王城へ戻る途中すねこすりたちが集まってきた。茜様は先に戻り、私はこの子たちを思いっきりなでまわした。「ほのか~もっとなでて~」とすり寄ってくるもふもふは、とにかくかわいくて癒やされる。
「穂香、楽しそうだね」
「あっ、青王様!一緒にもふもふしませんか?癒やされますよ~」
「おまえたち、わたしもなでていいかな?」
すねこすりたちは返事の代わりに青王様にすり寄って行った。
私たちはすねこすりたちと存分に遊び、みんながカカオの森へ帰るのを見送っていると、ふと目が合いそのまましばらく見つめ合ってしまった。
どうしよう、どんどん顔が熱くなっていくのがわかる。なんだかドキドキする...
すると青王様は「わたしは穂香をなでまわしたい...」なんてつぶやいた。
「はっ!?なに言ってるんですか!」
心臓がパンクしそうなほどドキドキして息が苦しい。青王様ってこんな冗談を言うような人だったっけ?
「もう!早く王城へ戻りましょう!」
「あ、いや...つい...すまなかった。そんなに怒らないでくれ」
私は聞こえないふりをして早足で王城へ戻り、何事もなかったような顔でダイニングへ入ると、すぐに瑠璃が声をかけてきた。
「穂香さん、どこ行ってたんですか?なんか顔が赤いですよ」
「茜様と星を眺めて、戻る途中ですねこすりたちと会ってね、思いっきりなでまわしてきたの」
「そ、そうですか...紅茶、淹れなおしますね」
「ハニーミルクティーにしてもらってもいい?」
「わかりました。少し甘めに淹れますね」
瑠璃が淹れるミルクティーは、ホッとする優しい甘さで心が落ち着く。
「明日お休みだから、青王様とちゃんとお話してみようかな...」そう思い、どこに行こうか考えた。静かでのんびりできるところってどこだろう?
「青王様、先ほどはすみませんでした。えっと、明日店はお休みなので、もしお時間があればお出かけしませんか?」
「え、あぁ大丈夫だよ。からかったりしてすまなかったね。いや、からかったわけではなくてその...穂香が...」
どんどん声が小さくなっていく青王様。半分ぐらいしか聞き取れなかった。
「え?」
「な、なんでもない。どこか行きたいところはあるかい?」
「この前の宇治公園もいいんですけど、糺の森をお散歩するのも気持ちがいいかなと思って。でも、ゆっくりお話ができればどこでもいいんです」
「それなら糺の森に行こうか。十時頃に迎えに行くから」
「はい、お待ちしてます」
瑠璃が残りのボンボンショコラを箱に詰めると、茜様がそれをうれしそうに持って白様と仲良く帰っていった。
「それではまた明日。おやすみなさい」
誉たちも帰らせたし、瑠璃も部屋へ戻ったので私も帰ろうとすると「やっぱり送っていこう」と青王様が声をかけてきた。
「ありがとうございました...はっ?!ち、ちょっ...!」
直接自室へ戻ったのが間違いだった。青王様は突然私をベッドに押し倒してきた。
すると、ペンダントと懐中時計が同時に光りはじめた。
「あっ、懐中時計が...すぐに瑠璃ちゃんが来ますよ」
ハッとした顔の青王様が私から離れるのとほぼ同時に瑠璃が飛び込んできた。
「穂香さん!大丈夫ですか!って、あれ?青王様?あっ、青王様もペンダントに呼ばれたんですよね」
瑠璃は部屋の中を見回し危険がないことを確認すると「よかった。特に被害はなさそうですし青王様がいればもう大丈夫ですね」と戻っていった。
「青王様!どうしてこんなこと!...青王様?」
ものすごく落ち込んだ様子でベッドの横に正座をしている。
「あの...すみません、大声出したりして」
「いや、まさかわたしのことをペンダントが危険だと判断するとは...」
「あぁ、たしかにペンダントも光ってましたよね。あっでも瑠璃ちゃんは青王様が先に来て解決したと思ったみたいなので、押し倒したことはバレてませんよ」
それでもまだ正座のままうなだれている。
「あの青王様、お茶淹れますからここでお話しませんか?少し待っていてくださいね」
お茶を持って部屋に戻ると、青王様はまだ正座のまま渋い顔をしている。
