「ねえねえ、麻衣!知ってる?うちの学校の都市伝説」
自分の席で荷物をまとめていると、親友の芽衣が顔をきらきらにして聴いてきた。
私は荷物をまとめていた手を止めて「都市伝説?何それ」と首を傾げる。
すると芽衣はふふんと鼻を鳴らして得意げに教えてくれた。
芽衣は「やっぱり!都市伝説とは……夜の十二時ぴったりに学校にいると、閉じ込められちゃうの……そして一時になると解放されるんだけど、それまではいろんな怖い現象とかが起こるんだって……実際にこの都市伝説を試して行方不明になっちゃった子もいるらしいよ……」とおばけのように腕をゆらゆらさせながらわざと低い声を出して言う。
「はああ?そんなことないじゃん」私は呆れながら否定する。
けれど、芽衣は聞く耳を持たずに続ける。
「でも、ひとつだけ現象を起こりにくくする方法があるんだって……それは、絶対に悲鳴をあげないこと」
「悲鳴をあげない?」私は荷物をまとめながら眉を寄せる。
「そう……。おばけは悲鳴が大好物なの。だから悲鳴をあげなければ現象もあまり起こらないんだって」と芽衣は相変わらずおばけみたいに声を潜めて言う。
私は「ふーん」と相槌を打つ。
「ねっ、興味深いでしょ?だから、今日の夜こっそり試してみない?未子も誘ってさ!」
芽衣はもう決定したかのように手をぱんと叩いて言った。
「ええ、やだよ。行くならふたりで行ってよ」と言い私はぶんぶんと首を振る。
「なになになに⁉呼んだよね?きゃあ!あたしも行く行くー!もちろん麻衣も行くよね⁉」
突然未子が話に入ってくる。
「うわっ、びっくりした!地獄耳ー」と私と芽衣はおどけてみせる。
未子はへへっと頬を微かに紅潮させて照れる。地獄耳って言葉の意味知ってるの、そこ照れるとこ?と私は思った。



夜の十一時四十分頃。
「うっわあ!夜の学校って初めてー」未子は下駄箱の所できょろきょろとする。
その時だ、学校の放送の音が聞こえた。
『……ガ……ガ……ガガ……ガ……がっこ……のほ……そをはじ……め……す……ガガ……やあ、諸君。あと一分で十二時になる。そうなれば君ら諸君の中のふたりが死ぬ。だがひとりは、生き残れる。』
不思議な声だ。この声が夜の学校の不気味さをさらに際立たせる。
私たちは怖くなりお互いに距離を取り合う。
『あっはっは。お互いに距離を取っても何もない。――ああ、肝心なことを言い忘れていた。くれぐれも悲鳴には気を付けて……』
そこで奇妙な放送は終わった。
「え、なに……」言い出しっぺのはずの芽衣は顔を青ざめて震えている。
グシャグシャッ
ピチャッ!
そんな生々しい音が後ろから聞こえた。
振り向くと未子が血を流して倒れていた。
「き、きゃあああああああああ!」
芽衣は悲鳴をあげて床にへたり込む。
私は言葉を失い絶句する。
「な、なに――」とやっとの思いで言いかけたところで、鋭い痛みが全身を駆け巡った。
何が起きたのだろう、ああ、もう私はだめなんだ、そう思ったところで意識はなくなった。
ひとり取り残された芽衣は泣き叫んだ。
グシャッ、と生々しい音をたててまたひとり行方不明者が増えたのだった。



「そういえばさあ、知ってる?十年前の今日、○○学校で三人の行方不明者が出たらしいよ。しかも、行方不明になっちゃうっていう都市伝説があるんだって。それでその子たちもその都市伝説で行方不明になったっていう噂だよ。怖くない?うちらもほんとかどうか試してみようよ!」ある小さなカフェで高校生の三人組のひとりが最新のスマホをいじりながら言った。


やあ、この前の「ゲーム」は楽しかったね。
その後の彼女たちはどうなるんだろうね、楽しみだ。
生き残れるのはただひとり。君も興味があるなら挑戦してみたら?まあ度胸があれば、の話だけどね。僕ならいつでも歓迎してるよ。
そうだ言い忘れてた。あの時は、いい悲鳴をごちそうさま。
あ、そろそろ「時間」だ。それじゃあまたどこかで…………