1度話さなくなった俺と音羽さんは学校でたくさん話すようになった。
そのおかげでまた噂されたり色々と大変だ。
特に莉南には問い詰められてる。
「翔夜くんっ!どういう関係なの?音羽って人と」
莉南の口調には音羽さんをバカにしてるような感じだった。
音羽さんと付き合ってることは隠しておいた方がいいだろう。
「友達だよ」
「本当のこと言ってよ!私翔夜くんの秘密知ってるんだから!」
秘密.....?
それは能力の事なのか?
「なんだよ?言えよ」
莉南は俺を睨みながら言った。
「翔夜くんは心が読めるんでしょ?聞いたんだからっ!」
は...?何で莉南が知ってんだよ。
誰かバラしたのか?
音羽さん?陽飛?その2人しか浮かばない。
誰なんだよ。
「え....?何で話さないの?まさかほんとなの?」
明らかに動揺してる莉南は俺に怯えていた。
"何この人、怖いんだけど。最悪今までのもわかってたの?気持ち悪い"
「じゃ、じゃあ翔夜くん!もう行くね〜!」
"もう話したくない。顔が良かったから近づいたけど最悪だったわ"
莉南は走り去っていった。
みんなそうだ。
俺の能力のことがわかった瞬間離れていくんだ。
父さんも友達もいなくなるんだ。
信じない方がいい。
どうせ傷つくのは俺なんだ。
あれ以来莉南は俺に近付かなくなった。
廊下で見かけても気まずそうに目を逸らし足早に去っていく。
でも、なぜ莉南は知っていたんだ?
どこで知ったんだろうか。
莉南と話したい。
「なぁ、ちょっといい?」
俺は花岡を呼び出した。
"なんなの?気持ち悪い"
「どうしたのぉ?話したいなんて珍しいね!」
思ってもないことを甘ったるい声で話す花岡。
「この前の話なんだけどあれどこで聞いた?」
「えっ?」
花岡は目を見開きびっくりしていた。
「元々噂になってたんだよ」
は?どういうことだよ。
「杉浦翔夜は言いたい事を言ってくれるって。それを本心で言ってないって事も」
心が見えるから普通に言ってしまっていた。
バレるなんて最悪だ。
「なるほどね、ありがとう。それじゃあ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!ねぇ、あれホントなの?」
そうだよな、聞いてくるよな。
「誰にも言わないって約束する」
花岡は真剣な眼差しで言った。
「あぁ本当だ。今まで黙ってて怖がらせてごめん」
"やっぱりそうだったんだ...."
「大丈夫。じゃあまたね!」
花岡は走って友達のところへ行った。
俺も友達のところへ行こう。
「なぁ、翔夜って本当に心が見えるのー?」
は?それどこから聞いたんだ?
俺の表情から戸惑っている事がわかった名前のわからない女子たちが言い直した。
「翔夜は心が見えるって聞いたんだけど」
何で知ってんだよ。
「それ、誰から聞いたの?」
「「翔夜!」」
気づいたら後ろに翔夜がいて。
「えと、掲示板に流れてて」
掲示板?なんだそれ。
「で、きみはどう思うの?」
「っ.....!」
翔夜は鋭く目の前にいる女の子を睨んでいた
「俺がもし心が見えていたらどう思う?」
「少し怖いと思う」
翔夜、わざわざ自分が傷つく質問すんなよ。
「じゃあ『心が見えるの?』って聞かれる俺の気持ちは?」
翔夜.....
あの時も今も思うけど翔夜は深く傷ついているんだ。
俺には理解できないほどに。
「ごめん。そうだよね、そんなわけないもんね」
違う。そんな言葉がほしいわけじゃないんだよ。翔夜は。
「そうだね」
「ごめんねっ!じゃあ!」
翔夜は悲しそうな顔だった。
俺も悲しくなる。
翔夜....
「気にしないで。花岡にも聞いたんだ。噂になってるらしい。多分これから色んな人に言われると思うから」
「翔夜、何かあったら話せよ」
曖昧な笑顔を浮かべた翔夜は「ありがとう」と言って帰っていった。
少し、いやとても心配だ。
それから翔夜に関していろんな事を聞かれた。
この前の女の子のように、本当に心が読めるのか。
小中学生の時、不登校で高校デビューしたのか。
父親と愛人の間にできた望まれない子供だったのか。
なぜそんな噂が流れてるのかわからないような事も聞かれたけど
『それは本人に直接聞け』って言ったら帰っていった。
こういう時俺は何て言えばいいんだろう。
勝手に肯定しても否定しても翔夜を困らせてしまう気がする。
でも翔夜に直接聞きに行かれても同じようになる気もする。
何が正解かわからなかった。
翔夜をこれ以上傷つけたくない。
最近杉浦くんに関する噂が流れている。
宮舘くんも言っていたけどある事ない事言われているらしい。
それでも杉浦くんは学校へ行って次々と質問してくる人たちに笑顔で対応してる。
私はすぐ学校に来られなくなったのに。
杉浦くんは強い。
だからといって傷ついていないわけがなかった。
きっと悲しんで苦しくてつらいと思う。
もっと理解されたくて認められたい。
ずっとそう思っているはずだ。
それなのに人の気持ちも考えないでのんきに話のネタにして笑ってる人たちがいて。
そんな人たちに怒ってるのに、ムカついてるのに何もできない自分に腹がたつ。
もっと強くなりたい。
ここのところずっと雨が降っている。
雨だとテンションが下がる。
でも私は天気関係なく気持ちが沈んでる。
杉浦くんはどうしたいんだろう。
否定したい?それとも認めたい?
このまま放置しておさまるのを待つ?
私はとりあえずやめてほしいと思う。
そっとしてほしい。
別に私に何かされてるわけでもないけど。
もう杉浦くんを傷つけてほしくない。
だって大好きだから。
「杉浦くんっ!」
彼はいつもより表情が暗くて笑顔も固かった。
眠れてないんだろう。疲れているんだろう。
「あぁ音羽さん。何か言われてない?」
なんでこんな時でも杉浦くんは心配してくれるんだろう。
「うん、大丈夫。杉浦くんは?」
「大丈夫だよ」
嘘だ。いつもの余裕がない。私に見せてくれる本当の笑顔じゃない。
「....本当のこと、言って?」
下を向いた彼の手は細かく震えていた。
「...大丈夫じゃ、ないっ....!悲しい、怖い...!」
杉浦くんは涙を流しながら私に本当のことを話してくれた。
「うん、そうだよね。怖いよね...!」
私でさえ腹がたったんだ。
張本人はもっと深くダメージを負うはずだ。
杉浦くんは嗚咽を漏らしながら私に抱きついてきた。
私は一生懸命杉浦くんの背中を安心させるようにさすっていた。
窓の外には雨雲の中、1本の光が差し込んでいた。
その後少し落ち着いた杉浦くんと話し合った結果
掲示板に匿名で書き込みをすることにした。
それは杉浦くんの噂に関するものを否定するもの。
これで事が収まってくれればいいけど。