「青王様、おはようございます」
「おはよう、よく来たね。それではさっそく商店街に行こうか」
「わたしはお留守番していますね」
「え、瑠璃ちゃんは行かないの?なんで?」
「ふふ、お二人でのんびり楽しんできてくださいね。あ、これ持って行ってください」
瑠璃はお茶が入った水筒二つとクッキーを差し出し「いってらっしゃーい」と手を振る。
王城を出て、カカオの森の中を歩き始めてそろそろ一時間ほど経つ。
「ふぅ...青王様、カカオの森ってどれだけ広いんですか?」
「出口まであと一時間はかからないと思うけれど、ちょっと疲れたかな?少し休憩しようか」
あと一時間はかからないって...それってまだ一時間近くかかるってことよね。
「はぁ、冷たくておいしい」
瑠璃が冷たいお茶とおやつを持たせてくれた理由がよくわかった。
「お手伝いにきてくれる妖たちは、いつもこんなに歩いてきているんですか?」
「いや。それぞれ飛ぶことができたり走るのが速かったり、中には瞬間移動ができる妖もいる。わたしだって飛ぶことも瞬間移動もできる。穂香だって懐中時計を使えば移動できるだろう」
「そ、それならどうして今日は歩いて移動しているんですか?瞬間移動すればいいのに」
「瞬間移動はできるけど、ちょっと苦手でかなりの力を使ってしまうんだ。それに、せっかく穂香と...」
青王様はもごもごとどんどん声が小さくなっていく。それにちょっと耳が赤いような...
「それなら懐中時計でもいいのに。商店街って言えば行けるんですよね?」
「まぁそれはそうなんだが...せっかくだから森の中をのんびり散歩するのもいいじゃないか」
「わかりました。そういえばたまに妖を見かけますけど、ここは王城の敷地の中なんですよね?」
「そうだよ。でもみんながゆっくり過ごせるように解放しているんだ。さて、そろそろ行こうか」
カラフルなカカオポットを眺めながら歩いていると、高いレンガの塀が見えてきた。よく見ると大きな鉄の門があり、門番らしき妖が数人立っている。
こんなに広い森だけどちゃんと全体が塀で囲まれているらしい。
門番の一人が「青王様、いってらっしゃいませ!そちらのお嬢さんもお気をつけて」とお見送りをしてくれる。
そういえばいつも護衛とか誰も一緒じゃないけど、青王様って王様なのに普段から一人で出歩いているのかな...
「うわぁ、賑わっていますね!」
「ここはいつも活気があって、見て歩くだけで楽しいんだよ」
「あれ?なんだかあっちこっちに井戸がありますね」
「京陽は綺麗な水が豊富に湧いているんだ。井戸は自由に使い放題だよ」
確かにみんな鍋や桶に水を汲んでいる。水が豊富って…そういえば青王様は雨を操ってカカオを守ってくれているけれど、
「青王様は何の妖なんですか?まさかカッパではないですよね...」
「カッパではないけど水にまつわる妖だよ」
カッパじゃないけど水関係...なんだろう?
「まぁそのうちわかるよ」
青王様はいつになってもなにも教えてくれない。そんなに言いづらい秘密があるんだろうか。
「え?きゃー!」
「穂香!!」
お店を覗いたりキョロキョロしながら歩いていると、突然なにかに腕を掴まれ細い路地に引き込まれてしまった。
あんなに賑やかだったのに、ここはなにも音がしない真っ白な空間。なにが起きているのかわからずただボーッと立ち尽くしていると、目の前に「ボッ」と黄色い炎が現れた。
「っ...!」
恐怖で声も出せない。「青王様!助けて!」と心の中で叫ぶ。きっとペンダントが私の居場所を教えてくれているはず。
すると黄色い炎は人の形に姿を変えた。もふもふの耳と尻尾がついているけど...あれは…狐?
「人間の女。俺の嫁になれ」
「は?!え...あ、あの...」
「俺さ、人間の世界に行きたいんだよ。でも自分の力では行けなくてさ。なにか手段はないかと思ってたら森の中でおまえを見つけたんだ。人間のおまえを嫁にすればずっと向こうにいられるだろ」
「早く連れて行け」と腕を引っ張られ、もうどうしたらいいのかわからない。
「青王様早く来て!」と心の中で叫びながら必死に抵抗するけど、どうしても振りほどくことができない。青王様、早く助けて...
