「ヨダレなんて気にしてられっか! 次だ、次ぃ!!」
『いや、そこは気にしましょうよ……人として』
「ワレもヨダレベトベトのは食べたくないんだワン。大和、真人間になるんだワンよ?」
人ぢゃあないヤツラに、人としての何たるかを説教されただと!?
じょーだんじゃありませんよ! ダカラ言ってやる。
「スミマセンデシタ」
「『分ればよろしい』」
くッ、なんたる屈辱!
でも今は次だつぎ。黄色いやつが俺を呼ぶ。さてコイツはどうしてやろうか?
「気を取り直して、と。お次は黄色い切り身にはハーブだけでいいだろう。コイツの臭みは純粋に味わいたい臭みだ」
「ほぇ? 味わいたい臭みなんてあるんだワン?」
「まぁな。じゃコイツなんて、その代表といえるんじゃないか」
そう言いながらまずは藻塩をふりかける。
さらに魚に愛称が抜群のタイム風味のコイツを全体に馴染ませつつ、ごまの風味に辛味をおびたハーブであるセバルチコ風のやつ。こいつもいい仕事をしてくれるだろう。
そして最後はレモングラス風の粉。二つをまとめてくれるキーハーブになるはずだ。
三つの味をサッとふりかけ、この黄色の切り身は三十秒といったところか。
「この瞬間は本当に待ち遠しい。十秒が十フレームに感じるほどだ」
『……変わっておりませんが?』
ナニカ聞こえた気がするが、漢は気にせずに待つ。
まだか……もうすぐ……三・二・一……「今だ!!」と叫びつつ、獣のように乱暴に口へと放り込む。
コイツの旨さは確定だと、さっきの試食で理解をしていた。
なぜなら、この黄色い切り身は〝濃厚なヤギチーズ〟と似た味だったから。
このままでも十分食べれるが、ここは文明的にいこうじゃないの。
だからハーブの力を借りて、さらに上品に仕上げた結果を楽しむ。
右の犬歯に〝むにぃぃッ〟と絡みつく、異常に濃厚な味が舌の上に重く広がる。
ずしりとくる、腐臭に似た熟成香がたまらん!
その香りに「くぅぅ~」と涙目になりつつも、それを打ち消すタイムの気品ある清々しい香りが悪臭を押さえつつ、ほろ苦さが黄色い切り身のまろやかさを生む。
さらに黄色い包囲網は続く。そう、最後の希望にして真打ちたるレモングラスの登場だ。
食材同士、お互いの主張を勝手気ままに語っていたせいで、美味いが震えるほどではない。
むしろクドい味でいまいち素材が生きていない。そう思った刹那レモングラスが覚醒。
ふわりとやさしく黄色い切り身を包み込み、さわやかなレモンの香りとふくよかな甘味。
それがデロリと広がった肥大した味を凝縮し、旨味だけをしぼり取った。
直後、冗談みたいに魚のくせにヤギ臭あふれる濃厚なチーズを、クセのないフレッシュチーズへと昇華してしまう。
「うまいッ!! なんと言う幸福感につつまれる味だよ! こんなチーズ食べたことないぞ!! 見ろよ、自然にほほがゆるんじゃうぞ」
「お魚なんだワン」
『駄犬よ。主は空腹過ぎて現実がわからないのですよ』
「そういえば目がイってしまっているんだワン」
二人(?)は見つめ合うと軽く震え「『ナンダッテ!?』」と叫ぶ。
「ええい、小芝居はやめい! ほら。お前も食ってみろよ、わん太郎」
まずは前菜の緑色に光る魚のルイベを、わん太郎のお口の中へとポテリと落とす。
やつは「んぁ~」と大きくお口を広げ、それが口に入った瞬間――コロコロと転げだし、「美味しいんだワン!!」とさらに転がる。
「だろ!! ほら、いつまでも転がっていないで、黄色い切り身も食べてくれ。美味いぞ~」
するとそのまま転がって俺の足にポムリとあたり止まると、また「んぁ~」と口を広げて寝転ぶ。
なんて横着なケモノ野郎だとあきれつつ、そっと切り身を落とす。
もぐもぐと数度口を動かす子狐くん。
まんまるオメメを〝クワッ!〟と開き、いつの間にか昇っている満月に向かって遠吠えをする。やっぱ犬じゃん。
そしていよいよ最後……そう。あの一番クセが強い赤い魚へと挑む。
いつまでも遠吠えをしている駄犬わん太郎。
そんなヤツを尻目に、最後の難関へと挑む。
そう、コイツは魚というよりむしろ肉に近い味わいだ。
しかもジビエ料理に似た尖った味と香りが凄い素材というのが、俺の料理人生に挑戦状を叩きつけた。
『先程から見ていましたが、主はずいぶんと料理にこだわりがあるようですね?』
「まぁな。俺は釣り人として、いつでも真剣勝負だ。小物はリリースするが、マズイ魚でも大物を釣り上げたら必ず食す。それが俺のポリシーだからな」
『なるほど。その過程で料理が好きになったと?』
