おじさんは6時にレストランの予約を入れてくれた。それまで時間があるので私は自分の部屋を整理するために戻った。
6時少し前におじさんは私の部屋に寄ってくれて、一緒に出掛けた。レストランは最後に来た時と全く変わっていなかった。そして最後の時に座った同じ席に案内された。
私はもう21歳になっているので私にもワインを注文してもらった。そして乾杯した。
本当は乾杯なんてこんな状況ではできないはずだけど、二人とも乾杯したかった。それほど二人は再会が嬉しかったのだと思う。すぐに料理が運ばれてくる。
「自立はいいけど、これからどうする?」
「すぐに離婚します」
「離婚届はどうする。彼は納得して署名してくれるのか?」
「分かりません」
「以前もこういうことがあって、別れると言うともうしないと言ってくれましたが、変わりませんでした」
「もう諦めた?」
「決めましたから」
「次の週末にでも俺が行って話をつけて来てやろうか?」
「また、彼と会うと同じ事を繰り返すので、できればお願いします」
「未希の荷物も引き取らなければならないしね」
「家具などはどうでもいいですが、衣類など持って来たいものはあります」
「少し考えさせてくれ。仕事上、弁護士さんとも付き合いがあるから、それとなく、離婚手続きについて聞いてみてあげる。しばらくは未希から彼に連絡を取らない方が良い」
「携帯に留守電やメールが入っていますが、無視しています。いずれ携帯も変えようと思っています」
「仕事はどうする?」
「今のホテルは辞めようと思います。もう、事務には辞めると言ってあります。彼が同じホテルに勤めていますので、もう行きません」
「どうして彼と結婚したのか、それとなぜこういうことになったのか、良ければ聞かせてくれないか?」
私は彼と結婚に至るまでと結婚生活が破たんするまでを淡々と話した。おじさんは黙って聞いてくれた。
「未希の話は分かった。俺は結婚したことはないが、夫婦って互いの短所を認めて補い助け合って生きていかなければならないと思っている。彼だけが悪い訳ではないと思う。未希も至らない点があったのだと思う」
私はおじさんの言っていることが痛いほど分かったのでただ頷くしかなかった。
「私はおじさんとしか生活したことがなかったから、どうしてよいか分からなかった。おじさんは優しくて、私が学校やアルバイトで疲れて家事ができなくても代わりにしてくれたし、何も言わなかった」
「未希が可愛かったから大事にしたんだ。寝る時以外はね」
「私は男の人は皆そうだと思っていたから、彼が怒るのがなぜだか分からなかった」
「こうなったのは俺にも責任があるということか? でも、こうなったからにはもう元に戻してはやれない。残念だけど別れるしかないだろう」
「私はもう無理だと思っていますから、別れる手伝いをしてください」
「未希、仕事はどうするんだ?」
「ホテルの有給休暇を消化しているところです。明日から仕事を探します。ハローワークへ行って」
「そうか、いい仕事が見つかるといいな。お金は大丈夫か?」
「1か月くらいは大丈夫だと思います」
「そうか、困ったら相談してくれ。お金を貸してあげるから。今度は身体で返せ! なんて言わないから、きちんと借用書を書いてもらって、必ず返してもらうよ」
「ありがとう、困ったらそうさせてください」
おじさんは二人で楽しく食べるつもりだったに違いない。でも私の話を聞きたいと言うから話した。
おじさんには不愉快な話だったと思う。でもおじさんは私の今までの状況が気になって仕方ないようだった。
私も話を聞いてもらってほっとした。せっかくの食事が楽しくなくなって申し訳ない気持ちでいっぱいになる。私もおじさんに別れてからどうしていたのかを聞いた。
私があんなに早く結婚するとは思ってもみなかったので、非常に驚いたが、自分の手の届かない遠いところへ行ってしまったと諦めがついたと言っていた。
一方では圧し掛かっていたものが取り除かれたようにほっとして気が楽になったとも言っていた。
それからは仕事に没頭していたそうだ。そのかいあってか、4月には次長に昇進させてもらい、また、身体も元に戻ったと嬉しそうに話していた。
おじさんは別れたときよりもずっと温和で自信に満ちて、また、明るくなっていた。それは身体が元に戻ったこともきっとあると思う。
そして、私を見つめる目には優しさがみなぎっていた。私のことをずっと思っていてくれたと分かって嬉しかった。
別れる前、おじさんは私に悪いことをしたと悔いていたけど、私も本当におじさんに悪いことをした。
食事を終えて、二人で手を繋いで歩いてアパートまで帰ってきた。おじさんは私を3階の部屋まで送るとすぐに自分の部屋に戻って行った。
