「土精霊に愛されし僕よ、汝の名は【キュルル】。我が力となれ!」
刹那、ゴーレムは眩しく黄金色に輝き、部屋は目も開けられないほどの光であふれた。
ズン!
ミラーナをかすめたゴーレムはそのまま壁に激突して、閃光を放ちながらゴロゴロと転がっていく。
一同は固唾を飲んで徐々に輝きが収まっていく卵型の石を見守った。
これでダメだとどうしたらいいか分からない。ミラーナは両手を組んで泣きそうな顔で祈る。
光が収まっていくゴーレム……。
室内にはパラパラと何かのかけらが落ちてくるかすかな音が響く。
直後、目が金色にキラっと輝いた。
キュイッ、キュイッ!
卵型ゴーレム【キュルル】は、鳴き声を立てると静かに立ち上がり、腕を使って器用にくるりと回ってミラーナを見つめた。
「キュルル、おいで」
ミラーナはニッコリと笑うとそっと手を伸ばす。
そろそろとミラーナの前まで来たキュルルは、下側の腕をついてミラーナに傅くと、左手を胸に、右手をうやうやしくミラーナに差し出した。
ふぅっと大きく息をついたミラーナは、ニッコリと笑いながら柔らかく白いキュルルの手を取る。
「最初から名付けておけば良かったわね。ごめんね」
そう謝るミラーナに、キュルルは『キュイィィィ』と申し訳なさそうに鳴いた。
「良かった! 成功だ!」
オディールはパチパチと手を叩きながら新たな頼もしい仲間の誕生を祝う。これから大きく成長していく街には警備などの危険な仕事や力仕事がたくさん出てくる。それをゴーレムが担当してくれるならとても助かるのだ。
キュルルは辺りを見回すと、自分がぶちまけてしまった棚や家具を慌てて一つずつ元に戻していく。長い粘土の腕を巧みに使って器用に丁寧に戻していく様には、先ほどまでの猛牛のようなどう猛さなどかけらもなく、勤勉で繊細な働き者だった。
「お疲れ様! こいつ、自分がやったことわかってるんだね」
オディールはミラーナの手を取り、ねぎらいながら言った。
「そうみたいね。これならいろんな仕事を頼めるかもしれないわ」
ミラーナは甲斐甲斐しく働くクリーム色の卵型ゴーレムを見つめながら、優しく微笑んだ。
◇
しばらく元気に動いていたキュルルだったが、急に動きが緩慢になり、眼の輝きが消え、『キュー……』と、いいながら止まってしまった。
「あ、あれ? 壊れちゃった?」
オディールが恐る恐るキュルルをつついていると、レヴィアが腕を組んで言った。
「燃料切れじゃろう。このくらいのサイズのゴーレムは燃費悪いからのう」
「あ、じゃ、魔力をまた込めればいいの?」
「それじゃまたすぐ燃料切れになるぞ。魔晶石を使えばよかろう」
「魔晶石? あの、魔法のランプに入ってる……」
「そうじゃ、あれは光の魔晶石。魔晶石に込められた魔力が電池のように魔法を駆動し続けるのじゃ。ゴーレムなら土の魔晶石をボディに埋めておけばよかろう」
「おぉ! それなら動き続けられるんだね!」
オディールはニコニコしながらレヴィアに手のひらを差し出した。
「おい……、何じゃその手は?」
レヴィアは眉をひそめる。
「レヴィちゃんなら持ってるよね? 魔晶石」
レヴィアはギュッと目をつぶる。
「お主、土の魔晶石は貴重なんじゃぞ? 分かっとるのか?」
「知らないけど、レヴィちゃんたくさん持ってそう」
ニコニコと嬉しそうに言うオディール。
「土の魔晶石で大きいのとなると、それこそジャイアント・トレントとか倒さんと手に入らんのじゃ」
「あー、じゃ、今度一緒に倒しに行こう! だからそれまで貸して」
オディールは小首をかしげてニコッと笑いながら両手を出した。
「見つけるの大変なんじゃぞ……。ふぅ、お主には敵わんな。貸すだけじゃぞ」
レヴィアは大きくため息をつくと、空間を裂き、中から黄色に光る透明な丸い石を取り出す。
「おぉ……」「こ、これが魔晶石?」
二人は黄色に輝く鮮やかな煌めきに思わず見とれてしまう。
「輝きが無くなったら魔力充填が必要じゃ。聖水にでも漬けておけば一晩で満タンになろう」
「え? 漬けるだけでいいの?」
「聖気とは混じりけのない純粋な魔力のこと、それがたっぷり溶け込んだロッソの上質な聖水なら漬けるだけで充填されるじゃろ」
「それはいいね! じゃあ十個くらい貸して」
オディールはニコッと笑ってまた手を出した。
「じゅ、十個!?」
「まずは十体つくるんだよ。レヴィちゃんいっぱい持ってるでしょ? 借りるだけだからさぁ」
レヴィアは大きくため息をつくとジト目でオディールをにらむ。
「貸すだけじゃぞ? お主もちゃんとトレント倒すんじゃぞ?」
「分かってるってぇ!」
オディールはニコニコ笑いながらパンパンとレヴィアの肩を叩いた。
こうしてセント・フローレスティーナには頼もしいゴーレム部隊が誕生した。休みも取らず淡々と力仕事をこなせるゴーレムは特に、物流方面で大活躍することになる。
魔晶石でまた元気を取り戻し、健気に働くキュルルを見ながらオディールは静かにガッツポーズをした。
刹那、ゴーレムは眩しく黄金色に輝き、部屋は目も開けられないほどの光であふれた。
ズン!