「そんなところだ。不味くて最悪な調理をしたら、釣り上げたあいつらに失礼すぎる。だから俺のレシピと経験で、最高の素材として料理の華を咲かせるのさ」
『早い話がただ食べたかっただけだと?』
「ちがいない。なにせ食い意地がはってるからな」
そう言いながら赤い切り身へと歩を進めるが、ヤツは俺へ不敵に笑っていやがる。
まるで「我を旨く調理するだと? フ、おこがましいが……挑むがいい。そこまで言うなら食ってみろ小僧!」言わんばかりに威圧をこめて。
「待っていろ魔王。俺が今――裁くッ!」
『……ただの魚の切り身ですが?』
「さ、美味しく料理しちゃうぞ♪ まずは特性を考えようか……コイツの持ち味は文字通りの野生味だ。ならば遠慮はいらない。野性で挑んでくるなら、俺もその作法受けて立つッ!!」
『え、主何をッ!? そのまえに全てが野生の魚ですが?』
相棒がそう叫ぶが、俺の行動はとまらない。
調味料に近づくと、右手を一閃! ザっと全ての調味料の頂点をかすめ取り、そいつを一気にぶちまけた。
中を泳ぐ七色の調味料。その時一陣の風が吹き、わん太郎の鼻へと胡椒がフワリ。
くちょんとクシャミをした光が、月夜に照らされて闇夜を照らす。
が、そこまで暗いわけでもなく、満月の光が調味料を美しくいろどる。
その虹の光が魔王・赤い切り身へと降りかかると、一気に濃厚な香気が立ち昇りひるむ。
それはそうだろう。あの赤金草と同じ状態なのだから、普通に考えればマズイはず。
しかしそうはならないと確信があった。
この赤い切り身は、ジビエ肉そのもの。だから丁寧に処理をするのもいいが、ここは一気に全部マシマシで豪快にいただくのが正しいと思う。絶対、多分。だといいな……。
「よし……じゃあ食べてみるか。はい、わん太郎の分はここに置くからな」
「わぁ~綺麗でとってもいい匂いなんだワン」
わん太郎と視線を合わせて、同時にうなずく。
そのまま「「いただきまーす!」」と声を合わせて同時に口へと放り込む。
――熱。
そう、はじめに舌の中ほどへダイブした赤い切り身は、ルイベの冷たさで一気に舌の熱を奪い冷たい旨味がじんわりと広がった。
次の瞬間、わん太郎が「あふぁ!? あっついワン!!」と叫ぶと同時に、俺の舌もそれを感じて一気に額に汗がふきでる。
一瞬何がおきたのかが理解できず、左の奥歯へと到達した時にその正体が判明。
まずはローズマリー風の清々しくも強い風味が、タイム・スィートマジョラムと合わさり、赤い切り身と妙にマッチしながら山椒のピリカラで一気に口内の熱量があがる。
さらに噛みしめると胡椒の風味がはじけ、それが一層辛さを増したところに、旨味を引き立たせるセルバチコのごまの風味と、辛味がまた特濃な辛旨さを後押しして、背中までビッシリと汗が浮かぶ。
これらは赤い切り身自体からくる、舌を強烈に刺激する旨味が刺激になった結果と、調味料の相乗効果なのはまちがいない。
しかもそれが噛みしめるほどにますます強くなり、「もう無理!」と思った瞬間吐き出そうと思ったが、なぜか飲み込んでしまう。
が、そこで驚くことが起きた。
なんと呑み込む刹那、レモングラスの高原の風を思わせる爽快さが口内から辛さを吹き飛ばし、心地よい旨さだけだが残った状態でノドの奥へと吸い込まれてしまう。
「な……んだこれ……」
「すっご……い……ワン……」
無意識に天を仰ぎ、その旨さの余韻に一筋の涙が流れ落ちた。
わん太郎も同じようで、「生きていてよかったワン」とつぶやくが、俺も同じ気持ちでいっぱいだ。
感動で星空を眺めていると、相棒が冷めた様子で話す。
『駄犬の鼻水も、いい味だしていたんじゃないんですかね?』
そう言われるとそんな気がし、白目をむきながら「んあ~」と涙を流す。塩辛い……。
それから俺とわん太郎は、思う存分光る怪魚を楽しむ。
風味を変えてみたりしたが、やっぱり最初に決めた味がよく、気がつけば綺麗に完食していた。
こんなに美味いと思える食事をしたのは久しぶりだし、腹も心もみたされた。
「んぁ~。ぽんぽんがいっぱいになったんだワンよ~」
「ぷっは~、すっげぇ生き返った!! なんだろう……そう、生まれ変わった気分だ」
『まぁ文字通り生まれ変わっていますしね』
腹天で転がるわん太郎をなでつつ、相棒の言葉を考える。
子供になってしまった体。そしてこれから始まるこの無人島での生活。
それらに不安は無いと言えば嘘になるけど、寂しくはない。