6時少し前におじさんは私の部屋に寄ってくれて、一緒に出掛けた。レストランは最後に来た時と全く変わっていなかった。そして最後の時に座った同じ席に案内された。
私はもう21歳になっているので私にもワインを注文してもらった。そして乾杯した。
本当は乾杯なんてこんな状況ではできないはずだけど、二人とも乾杯したかった。それほど二人は再会が嬉しかったのだと思う。すぐに料理が運ばれてくる。
「自立はいいけど、これからどうする?」
「すぐに離婚します」
「離婚届はどうする。彼は納得して署名してくれるのか?」
「分かりません」
「以前もこういうことがあって、別れると言うともうしないと言ってくれましたが、変わりませんでした」
「もう諦めた?」
「決めましたから」
「次の週末にでも俺が行って話をつけて来てやろうか?」
「また、彼と会うと同じ事を繰り返すので、できればお願いします」
「未希の荷物も引き取らなければならないしね」
「家具などはどうでもいいですが、衣類など持って来たいものはあります」
「少し考えさせてくれ。仕事上、弁護士さんとも付き合いがあるから、それとなく、離婚手続きについて聞いてみてあげる。しばらくは未希から彼に連絡を取らない方が良い」
「携帯に留守電やメールが入っていますが、無視しています。いずれ携帯も変えようと思っています」
「仕事はどうする?」
「今のホテルは辞めようと思います。もう、事務には辞めると言ってあります。彼が同じホテルに勤めていますので、もう行きません」
「どうして彼と結婚したのか、それとなぜこういうことになったのか、良ければ聞かせてくれないか?」
私は彼と結婚に至るまでと結婚生活が破たんするまでを淡々と話した。おじさんは黙って聞いてくれた。
「未希の話は分かった。俺は結婚したことはないが、夫婦って互いの短所を認めて補い助け合って生きていかなければならないと思っている。彼だけが悪い訳ではないと思う。未希も至らない点があったのだと思う」
私はおじさんの言っていることが痛いほど分かったのでただ頷くしかなかった。
「私はおじさんとしか生活したことがなかったから、どうしてよいか分からなかった。おじさんは優しくて、私が学校やアルバイトで疲れて家事ができなくても代わりにしてくれたし、何も言わなかった」
「未希が可愛かったから大事にしたんだ。寝る時以外はね」
「私は男の人は皆そうだと思っていたから、彼が怒るのがなぜだか分からなかった」
「こうなったのは俺にも責任があるということか? でも、こうなったからにはもう元に戻してはやれない。残念だけど別れるしかないだろう」
「私はもう無理だと思っていますから、別れる手伝いをしてください」
「未希、仕事はどうするんだ?」
「ホテルの有給休暇を消化しているところです。明日から仕事を探します。ハローワークへ行って」
「そうか、いい仕事が見つかるといいな。お金は大丈夫か?」
「1か月くらいは大丈夫だと思います」
「そうか、困ったら相談してくれ。お金を貸してあげるから。今度は身体で返せ! なんて言わないから、きちんと借用書を書いてもらって、必ず返してもらうよ」
「ありがとう、困ったらそうさせてください」
おじさんは二人で楽しく食べるつもりだったに違いない。でも私の話を聞きたいと言うから話した。
おじさんには不愉快な話だったと思う。でもおじさんは私の今までの状況が気になって仕方ないようだった。
私も話を聞いてもらってほっとした。せっかくの食事が楽しくなくなって申し訳ない気持ちでいっぱいになる。私もおじさんに別れてからどうしていたのかを聞いた。
私があんなに早く結婚するとは思ってもみなかったので、非常に驚いたが、自分の手の届かない遠いところへ行ってしまったと諦めがついたと言っていた。
一方では圧し掛かっていたものが取り除かれたようにほっとして気が楽になったとも言っていた。
それからは仕事に没頭していたそうだ。そのかいあってか、4月には次長に昇進させてもらい、また、身体も元に戻ったと嬉しそうに話していた。
おじさんは別れたときよりもずっと温和で自信に満ちて、また、明るくなっていた。それは身体が元に戻ったこともきっとあると思う。
そして、私を見つめる目には優しさがみなぎっていた。私のことをずっと思っていてくれたと分かって嬉しかった。
別れる前、おじさんは私に悪いことをしたと悔いていたけど、私も本当におじさんに悪いことをした。
食事を終えて、二人で手を繋いで歩いてアパートまで帰ってきた。おじさんは私を3階の部屋まで送るとすぐに自分の部屋に戻って行った。