待って間もなく、ジークハルトがやってきた。

 女性に対して異常なほどの恐怖を抱くことがなくなったためか、一人で来た彼は、途中で異性とすれ違っただろうに平気そうだった。

「一人で来られたんですか?」

 彼がソファの隣る様子を目で追いつつ、聞いてみた。

「まぁ……その、近付かなければ平気ですから」

 一対一の対人くらいの近さとか、声をかけられるとかだろうなとは、エリザもなんとなく察した。

 二人で話せたのは朝の寝室の一件以来だったし、あれからジークハルトも一度頭が冷えた。

 改まると、さぞ気まずい感じの空気になるんだろうな――と思っていたのだが、エリザの予想は外れた。

 ジークハルトはソファに座ると「よし」と頷き、エリザを自分の膝の上に抱き上げたのだ。

「『よし』じゃありません。待った待った」

 思わず、エリザの口からツッコミが出た。

「なんです?」
「おかしいと思わないんですか」
「求婚している仮の婚約者が隣にいるのに、しかも二人きりなら、大人でも許されるでしょう?」

 エリザは、ジークハルトの感性についていけるか少し心配になった。