天の破片と呼ばれるゴッド・ロッドたる相棒。そして変な子狐、わん太郎がいるのだから。
まぁ人が恋しくなる日もくるかもだけど、それはしばらく先の事になりそうだ。
それにこの神釣島は封印されていたらしいし、誰もやっては来ないだろうしな。
そう考えるとやっぱり少しさみしいかも……。
『……貴方様が朽ちるまで、嫌と言ってもずっとお側におります。まぁ迷惑かもしれませんが、よろしくお願いいたします』
「んぁ~ワレも大和が好きだから、この島で隠れ住むんだワンよ~」
俺の表情が物悲しそうだったのか、二人(?)はそう言いながら近寄ってくる。
相棒は自然と俺の左手におさまり、わん太郎はよじよじとヒザの上にのぼって来て丸まってあくび。
そんな二人に感謝しつつ、「これからよろしくな!」と元気に応える。
「そうと決まればこれからの事だよな。幸いこの島の気候は今のところ南国と言っていいから、衣・食までは大丈夫そうだ」
そういいながら相棒を三回振り、ヤシの木に似た実がある部分へとルアーを投げる。
もう使い心地にも慣れ、なんの気負いなしに頭ほどの大きさの木の実を引っかけて、おもいきり足元へと引きよせた。
と、同時に〝スキル:器用貧乏〟をつかって実の繊維をストロー状にし、ヤシの実を足元へと落とす。
ちょっと穴があいたストローだけど、まぁそれなりに飲めるだろう。
「よっ。こいつで水もとりあえず大丈夫っしょ……っと、甘ウマー♪ ほのかな酸味とくどくない甘みが最高に美味い!」
それを聞いたわん太郎が「ワレも~」と言いながら、肩までよじ登ってきたから飲ませてみる。
起用にストローを〝ちゅぅちゅぅ〟すすりながら、「甘ウマー♪」と喜んでいるの見てほっこり。
そんな様子をみた相棒は、『やれやれ』と言いながらも優しげだった。
『時に主。ス釣タスはどうなっています?』
「ん? どうしたよいきなり」
『今も釣り上げながら、スキル:器用貧乏を使った……つまりMP釣が回復しているはずです』
「そうなのか? いや……言われてみると確か体の中にある、力みたいなのが回復している気がする」
『でしょう? それが先程、主が気絶した理由かと思います』
気絶した原因、か。確かに気絶しすぎだよな。
もしこのまますぐに気絶を繰り返すことになれば、自然相手に生きていくのもヤバイ。
だから迷わず「ス釣タス!」と、今の状況を確認した。
「たしかに回復しているけど、増えてねぇかコレ? MP釣は最初見た時、最高値が99だったはず。それが今じゃ200になっているぞ?」
『今……なんと?』
「だから200だよ。今はMP釣の残量が、185/200になっている」
そう言うと相棒は『ありえない』と呟き、数秒だまった後に話し出す。
『いいですか主。主のこれまでの釣果という経験をまとめたのが、その手にあるス釣タスです。中年オジになるまで釣りに没頭し、得た結果がMP釣が99です』
「中年オジ言うなし! でもまぁ……そうだよな。あそこまで釣りをして99だもんな。それが今じゃ200と考えると、コレまでの経験はなんだった? って話になるよな」
『はい。しかも一時間過ぎたかどうかと言った所で、全回復しています』
相棒の考察はつづき、それがいかに異常な事なのかを思い知る。
『99でも普通の人間なら多い方ですが、それが一時間寝たからと言って回復するのはおかしい』
その話に「でもしてるぞ?」と言うと、『はい。ですから他に理由があるはずです』と続け、『ス釣タスを確認してください』と言う。
MP釣の項目から下へと目線を移し、釣XPを確認。
するとさっきは3万後半だった釣り経験が、今はほぼ0に近かった。
正確に言うと30/85000といった感じに表示されている。
それを伝えると、『やはり……ではレベルも上がっていませんか?』と相棒は言う。
見れば確かに釣果レベルが60から71になっていて、上がっているとわかった。
「十一も上がっている!」
『予想通りですか。その他も上がっていると思いますが、この上がり方は普通じゃない』
「そうなのか。でも上がっているぞ?」
『ええ。そこで主が気絶した理由ですが、多分レベルアップをした瞬間に、MP釣が回復したとしか思えません』
「その言い方だと、それもイレギュラーぽいな」
「そうですね。主もこれまで表面では見えなかったけれど、レベルアップをしていました。でもそれに気が付きましたか?」
相棒の言葉を思い出し、これまでの人生を考えてみる。
たしかにある瞬間に〝釣りが上手くなった〟という感覚はあった。