「おはよう、よく来たね。それではさっそく商店街に行こうか」
「わたしはお留守番していますね」
「え、瑠璃ちゃんは行かないの?なんで?」
「ふふ、お二人でのんびり楽しんできてくださいね。あ、これ持って行ってください」
瑠璃はお茶が入った水筒二つとクッキーを差し出し「いってらっしゃーい」と手を振る。
王城を出て、カカオの森の中を歩き始めてそろそろ一時間ほど経つ。
「ふぅ...青王様、カカオの森ってどれだけ広いんですか?」
「出口まであと一時間はかからないと思うけれど、ちょっと疲れたかな?少し休憩しようか」
あと一時間はかからないって...それってまだ一時間近くかかるってことよね。
「はぁ、冷たくておいしい」
瑠璃が冷たいお茶とおやつを持たせてくれた理由がよくわかった。
「お手伝いにきてくれる妖たちは、いつもこんなに歩いてきているんですか?」
「いや。それぞれ飛ぶことができたり走るのが速かったり、中には瞬間移動ができる妖もいる。わたしだって飛ぶことも瞬間移動もできる。穂香だって懐中時計を使えば移動できるだろう」
「そ、それならどうして今日は歩いて移動しているんですか?瞬間移動すればいいのに」
「瞬間移動はできるけど、ちょっと苦手でかなりの力を使ってしまうんだ。それに、せっかく穂香と...」
青王様はもごもごとどんどん声が小さくなっていく。それにちょっと耳が赤いような...
「それなら懐中時計でもいいのに。商店街って言えば行けるんですよね?」
「まぁそれはそうなんだが...せっかくだから森の中をのんびり散歩するのもいいじゃないか」
「わかりました。そういえばたまに妖を見かけますけど、ここは王城の敷地の中なんですよね?」
「そうだよ。でもみんながゆっくり過ごせるように解放しているんだ。さて、そろそろ行こうか」
カラフルなカカオポットを眺めながら歩いていると、高いレンガの塀が見えてきた。よく見ると大きな鉄の門があり、門番らしき妖が数人立っている。
こんなに広い森だけどちゃんと全体が塀で囲まれているらしい。
門番の一人が「青王様、いってらっしゃいませ!そちらのお嬢さんもお気をつけて」とお見送りをしてくれる。
そういえばいつも護衛とか誰も一緒じゃないけど、青王様って王様なのに普段から一人で出歩いているのかな...
「うわぁ、賑わっていますね!」
「ここはいつも活気があって、見て歩くだけで楽しいんだよ」
「あれ?なんだかあっちこっちに井戸がありますね」
「京陽は綺麗な水が豊富に湧いているんだ。井戸は自由に使い放題だよ」
確かにみんな鍋や桶に水を汲んでいる。水が豊富って…そういえば青王様は雨を操ってカカオを守ってくれているけれど、
「青王様は何の妖なんですか?まさかカッパではないですよね...」
「カッパではないけど水にまつわる妖だよ」
カッパじゃないけど水関係...なんだろう?
「まぁそのうちわかるよ」
青王様はいつになってもなにも教えてくれない。そんなに言いづらい秘密があるんだろうか。
「え?きゃー!」
「穂香!!」
お店を覗いたりキョロキョロしながら歩いていると、突然なにかに腕を掴まれ細い路地に引き込まれてしまった。
あんなに賑やかだったのに、ここはなにも音がしない真っ白な空間。なにが起きているのかわからずただボーッと立ち尽くしていると、目の前に「ボッ」と黄色い炎が現れた。
「っ...!」
恐怖で声も出せない。「青王様!助けて!」と心の中で叫ぶ。きっとペンダントが私の居場所を教えてくれているはず。
すると黄色い炎は人の形に姿を変えた。もふもふの耳と尻尾がついているけど...あれは…狐?
「人間の女。俺の嫁になれ」
「は?!え...あ、あの...」
「俺さ、人間の世界に行きたいんだよ。でも自分の力では行けなくてさ。なにか手段はないかと思ってたら森の中でおまえを見つけたんだ。人間のおまえを嫁にすればずっと向こうにいられるだろ」
「早く連れて行け」と腕を引っ張られ、もうどうしたらいいのかわからない。
「青王様早く来て!」と心の中で叫びながら必死に抵抗するけど、どうしても振りほどくことができない。青王様、早く助けて...