですからね」
俺がしらばっくれていると思ったのか、ミリアはこちらに言及するような目を向けてきていた。
パーティ4組の大規模なクエスト。その単語を聞いて、つい数日前の出来事を思い出した。
ブルクからの帰り道。そこで突然声をかけられて一緒に大規模なクエストに参加したことがあった。
「あの人たち、A級だったのか。どおりで強いと思ったら……」
「A級パーティの中に混ざって、D級パーティが活躍するなんて普通ならありえないんですよ? そんな報告を受けると、当然『道化師の集い』のパーティランクも上げないとってなったんですけど……」
「そもそもクエストをあまり受けていないから、上げられないと」
「そうなんですよ。それなのに、アイクさん達はクエスト受けないで、どんどんレベル上がっていきますし、レベルと冒険者ランクの差が開いていく一方なんです」
そういえば、ジョブが進化したばかりの頃のステータスがC級レベルだと言われていた気がした。
その頃からステータスもレベルも上がってきているのに対して、冒険者ランクはC級にもなっていない。
確かに、一方的にステータス差ができていくよな。
「念のためにお聞きしますけど、もしかして、冒険者ギルドのこと嫌っているとかではないんですよね?」
「え、それはもちろんですよ。ていうか、嫌う理由もないですし」
「ですよね。よかったです。……結構、上の方がそれを本気で心配してたので、何か不手際があったから、クエストを受けないんじゃないかとか」
特に冒険者ギルドに対して思うようなところはなかった。でも、傍から見たら冒険者ギルドを避けてレベル上げしているようにも見えるよな。
あまり悪目立ちもしたくないし、冒険者ギルドとは良い関係でいたい。
そんなふうに考えられているのなら、その誤解は解いておいた方がいいだろうな。
「それで、クエストを受けない理由をお聞きしてもいいですか?」
ミリアはそう言うと、少しだけ真剣な表情になった。
そういえば、今まで深く話してこなかったから、何か事情があると本気で思われているのかもしれない。
そう思った俺は、相手がミリアだからということもあって素直に口を開くことにした。
「大した理由ではないですよ? ただクエストを受けるより、個人的に依頼を受けたりした方がお金がいいですし、欲しい素材はクエスト受けなくても取りに行けるので、クエスト受ける意味がないって感じですかね」
「うっ、そこを突かれると痛いですね。というか、そのお金の稼ぎ方って上級冒険の中でも、やってる人って一握りですよ」
確かに依頼を個人的に受けるためには、それなりの知名度が必要になる。そのためには、その背景として多くのクエストを達成して実力があることを証明しなければならない。
その両方を満たさないで個人的に商人とかとやり取りをしているって、確かに傍から見たら異常なのかもしれないな。
「無理強いはしませんけど、クエストを受けるメリットというのもあるんです。闇雲に時間をかけて魔物を探すよりも、この場所にいるという情報を与えてもらって倒す方が効率的じゃないですか?」
「それは、確かにありますね」
「それに、普通に魔物を討伐した場合は魔物の素材を売ったお金しか利益になりません。でも、クエストを通してもらえれば、クエストの報奨金として別でお金が発生します。なので、レベルを上げる点でも、お金を稼ぐ上でもクエストを受けた方が得なのです」
そこまで言われて、ミリアの言い分も一理あるなと思った。
ただランダムに魔物肉を採取するのではなく、欲しい魔物がいるのならその魔物を狩るクエストがないかを確認するくらいはしてもいいかもしれない。
そうすれば、結果として追加で報酬がもらえることになる。
それに、強い魔物を相手にしたいときとかは積極的にクエストを受けてもいいかもしれない。
リリもせっかく新しい短剣を手に入れたんだし、試し切りもしたいだろうしな。
……何かしらのクエストを受けてみるか。
「確かに、自由が利かないことを除けがいいかもしれませんね。少し、考えておきます」
「良かったです。ぜひ、そうしてみてください。あ、それと、冒険カードの更新だけでも今日中にしちゃいませんか?」
そんなミリアの言葉に誘われて、俺達はミリアと共に冒険者ギルドに向かったのだった。