でも、今回みたいに気絶することなんて無かったし、今ならハッキリと分かる体の中にある力――MP釣を感じることはなかった。
正直この島に来た時、妙な体の中の感覚に戸惑っていた。
それは知らない場所にいることへの不安感からと思っていたが、どうやらその正体はMP釣を認識したことへの戸惑いだったらしい。
「言われてみるとこの島へ来てからだな……」
『でしょうね。普通は感じることも無いままに人生が終わるでしょうから。ですが主は神釣島へ来たことで覚醒し、それを使えるようになった』
「なるほどなぁ、まぁ納得したよ。それで気絶した理由は?」
相棒は『これも憶測ですが』と言いながら話をつづける。
どうやら何度もレベルアップを繰り返しながら、スキルを使い続けた事によるものだと言う。
ただそれも確定したことではなく、理由は不明とのこと……スキルを使うのが少し怖い。
『まぁ主が普通の枠を超えて、無茶をしなければ大丈夫ですよ』
「べつにしたつもりも無いんだけどな」
『とは言え、ここで生き抜くにはスキルを使用しないと無理でしょうから、気絶しないように鍛えるしかないですね。そこでこれからの事ですが、衣・食・は整いました』
相棒の言いたいことは俺も感じていた。だから続けてこう話す。
「後は住……つまり俺たちの家ってワケか。でもそれはそこの社でいいんじゃね?」
背後にある不気味に朽ちた社。
南国には似つかわしくない、よくある日本にある神社ぽい感じの建物に、右の親指をむけながら話す。
『いえ、そこはやめたほうがいいでしょう。あそこは〝理〟が出た実例があります。もしかしたら再度遭遇するかもしれない……それでまた何か悪さをされても困りますからね』
「そ、それもそうだな。うん、ちがう所を探そうか」
『ええ。とはいえ、今夜はそこを使いましょうか。夜露は体によくありませんからね。明日になったら他の場所に家を作りましょう』
それに「そうだな……」と言いながら、わん太郎をなでる。
よほど満足したのか、「くぅ~くぅ~」といびきが聞こえてクスリと笑ってしまう。
開けた森の間から見る星空は、見たことのない星座にあふれ、ココが異世界なのだとあらためて思い知る。
大の字になって苔の布団へと倒れ込みながら、どこまでも高い星空をながめた。
◇◇◇
――大和が星空を眺めている頃と同時刻。
とある大陸にある一つの国。その玉座の間で一つの決定が下された。
だが玉座の主はなく、そこを囲みながら三人の男女が話す。
一人は金髪に癖っ毛があり、獅子を思わせる背の高い青年。
一人は青年と似た顔だが、冷たく美しい顔の娘。
一人は五十代半ばほどの、ハゲあがったタレ目で贅肉の塊みたいな男。
そのなかで青年が重々しく口を開く。
「魔女の呪いをうけた聖女など、この国の汚点というものだ」
「ええそうですわよ兄上。ですから早々に処分をいたしませぬと。あなたもそう思うでしょう、オルド宰相?」
「はい。皇太子殿下と、姫殿下のおっしゃるとおりです。ではあの計画を?」
その言葉をうけ、皇太子殿下と呼ばれた男は「やれ」と一言告げる。
「承知いたしました。ですが……皇帝陛下はこの事を?」
「フン。老いぼれは知らぬし、知る必要もない。が、近い将来に皇帝となるオレの勅命では不満かオルド?」
その言葉にオルドは左の口角をあげながら頭を下げつつ、「陛下のみが使える勅命……つつしんで拝命いたします」と言うと、呆れた声で娘――エリザベートが話す。
「よくおっしゃいますわね。まだ皇太子だと言うのに」
「それが何だというのだ。このヴァルマーク・フォン・アスガルドが、皇帝となるのは確定ではないか?」
「まぁ……それはそうでしょうけれど……」
「それにお前もそのおかげで聖女になれるのだ。喜ばしい事ではないか」
エリザベートはギリッと奥歯を噛みしめながら、乱暴に吐き捨てる。
「あたりまえですわ。あんな魚鱗の魔女が聖女だなどと、神がゆるしても、ワタクシはゆるせませんわ!!」
「魚鱗の魔女、か。我らと同じ美しい容姿をもちながら、顔面にウロコの入れ墨が入るとはな。まぁよい、ではオルド宰相、あとは任せた。それと例の娘だがどうなった?」
「はい陛下……おっと、口が滑りましたな。別室に待たせておりますゆえ、存分にお楽しみを」
「はっはっは。それでよい、では案内せい」
オルドの肩を抱き、ヴァルマークは玉座の間を後にする。
ポツリと残されたエリザベートは、玉座をみつめると足を動かす。
