大輔はそれだけ言うと、じゃっ! と言って、再び原付きバイクにまたがった。
「校門前で待ってるから!」
 大輔はそう言い残すと、(さっ)(そう)と原付きバイクで坂道を登っていくのだった。
(な、なんだったの……?)
 まるで台風のような大輔の登場に、さくらは驚きとドキドキする胸を押さえながら学校までの道のりを歩いて行くのだった。
 その日の講習内容は良く覚えていない。
 この講習が終わったら、本当に校門前に大輔がいるのだろうか?
 さくらはそのことばかりが気にかかり、授業に集中することが出来なかったのだ。
 夏期講習が終わり、さくらはドキドキしながら校門を出ようとした。周りを気にしていることを悟られないように、なるべく平静を装っていたのだが、やはりその目は自然と(だい)(すけ)を探してしまっていた。
 しかしさくらの視界には大輔の姿はなく、さくらはがっかりしたような、安心したような、複雑な気分になった。
(いるわけ、ないよね……)
 さくらは短く息を吐き出すと、自宅に向けて坂を下ろうとする。すると後ろから、
「前田さん!」
 聞き覚えのある声に呼び止められた。その声を聞いた瞬間、さくらの心臓は口から飛び出るほど大きく脈打った。
「良かったぁ~、間に合った!」