ミラーナをかすめたゴーレムはそのまま壁に激突して、閃光を放ちながらゴロゴロと転がっていく。
一同は固唾を飲んで徐々に輝きが収まっていく卵型の石を見守った。
これでダメだとどうしたらいいか分からない。ミラーナは両手を組んで泣きそうな顔で祈る。
光が収まっていくゴーレム……。
室内にはパラパラと何かのかけらが落ちてくるかすかな音が響く。
直後、目が金色にキラっと輝いた。
キュイッ、キュイッ!
卵型ゴーレム【キュルル】は、鳴き声を立てると静かに立ち上がり、腕を使って器用にくるりと回ってミラーナを見つめた。
「キュルル、おいで」
ミラーナはニッコリと笑うとそっと手を伸ばす。
そろそろとミラーナの前まで来たキュルルは、下側の腕をついてミラーナに傅くと、左手を胸に、右手をうやうやしくミラーナに差し出した。
ふぅっと大きく息をついたミラーナは、ニッコリと笑いながら柔らかく白いキュルルの手を取る。
「最初から名付けておけば良かったわね。ごめんね」
そう謝るミラーナに、キュルルは『キュイィィィ』と申し訳なさそうに鳴いた。
「良かった! 成功だ!」
オディールはパチパチと手を叩きながら新たな頼もしい仲間の誕生を祝う。これから大きく成長していく街には警備などの危険な仕事や力仕事がたくさん出てくる。それをゴーレムが担当してくれるならとても助かるのだ。
キュルルは辺りを見回すと、自分がぶちまけてしまった棚や家具を慌てて一つずつ元に戻していく。長い粘土の腕を巧みに使って器用に丁寧に戻していく様には、先ほどまでの猛牛のようなどう猛さなどかけらもなく、勤勉で繊細な働き者だった。
「お疲れ様! こいつ、自分がやったことわかってるんだね」
オディールはミラーナの手を取り、ねぎらいながら言った。
「そうみたいね。これならいろんな仕事を頼めるかもしれないわ」
ミラーナは甲斐甲斐しく働くクリーム色の卵型ゴーレムを見つめながら、優しく微笑んだ。
◇
しばらく元気に動いていたキュルルだったが、急に動きが緩慢になり、眼の輝きが消え、『キュー……』と、いいながら止まってしまった。
「あ、あれ? 壊れちゃった?」
オディールが恐る恐るキュルルをつついていると、レヴィアが腕を組んで言った。
「燃料切れじゃろう。このくらいのサイズのゴーレムは燃費悪いからのう」
「あ、じゃ、魔力をまた込めればいいの?」
「それじゃまたすぐ燃料切れになるぞ。魔晶石を使えばよかろう」
「魔晶石? あの、魔法のランプに入ってる……」
「そうじゃ、あれは光の魔晶石。魔晶石に込められた魔力が電池のように魔法を駆動し続けるのじゃ。ゴーレムなら土の魔晶石をボディに埋めておけばよかろう」
「おぉ! それなら動き続けられるんだね!」
オディールはニコニコしながらレヴィアに手のひらを差し出した。
「おい……、何じゃその手は?」
レヴィアは眉をひそめる。
「レヴィちゃんなら持ってるよね? 魔晶石」
レヴィアはギュッと目をつぶる。
「お主、土の魔晶石は貴重なんじゃぞ? 分かっとるのか?」
「知らないけど、レヴィちゃんたくさん持ってそう」
ニコニコと嬉しそうに言うオディール。
「土の魔晶石で大きいのとなると、それこそジャイアント・トレントとか倒さんと手に入らんのじゃ」
「あー、じゃ、今度一緒に倒しに行こう! だからそれまで貸して」
オディールは小首をかしげてニコッと笑いながら両手を出した。
「見つけるの大変なんじゃぞ……。ふぅ、お主には敵わんな。貸すだけじゃぞ」
レヴィアは大きくため息をつくと、空間を裂き、中から黄色に光る透明な丸い石を取り出す。
「おぉ……」「こ、これが魔晶石?」
二人は黄色に輝く鮮やかな煌めきに思わず見とれてしまう。
「輝きが無くなったら魔力充填が必要じゃ。聖水にでも漬けておけば一晩で満タンになろう」
「え? 漬けるだけでいいの?」
「聖気とは混じりけのない純粋な魔力のこと、それがたっぷり溶け込んだロッソの上質な聖水なら漬けるだけで充填されるじゃろ」
「それはいいね! じゃあ十個くらい貸して」
オディールはニコッと笑ってまた手を出した。
「じゅ、十個!?」
「まずは十体つくるんだよ。レヴィちゃんいっぱい持ってるでしょ? 借りるだけだからさぁ」
レヴィアは大きくため息をつくとジト目でオディールをにらむ。
「貸すだけじゃぞ? お主もちゃんとトレント倒すんじゃぞ?」
「分かってるってぇ!」
オディールはニコニコ笑いながらパンパンとレヴィアの肩を叩いた。
こうしてセント・フローレスティーナには頼もしいゴーレム部隊が誕生した。休みも取らず淡々と力仕事をこなせるゴーレムは特に、物流方面で大活躍することになる。
魔晶石でまた元気を取り戻し、健気に働くキュルルを見ながらオディールは静かにガッツポーズをした。