一段、また一段と階段を登り、五段めを上がり終えると静かに玉座へと腰を下ろす。
「次期皇帝ですか? 馬鹿をいうのも大概になさいませ兄上。オルドの傀儡になり、酒と快楽におぼれた者に玉座はふさわしくない。この玉座はワタクシのモノ。そう、エリザベート・フォン・アスガルドのね」
右手を肘かけにのせ天井にあるステンドグラスをにらむ。
そこには月明かりに照らされた聖女が透けて見え、アスガルド王国を聖なる光で照らしていた。
苦々しくそれを見ながら、血も凍る冷めた声でつぶやく。
「姉より優れた妹が居ていいはずがない。そう、ワタクシが真の大聖女。この国を支配し、聖なる光で国を照らすのだから」
ほの暗く、うすく嗤うエリザベートは、忌々しい妹の顔を思い出す。
苛つきで顔をゆがめるが、この苛立ちもあと少しで片がつくと思うと心が静まる。
だから「聖女の光を取り戻しますわ」といいながら、ステンドグラスを見上げるのだった。
◇◇◇
「んんん……どこだここは……」
体の痛みで起きると、そこは知らない天井があった。
むくりと起き上がると腰が痛く、そこが木の床だと気がつく。
「あぁそうか。俺はガキになっちまってたんだった……」
『おはようございます主。今日も晴天で気持ちがいいですよ』
「おはよ~! ってお前は寝てない感じな声だけど、平気なのか?」
『ええ、私はこの状態なら寝なくても平気ですよ』
「それはいいなぁ。一週間寝ないでぶっ通しで釣りができるじゃん! 特別な力を持つ存在って感じだよなぁ」
『ハァ~。主の基準は、あいも変わらず釣りなんですね。まぁもっとも、もう一匹の特別な力を持つ駄犬は、まだ寝ていますがね』
ふと耳に聞こえてくる寝言。
聞き耳を立てると、「んぁぁ、女幽霊やめるんだワンよぅ」とか言って体をくねくねさせている。
女の幽霊に追いかけられている、悪夢でもみているのだろうか……怖い。
「なんだかお取り込み中のようだな」
『ですね。さて今日は何をしましょうか?』
「そりゃ決まってるさ。まずは釣り! そのあとメシ! そして家を建てるぞ!!」
『釣りから始まる異世界二日目ですか。実に主らしいですね』
「だろ? って事で行こうぜ!」
そう言いながら、まだ寝ている子狐わん太郎を左肩に背負い、相棒を右手に社を出る。
ふと振り返ると御神体みたいな物があり、そこに一応あたまを下げておいた。
◇◇◇
「おぉ……あらためて見るとスゲェ光景だよな。南国リゾートのプライベートビーチって感じで、雰囲気が最高だな」
『ここへ来たのですか?』
「まぁな。誰か居ないかと思って島を一周した時に見つけたんだけど、その時は余裕なくて素通りしただけだったんだ」
朽ちた社から歩いて子供の足で四十分ほどで、湾になっている場所を再発見。
大人の足ならもっと早いのにと、あらためて子供ボディに舌打ちしつつ崖の上からそこを目指す。
神釣島の外周部分でも、特にココは特別な地形だ。
近づくにつれて、その美しさに息を呑む。
白を超えた純白の砂浜を、やさしく撫でる小さな波。
冗談みたいに透明度が高い、オーシャンブルーの涼やかな水面から覗く、これぞ色と思えるほどのビビットな魚の群れ。
海岸へ降りると人工物みたいな岩が、船着き場のように沖へと伸びていて、ここはいい釣り場になりそうだ。
さらに振り返ると、つるりとした岩肌が見えている。
その一部から滝が流れ落ち、滝つぼが天然のプールになっていた。
透明度の高いエメラルドグリーンのプールに、太陽光が岩肌に反射してそこもまた幻想的だ。
周囲にはヤシに似た木々が生い茂り、心地よい日陰が潮風を肌になじませてくれる。
その木々の周辺には、サフィニアに似た色とりどりの花が咲きみだれ、甘い香りで熱烈に俺たちを歓迎してくれた。
「近くで見ると色々と凄いな……」
『確かにすごい景観ですね。主の故郷の価値観からすれば、子供は五千円。大人は三万八千円で入場できるレベルですね』
「せっかくの感動を円換算で言うのやめていただけますぅ?」
『失礼。乳児は無料です』
「棺桶に片足突っ込んだ山爺も、無料にしてほしいのですが?」
なんて棒っ切れだ。
こんな素晴らしい景観を商売にしようだなんて!
とはいえ、あの船着き場っぽい場所は管理釣り場にしたら儲かりそうだな……うへへ。
『……ご存知ですか? 類は友を呼ぶといいます』
「いやあああ!? 俺の汚れた心をみすかなさいでえええ!!」
なんてヤツだ。
俺の心のほぞを見透かすとは……恐ろしい子ッ!?