「まだそんな顔しているんですか?」
「本当に申し訳なかった...」
「とりあえずお茶をどうぞ。宇治緑茶とお茶請けの梅こんぶです」
青王様は梅こんぶを一つ口に入れ、お茶を飲んで一息つくと、私に頭を下げた。
「乱暴なことをしてすまなかった。穂香がわたしのことを好きだと言ってくれて、もう手放したくないという気持ちが抑えられなかった」
「あの、お願いですから頭を上げてください」
ゆっくり頭を上げ私を見つめる青王様の瞳が、少し潤んでいて悲しそうに見えた。
「私、青王様のことが好きなんだって気づいたけど、ただの人間がそんなこと言っても青王様を困らせてしまうだけだと思ったら、どうしても気持ちを伝えることができなくて...でもどこからか懐かしい声が聞こえてきて背中を押されたんです」
青王様は私をじっと見つめて聞いてくれている。
「青王様のことが大好きです。でもやっぱり不安で...だけど茜様がいろいろ教えてくださいました。青王様が受け入れてくださるなら、私は青王様と一緒にいたいです。お願いします。そばにいさせてください!」
大きく目を見開いたまま固まっていた青王様は、突然ひと筋の涙をこぼし私をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう、必ずしあわせにする。もう手放したりしない」
「青王様、ちょっと苦しいです...」
「あっ、すまない、つい力が入ってしまった」と私をゆっくり解放し、涙を拭って一度深呼吸をした。
「茜様のお話を聞いてちょっと気になったんですけど、京陽のカカオを使ってるとこちらの世界の人たちになにか影響があったりしますか?」
「それはないから安心していい。穂香は泉の水の話を聞いて気になったんだろうけど、あくまでも京陽国内で泉の水を飲むことでその力を得ることができるんだ。水はそのまま飲まなくても料理やお茶を淹れるときに使ってもいい。でも京陽から出たらそれはもうなんの力もないただの水。カカオも同様だよ」
「よかった。それならずっとあのカカオでチョコレートが作れますね」
青王様は私の頭をそっとなでながら「好きなだけ作るといい」と微笑んだ。
「わたしからも一つ話したいことがあるんだが、今日はもう休んで、明日糺の森で話そう」
「わかりました、十時に待っています。おやすみなさい」
青王様は小さくうなずくと私の頬に手をあて「穂香」とつぶやきそっと口づけをした。
「穂香、楽しそうだね」
「あっ、青王様!一緒にもふもふしませんか?癒やされますよ~」
「おまえたち、わたしもなでていいかな?」
すねこすりたちは返事の代わりに青王様にすり寄って行った。
私たちはすねこすりたちと存分に遊び、みんながカカオの森へ帰るのを見送っていると、ふと目が合いそのまましばらく見つめ合ってしまった。
どうしよう、どんどん顔が熱くなっていくのがわかる。なんだかドキドキする...
すると青王様は「わたしは穂香をなでまわしたい...」なんてつぶやいた。
「はっ!?なに言ってるんですか!」
心臓がパンクしそうなほどドキドキして息が苦しい。青王様ってこんな冗談を言うような人だったっけ?
「もう!早く王城へ戻りましょう!」
「あ、いや...つい...すまなかった。そんなに怒らないでくれ」
私は聞こえないふりをして早足で王城へ戻り、何事もなかったような顔でダイニングへ入ると、すぐに瑠璃が声をかけてきた。
「穂香さん、どこ行ってたんですか?なんか顔が赤いですよ」
「茜様と星を眺めて、戻る途中ですねこすりたちと会ってね、思いっきりなでまわしてきたの」
「そ、そうですか...紅茶、淹れなおしますね」
「ハニーミルクティーにしてもらってもいい?」
「わかりました。少し甘めに淹れますね」
瑠璃が淹れるミルクティーは、ホッとする優しい甘さで心が落ち着く。
「明日お休みだから、青王様とちゃんとお話してみようかな...」そう思い、どこに行こうか考えた。静かでのんびりできるところってどこだろう?
