『自分で向かうので迎えは寄越さないでください』

 そうラドフォード公爵に頼んでいたエリザは、報告書を一日でまとめ、その翌々日、事前にもらっていたお金で馬車を手配して屋敷に向かった。

 冷静になって思い返すと、扉を破壊したのは大変失礼だった。

 ラドフォード公爵と再会したエリザは、土下座で謝罪の意を示した。

「先日は、大変申し訳ございませんでした」

 まさか、ルディオが前もって教えてくれなかった危険事項に腹が立って、扉のことも忘れて口頭報告だけして帰ったとか、とんでもないことをしたものだ。

 すると温厚な彼は「とんでもない」「扉くらい大丈夫だから」と許してくれた。

 再び豪華な客間でラドフォード公爵と向かい合ったエリザは、ジークハルトとの面談について報告書も手渡した。

「ほぉ、よくまとめられている」

 彼は「事務に特化した魔法使いは少なくてね」と、感心したように書面に目を通していた。エリザの推測を聞きながら、時々穏やかな眼差しを上げて相槌を打つ。