そんな相棒に戦慄していると、『顔に出ていますし』と呆れられた。解せん。
「さて、オチもついたし本題だ。ここを拠点にしようと思うんだけど、どうよ?」
『セルフでオチをつけていただかなくても、私がつけましたものを。とはいえ、確かにここは良い条件が整っていますね』
「だろう? 後でおまえに判断してもらうけどさ、当面の水はあの岩から染み出している水があるし、ダメならヤシの実みたいなのも豊富にあるしな」
『まずは食事ですか。食材も豊富にありそうですし、何からいきます?』
そこだ。流石に連続してのルイベは飽きる。
ここは文明的に火を使って調理したいが、火を起こす道具がない。ん? いやまてよ。釣り糸を焼き切るのにライターがあったはずだ。
「ライフジャケットを持ってきて正解だったな。ポケットの中に……あったあった」
『火種は丁度いいものがありますよ。それから火種を大きくするのに、適した木片もありますね』
相棒が先をしならせて指す方向。
そこにはヤシの木に似た木の幹に、モフッとまとわりつく糸状の繊維がある。
「お、アレは種火に最高だよな! ヤシの木に似た……ええい面倒だ。この際似たやつは地球呼びにしよう」
『ですね。オリジナルの名前をつけても覚えるのに面倒ですから、主がわかりやすい名称がよいかと』
相棒もそういうし、「うし! じゃあアレはヤシの木な!」と言いながらヤシの木へと歩く。
想像以上に細い繊維がからまっていて、それを手でむしってみる。
するとトロロ昆布を引き裂いたのと似た感触で、〝めそっぅ〟と抜ける。気持ちいい♪
その快感がたまらなく、めそめそめそっぅと高速で抜きまくると、相棒がなにやら呆れた声で話す。
『……主、もうそのあたりでよいのでは?』
「あ!? 思わずくせになる手触りで夢中になった」
『まったく仕方ない主ですね』
スミマセンデシタと水たまりより深く反省をしつつ、次は火種を大きくする物を探す。
あたりを見渡すと丁度いい物があり、そこへと小走りで向かう。
「これはヤシの木の葉っぱか? デカイし簡単に燃えそうだ。あとは……あった! 小枝と太い枯れ枝ゲット♪」
『良い判断です。それでキャンプ地はどこに?』
「そうだな……うん、滝つぼプールの隣にしよう。ちょうどよくカマドに使えそうな石があるし。それとあの石の上にも行こうぜ?」
すぐ近くにある滝つぼプール。
そこの隣に平たく巨大な石が地中に埋まっていて、そこの上を拠点に活動しようと思う。
巨石の高さは地面から大体だが八メートルほど。
そこへ登るのに適した形の凹みもあり、まるで階段みたいでスッゴク心が躍る。
美中年のころだったら、そんな面倒な場所にはいかなかったと思うが、今は逆に登ってみたい。
そんな気持ちを見透かされて、相棒に『馬鹿と煙はなんとやら』と突っ込まれる。アンタ、日本マニアか?
そんな感じで岩の上に到着し、駆け足で岩のはじへと向かう。
思わず「すっげぇ……」と言葉につまり、その光景に息を呑む。
高台からみる純白のプライベートビーチは、まるで湾全体が極上の宝石箱みたいに見え、生命の息吹で鮮やかに輝く。
そこに太陽光がさんさんと降り注ぎ、なんとも言えない美しさでオーシャンブルーを切り出して魅せる。
あまりにも贅沢な光景。それに時を忘れて見入っていると、若い体はそれを許さない。
そう、ハラヘリの民がやってきたのだ。
『ステキな光景はまた後で堪能しましょう』
「ハラヘッタ。メシ。用意。スル」
『なぜ片言なんですか。それでどうします?』
「まずは下にある小さな岩があるだろう? それを利用してカマドを作る」
上から見下ろすと、いい感じに∪の文字ぽく見える岩へと向かい、階段下においてあった燃やせる物をカマド予定の場所へとうつす。
「さて、と。問題はここからだ」
『ですね。確かに岩がくぼんではいますが、このくぼみ程度ではカマドには役不足と思いますが?』
その言葉に「まぁ見ていろって」と言いながら、相棒を片手に岩の前に立つ。
糸の先についているゴッド・ルアーの形状は小魚のままだ。
それにMP釣を込めて、くぼんでる部分へ向けて思い切り相棒をしならせてゴッド・ルアーをぶん投げる!
相棒が『なにを!?』と驚くが、そんな事をお構いなしに白銀色に光る小魚は、そのままぶっ飛ぶ。
直後に〝ぞザッ〟と、岩に金属が当たった音とはマッタク違う、不思議な音と共にルアーが消失。
『き、消えた……一体どこにゴッド・ルアーは消えたのですか?』
「消えた? おいおい何を言ってるんだよ。〝スキル:人釣一体〟で探ってみろって」
人釣一体。このスキルは半径十センチの状況を、手にとるように理解できる優れものだ。
だからその言葉を理解し、人釣一体を起動した直後に『まさか岩の中ッ!?』と驚く相棒。
「そう、そのまさかってヤツだ。どこだ? どこかに塊があるはずだ――ッ見つけた!!」
ザラつく感覚と、ぬめりとした感覚。それらが高圧縮され、一つとなっているのが見える。
が、はたしてそれは本当に一つの物体なのだろうか?
