午後からすぐに張り切ってディナーの準備を始めた。久しぶりにフランス料理に挑戦した。
6時に山内さんが赤白2本のワインとケーキを持って部屋を訪ねて来てくれた。もうダイニングキッチンのテーブルにはすでに料理が何皿か並んでいる。
「今日はフランス料理にしてみました。フルコースとはいかないのですが、ホテルで腕が上がったか食べてみてください」
赤ワインをそれぞれのグラスに注いで乾杯をする。
こうして二人でお酒を飲めるようになったとしみじみ思う。年が経ったということだ。二人が出会ってもう丸4年になる。
まずはアペタイザーから食べてみてもらう。味付けに工夫した。私も食べている。
「おいしい、彼の指導か?」
「そうですが」
「ごめん、また、思い出させることを言ってしまって」
「気にしないでください。もう私は自分の過去を客観的にみられるようになっていますから」
「そうか、未希も大人になっていたんだな。俺は未希をまだ高校生としか思っていないのかもしれない。未希にいろいろと偉そうなことを言っているが、俺の方が未希を大人の女性としてみていないのかもしれない」
食べ終わると今度はコンソメスープを皿に注いであげる。
「味付けに深みがある。学校に行っていた時よりも格段においしい」
「彼の料理はもっと美味しいんです。だから若くしてチーフになっていました。私はあの領域に達することはできないと思いました」
「料理も芸術も仕事も才能があるかどうかが重要だ。持って生まれた天性には努力してもかなわないところがある。俺は人付き合いが下手だと思っていたが、意外とうまくできることが分かった。だから次長になれたと思っている。何事もやってみないと才能があるかどうかなんて分からない」
「私は彼ほどの才能がないのが分かったので、今の社員食堂の仕事を選びました」
「それが良かったかもしれない、未希には決断力があるから感心する。俺は優柔不断なところがある。気配りのし過ぎかな。A型の特徴だ」
「山内さんはA型ですか、私はO型です」
「やっぱりそうか。俺は血液型による性格は誰にでも当てはまるとは言わないが、そういう傾向はあると思っている。O型は決断力がある。だからリーダーシップがとれる」
「私にはリーダーシップなんてとても」
「B型は芸術家タイプで創造力や企画力が優れていると思う。でも気まぐれで自分本位で気配りができない。これは会社での俺の経験からだけど」
「当たっているかもしれません。彼はB型でした。料理人としては才能がありましたが、気まぐれなところがあって、人の気持ちなど考えないところもありました」
「仕事をするなら、上司と部下はA型とB型、O型とA型、A型とA型の組み合わせが向いていると思う。言って悪いが、B型とO型は合わないと思う。気配りがどちらもできないから」
「夫婦もそうかもしれません。B型とO型は合いませんでした。A型は誰とでも合うんですか?」
「A型は几帳面で気配りができる。だから誰とでもなんとかやっていける。A型にはA型が無難で一番いいのかもしれないが、面白みがない。A型とB型、A型とO型がお互いを補い合って、良いと思う」
「私たちはいい組み合せなのですか?」
「そう思いたいが、信じる、信じないは未希の自由だ」
メインはフィレステーキにした。工夫したソースはすでにできていて、肉を焼くだけになっていた。
「柔らかくておいしい。ソースも良くできている。赤ワインと良く合う。料理が上手くなって、調理師を勧めてよかった。仕事でも家庭でも役に立つ」
「この仕事は食べることに困らないのに気が付きました。職場では賄いがあるし、残り物も貰って来られる。食費が安上がりです。職場に慣れてきたので、夕食は自炊を始めました。ひとり分作るのも二人分作るのも手数は同じです。帰りに夕食を食べに来ませんか?」
「未希のこんな美味しい料理が食べられるのなら喜んで来たいけど、俺の帰りは遅い、早くて8時頃だ。迷惑がかかる」
「私も帰って一休みしてから作るので、そのくらいの時間の方が、余裕があって楽です。お弁当ばかりでは身体によくありませんから」
「できれば甘えたいが、未希の負担も増えるだろうから、1食千円でどうだろう。まるで食堂のようで気を悪くしないでほしいけど」
「千円ですか?」
「少ないか?」
「私が初めてここに来た時、山内さんは食事代といって毎日千円くれましたね。好きなものが買えてとても嬉しかった。それにお釣りもくれて、財布もくれた。あの財布、今も大切にしています。千円、喜んでいただきます。それなら気兼ねなく食べてもらえるから」
デザートには山内さんが下で買ってきたクリスマスケーキを食べた。
「今日は24日でまだ値引きをしていなかった。値引きしてもらったケーキを食事代わりに食べたこともあったね」
「昨日のことのようです」
「月日の過ぎるのは早い、一日一日を大切にしないとね」
帰り際、私は玄関で山内さんに抱きついた。ずっとここにいてほしいと言う意思表示のつもりだった。
山内さんは私を強く抱き締めてキスをしてくれた。ケーキの甘い味がした。メリークリスマス!