「青王様、先ほどはすみませんでした。えっと、明日店はお休みなので、もしお時間があればお出かけしませんか?」
「え、あぁ大丈夫だよ。からかったりしてすまなかったね。いや、からかったわけではなくてその...穂香が...」
どんどん声が小さくなっていく青王様。半分ぐらいしか聞き取れなかった。
「え?」
「な、なんでもない。どこか行きたいところはあるかい?」
「この前の宇治公園もいいんですけど、糺の森をお散歩するのも気持ちがいいかなと思って。でも、ゆっくりお話ができればどこでもいいんです」
「それなら糺の森に行こうか。十時頃に迎えに行くから」
「はい、お待ちしてます」
瑠璃が残りのボンボンショコラを箱に詰めると、茜様がそれをうれしそうに持って白様と仲良く帰っていった。
「それではまた明日。おやすみなさい」
誉たちも帰らせたし、瑠璃も部屋へ戻ったので私も帰ろうとすると「やっぱり送っていこう」と青王様が声をかけてきた。
「ありがとうございました...はっ?!ち、ちょっ...!」
直接自室へ戻ったのが間違いだった。青王様は突然私をベッドに押し倒してきた。
すると、ペンダントと懐中時計が同時に光りはじめた。
「あっ、懐中時計が...すぐに瑠璃ちゃんが来ますよ」
ハッとした顔の青王様が私から離れるのとほぼ同時に瑠璃が飛び込んできた。
「穂香さん!大丈夫ですか!って、あれ?青王様?あっ、青王様もペンダントに呼ばれたんですよね」
瑠璃は部屋の中を見回し危険がないことを確認すると「よかった。特に被害はなさそうですし青王様がいればもう大丈夫ですね」と戻っていった。
「青王様!どうしてこんなこと!...青王様?」
ものすごく落ち込んだ様子でベッドの横に正座をしている。
「あの...すみません、大声出したりして」
「いや、まさかわたしのことをペンダントが危険だと判断するとは...」
「あぁ、たしかにペンダントも光ってましたよね。あっでも瑠璃ちゃんは青王様が先に来て解決したと思ったみたいなので、押し倒したことはバレてませんよ」
それでもまだ正座のままうなだれている。
「あの青王様、お茶淹れますからここでお話しませんか?少し待っていてくださいね」
お茶を持って部屋に戻ると、青王様はまだ正座のまま渋い顔をしている。
「まだそんな顔しているんですか?」
「本当に申し訳なかった...」
「とりあえずお茶をどうぞ。宇治緑茶とお茶請けの梅こんぶです」
青王様は梅こんぶを一つ口に入れ、お茶を飲んで一息つくと、私に頭を下げた。
「乱暴なことをしてすまなかった。穂香がわたしのことを好きだと言ってくれて、もう手放したくないという気持ちが抑えられなかった」
「あの、お願いですから頭を上げてください」
ゆっくり頭を上げ私を見つめる青王様の瞳が、少し潤んでいて悲しそうに見えた。
「私、青王様のことが好きなんだって気づいたけど、ただの人間がそんなこと言っても青王様を困らせてしまうだけだと思ったら、どうしても気持ちを伝えることができなくて...でもどこからか懐かしい声が聞こえてきて背中を押されたんです」
青王様は私をじっと見つめて聞いてくれている。
「青王様のことが大好きです。でもやっぱり不安で...だけど茜様がいろいろ教えてくださいました。青王様が受け入れてくださるなら、私は青王様と一緒にいたいです。お願いします。そばにいさせてください!」
大きく目を見開いたまま固まっていた青王様は、突然ひと筋の涙をこぼし私をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう、必ずしあわせにする。もう手放したりしない」
「青王様、ちょっと苦しいです...」
「あっ、すまない、つい力が入ってしまった」と私をゆっくり解放し、涙を拭って一度深呼吸をした。
「茜様のお話を聞いてちょっと気になったんですけど、京陽のカカオを使ってるとこちらの世界の人たちになにか影響があったりしますか?」
「それはないから安心していい。穂香は泉の水の話を聞いて気になったんだろうけど、あくまでも京陽国内で泉の水を飲むことでその力を得ることができるんだ。水はそのまま飲まなくても料理やお茶を淹れるときに使ってもいい。でも京陽から出たらそれはもうなんの力もないただの水。カカオも同様だよ」
「よかった。それならずっとあのカカオでチョコレートが作れますね」
青王様は私の頭をそっとなでながら「好きなだけ作るといい」と微笑んだ。
「わたしからも一つ話したいことがあるんだが、今日はもう休んで、明日糺の森で話そう」
「わかりました、十時に待っています。おやすみなさい」
青王様は小さくうなずくと私の頬に手をあて「穂香」とつぶやきそっと口づけをした。