否! それは違う。元々は別の物体なはず。
ならば見つけりゃいい。その分かれ目ってやつを。
「捉えたぜッ! フィィィィッシュ!!」
凹みの中央から思いっきりゴッド・ルアーを引き上げたと同時に、岩と同じ色をした灰色の魚が〝のヴぉッ〟っと飛び抜けて出た。
その形はでっぷりと太ったフグみたいな形で弧を描き、地面へと落下した瞬間に砂になってしまう。
その砂の魚が抜け出た場所を見ると、いい感じに凹みがあり、一番したから上部へと穴が開いてトンネル状になっていた。
『主、これは一体どういう事なのですか!?』
「どうって昨日おまえにさ、調味料の抜き方を教えてもらった事だろう? あれと同じように釣り抜いただけだよ」
『抜いたとは岩をですか?』
その問いに「そうだ」と答えると、相棒は『そんな使い方は出来ないはず……』と噛みしめるように話す。
『いいですか主、抜けるとは釣り上げたという事です。ですが主は今、岩自体をくり抜いてしまった。それは本来のスキル内容ではありません』
「まぁそれは分かるよ。〝器用貧乏〟は対象から釣り上げた中身を、具現化して使用できるようにするスキルだよな」
『そうです。もう一度言いますが、今回は岩自体をくり抜いてしまった。それは出来ないのです』
相棒の言葉に、ふんぞり返りながら「ふふん」とドヤりながら話す。
「べつに岩をくり抜いたわけじゃねぇって。いいか、この岩は何で出来ている?」
『岩の素材……ッ、まさかッ?!』
「そう、コイツは砂岩だ。その中から石英と長石を〝器用貧乏〟で弾いて固めた後、泥にちかい砂のみを、まとめてブッコ抜いたってわけさ」
『あ、ありえません。そんな使い方ができるなんて……』
絶句しつつ現実を認識しつつ在る相棒。
「それが出来ちまうんだから、仕方ないっしょ?」
『い、いえ。私はこのスキルの管理者ですから、その特性は誰よりもよく知っています! 〝スキル:器用貧乏〟は、そんなに汎用性の高いものではありません。むしろ失敗する確率が高いのです!』
そうまくし立てる相棒。
さらに聞けばどうやら本当らしく、良くて俺が最初に作った布程度のモノが出来ればいいそうだ。
確かにその話しなら理解も出来る……が、残念ながら出来てしまう。
特にあの赤金草から七色の調味料を釣り上げた時から、モノに宿る中心核が分かる気がする。
これはつまり――「――才能ってヤツっすね」と、ドヤ顔で言うと相棒が、『そう思います』としおらしく言う……。
このあと天からサメでも降るんじゃなかろうか?
そんな事を思っていると、相棒がブツブツと何かを言いながら、一つの答えにたどりつたようだ。
『もしかして……主、ス釣タスを開いてください!』
「なんだよいきなり?」
『いいから早くはやく! そして〝器用貧乏〟の項目を見てください!』
「わ、わかったよ。出てこいス釣タス! えっと器用貧乏は……あれ、ないぞ?」
俺の言葉に食い入りながら、ス釣タスを覗いてくる相棒。
竿の先端を曲げて、そんな必死に覗かなくてもいいと思うのだが。
なんて思っていると、『あ゛?!』と耳元で奇声をあげる。ホントうるさい釣り竿だよ。
そして今日なんどめかの『ありえない』を聞いた後、静かに話し始める。
『主よ、消えたのではありません……器用貧乏があった場所。そこをよく見てください』
「んんん? あれ? 〝変態的な器用さ:レベル2〟になってる! つか、ネェミングゥ??」
よく見れば〝人釣一体〟もレベルが3になっている事に気がつく。
「なんか色々と数値がアップしてるんだけど?」
『やはり……いいですか主。元々レベルもおかしかったですが、今は82です。具体的に言うと――』
そういうと相棒はス釣タスの一部を竿先で押すと、空間に立体的に内容が浮かび上がった。
【変態釣り氏(わらい)!! テメェの現在はコレダッ!!】
【釣果レベル:71→82】
攻釣力:129→312
防釣力:113→289
魔釣力:222→360
釣 運:???→???