6時に山内さんが赤白2本のワインとケーキを持って部屋を訪ねて来てくれた。もうダイニングキッチンのテーブルにはすでに料理が何皿か並んでいる。
「今日はフランス料理にしてみました。フルコースとはいかないのですが、ホテルで腕が上がったか食べてみてください」
赤ワインをそれぞれのグラスに注いで乾杯をする。
こうして二人でお酒を飲めるようになったとしみじみ思う。年が経ったということだ。二人が出会ってもう丸4年になる。
まずはアペタイザーから食べてみてもらう。味付けに工夫した。私も食べている。
「おいしい、彼の指導か?」
「そうですが」
「ごめん、また、思い出させることを言ってしまって」
「気にしないでください。もう私は自分の過去を客観的にみられるようになっていますから」
「そうか、未希も大人になっていたんだな。俺は未希をまだ高校生としか思っていないのかもしれない。未希にいろいろと偉そうなことを言っているが、俺の方が未希を大人の女性としてみていないのかもしれない」
食べ終わると今度はコンソメスープを皿に注いであげる。
「味付けに深みがある。学校に行っていた時よりも格段においしい」
「彼の料理はもっと美味しいんです。だから若くしてチーフになっていました。私はあの領域に達することはできないと思いました」
「料理も芸術も仕事も才能があるかどうかが重要だ。持って生まれた天性には努力してもかなわないところがある。俺は人付き合いが下手だと思っていたが、意外とうまくできることが分かった。だから次長になれたと思っている。何事もやってみないと才能があるかどうかなんて分からない」
「私は彼ほどの才能がないのが分かったので、今の社員食堂の仕事を選びました」
「それが良かったかもしれない、未希には決断力があるから感心する。俺は優柔不断なところがある。気配りのし過ぎかな。A型の特徴だ」
「山内さんはA型ですか、私はO型です」
「やっぱりそうか。俺は血液型による性格は誰にでも当てはまるとは言わないが、そういう傾向はあると思っている。O型は決断力がある。だからリーダーシップがとれる」
「私にはリーダーシップなんてとても」
「B型は芸術家タイプで創造力や企画力が優れていると思う。でも気まぐれで自分本位で気配りができない。これは会社での俺の経験からだけど」
「当たっているかもしれません。彼はB型でした。料理人としては才能がありましたが、気まぐれなところがあって、人の気持ちなど考えないところもありました」
「仕事をするなら、上司と部下はA型とB型、O型とA型、A型とA型の組み合わせが向いていると思う。言って悪いが、B型とO型は合わないと思う。気配りがどちらもできないから」
「夫婦もそうかもしれません。B型とO型は合いませんでした。A型は誰とでも合うんですか?」
「A型は几帳面で気配りができる。だから誰とでもなんとかやっていける。A型にはA型が無難で一番いいのかもしれないが、面白みがない。A型とB型、A型とO型がお互いを補い合って、良いと思う」
「私たちはいい組み合せなのですか?」
「そう思いたいが、信じる、信じないは未希の自由だ」
メインはフィレステーキにした。工夫したソースはすでにできていて、肉を焼くだけになっていた。
「柔らかくておいしい。ソースも良くできている。赤ワインと良く合う。料理が上手くなって、調理師を勧めてよかった。仕事でも家庭でも役に立つ」
「この仕事は食べることに困らないのに気が付きました。職場では賄いがあるし、残り物も貰って来られる。食費が安上がりです。職場に慣れてきたので、夕食は自炊を始めました。ひとり分作るのも二人分作るのも手数は同じです。帰りに夕食を食べに来ませんか?」
「未希のこんな美味しい料理が食べられるのなら喜んで来たいけど、俺の帰りは遅い、早くて8時頃だ。迷惑がかかる」
「私も帰って一休みしてから作るので、そのくらいの時間の方が、余裕があって楽です。お弁当ばかりでは身体によくありませんから」
「できれば甘えたいが、未希の負担も増えるだろうから、1食千円でどうだろう。まるで食堂のようで気を悪くしないでほしいけど」
「千円ですか?」
「少ないか?」
「私が初めてここに来た時、山内さんは食事代といって毎日千円くれましたね。好きなものが買えてとても嬉しかった。それにお釣りもくれて、財布もくれた。あの財布、今も大切にしています。千円、喜んでいただきます。それなら気兼ねなく食べてもらえるから」
デザートには山内さんが下で買ってきたクリスマスケーキを食べた。
「今日は24日でまだ値引きをしていなかった。値引きしてもらったケーキを食事代わりに食べたこともあったね」
「昨日のことのようです」
「月日の過ぎるのは早い、一日一日を大切にしないとね」
帰り際、私は玄関で山内さんに抱きついた。ずっとここにいてほしいと言う意思表示のつもりだった。
山内さんは私を強く抱き締めてキスをしてくれた。ケーキの甘い味がした。メリークリスマス!