「なつちゃん」
 「ひゃ!」
 「扉の真ん中にいたら通れないよ。」
 「ごめんなさい」
 「ううん。いいよ」

 泰明は夏都の反応にクスリと笑った。

 「荷物置いたら、出かけよ。あ、シャニも連れて行こう。」
 「うん。」

 泰明に誘導されるがまま、出かける。
 シャニは夏都の腕の中で泰明を見つめた。

 『やすあき、ままに何かしたらどうなるかわかてるだろうな?』
 「おっ、ナイト気取りか?」
 『ナイトとかライトとかわからないけど、俺は花嫁であるママのまもり猫だからな』
 「ふっ、頑張れよ」

 夏都は「?」の状態だ。
 
 「泰兄ちゃんとシャニは仲良しだね」

 「どこが……」
 『ママの天然もここまで来ると呆れる……』

 泰明とシャニは夏都の天然さに心底呆れている。

 「なつちゃん、車に乗ろうか」
 「うん」
 
 泰明は夏都の手を取り、車まで誘導した。
 なんとなくだけど、腰に手を回されるのは気恥ずかしい気持ちになる。

 シャニを抱っこしながらも康明の運転する車に乗りながら長崎市内の町並みを眺めていく。

 「ここ……お母さんや妹たちとよく行ったな……」夏都はポツリと呟いた。
 泰明はその瞬間を逃さなかった。

 「君のお母さん、いい人だよね。」
 「うん……」
 「でもね……なつちゃんの身内を悪く言いたくないけど、あんなひどい父親とわかっているなら君を守るために離婚するのも選択肢だと思うよ。」
 「……」

 泰明は横目で夏都を見ると「ごめん」と一言車の運転を再開する。

 「……私のこと……思ってくれているんだよね?」

 「うん。俺、なつちゃんのこと一人の女性として好きだよ。だから君を傷つけるもの全てが嫌いだし憎いんだ……」
 
 「うん……」
 「君が兄貴のことが好きなのはわかっているよ。」
 「!?」

 夏都は、泰明の言葉に戸惑った。