MP釣: 260/300
現在使用できるスキル一覧
【人釣一体:LV3】
・ルアーの半径十センチを詳細に感知
【変態的な器用さ:LV2】
・晩秋の季節。凍える少女が針仕事をするよりも、正確にエモノを具現化してゲットする。
※器用貧乏は、変態ヤロウが酷使したために喰われました(ヘンタイさんめ)
以上のことより、〝器用貧乏〟は〝変態的な器用さ〟へ統合されました。
【???】
【??????】
【??????】――以下略
釣XP:25350/138000
「……もう意味がわからないんだけど? 大体なんだよ、変態的な器用さって!? しかも効果の説明がもっと意味が分からんうえに、ここは南国の島で、俺は南国少年だってばよ!!」
『なぜ少女? い、いやそこはどうでもいいのです。効果を見てください』
「だから南国娘だろ? 今度生まれ変わる時は〝理〟に言っといてくれ。ハイビスカスが似合う娘でヨロって」
そう言うと相棒は、呆れながら『その後です』と言う。
『ほら、最後に〝正確にエモノを具現化してゲットする〟とあるでしょう?』
「そうだな……あ、そうか! だから俺は好きなように形に出来るのか!?」
『そうとしか考えられませんね』
と相棒はいいながら続きを話す。
どうやら〝スキル:器用貧乏〟は本来ならレベル5で止まり、次の開放まではかなりの経験が必要となるらしい。
そして開放されると貧乏が取れて〝器用〟となり、最初よりはまともになる程度だという。
じゃあ今の〝変態的な器用さ〟とはなんなのか?
それは相棒すら初の事であり、聞いたこともないという。
おいおい、スキルの管理者として大丈夫か?
さらに俺がさっきヤシの木実を自然に取った事も、実は驚いていたという。
確かにごく自然にルアーでヤシの実を取り、それを好みの形に具現化したのだから。
『……なにか失礼な事を思っていませんか?』
「イエ、ベツニ」
『まぁいいでしょう。とすれば謎は深まりつつも、一応は理解できました』
「よし、じゃあ火を起こそうぜ! 俺、カマドで火を起こすのって好きなんだよな」
相棒は『まったく軽い人ですね』とため息を付きつつ、楽しげに『どうしますか?』と聞いてくる。
実際はコイツも楽しいんだろうなと、内心クスリとしつつ、カマドの準備をする。
まずはヤシの幹から取った、ふわりとした繊維。
それをカマドの中へと入れる。
その上にヤシの葉っぱを被せ、そこを囲む形で細い枝の後に太い枝の順に並べる。
まずはヤシの繊維に着火すれば、大きな火力は必要ない。
「幸いライフジャケットの中にライターがあったから、これを使えばすぐに火が起こせる」
そう言いながら糸状の繊維に火を付ける。
ものの二秒ほどで一気に着火し、瞬間的に火が大きくなる。
これは結構すごい火力だろう。
そこへヤシの葉っぱを動かしつつ火にあて、瞬時に燃え移る。
さらに大きくなる火の塊。
そこへさらに葉っぱを投入し、火を大きくしつつ小さな枝に着火する。
少し時間はかかったが、それにも無事に着火。
そのまま細い枝をくべながら火種を大きくして、いよいよ本命の太い枝へと炎を移す。
「この工程はいつやってもドキドキする……」
ジリジリと焦げる表面。
そこから、うっすらと白煙が立ち昇り、次の瞬間オレンジ色の美しい炎が垂直に燃え上がる。
『おお! 主よ、これはいいですね。原始的な魂の喜びを感じます!』
笑いながら「なんだよそりゃ」と言いながらも、その言葉の意味がよく分かる。
炎というのは危険だが、同時にやすらぎも覚える不思議なものだ。
だからこそ、人は焚き火に魅力を感じるのだろう。
そんな事を思っていると、いよいよ本格的に太い枝に着火して、炎が大きく育つ。
「うし、こんなものっしょ。後はこのまま太い薪をくべてやって……と」
強くなった火力はカマドの上部の穴へと吸い込まれ、どんどん火力が強くなる。
そこへ次々と太い枝を投入し、火力が安定するころには相棒が感動していた。
『おお……これは良いものですね』
「だろう? おまえは長生きなのに焚き火は見たこと無いの?」
『もちろんありますよ。ですが、その時々の主と見る火の色は、私の中では特別なのですよ。ですから今日この時の焚き火は、また格別なのです』
そう寂しそうに話す相棒に「そうか……」と一言いいつつ、静かに炎を見つめる。
パチパチと木片がはぜる音に癒やされながらも、無粋なハラヘリの民が腹の中でブーイング音をならし、場の雰囲気を壊す。
『……さ、今は主の食欲を満たしてあげてください』
「だな。えっと何か獲物は……お、いたいた。アイツにしよう」
カマドのすぐ後ろにある天然の滝つぼプール。
ここは全体的に木陰だが、滝つぼの周囲だけは日が入り、まるでスポットライトを当てられているようだ。
その光に照らされたのは複数の魚群。
それに狙いを定め、相棒を握りしめて振り抜く。