月曜日、今日から企画開発室勤務。初日から遅刻しないように、いつもより早めに、アパートを出たので、8時20分にはフロアーに着いた。企画開発室は総務部とは反対側のフロアーの端にある。
企画開発室の中に入るのは初めてだった。4つの島(グループ)があるみたい。きょろきょろしていると一番端の小さな島に座っている岸辺さんが手招きしている。
「おはようございます。今日からお世話になります。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく。来てもらえてよかった」
「指名していただいたみたいですが、お役に立てますか?」
「横山さんなら大丈夫だと思ったから。ただ、指名したのは内緒にしておいて、何かとまずいから」
「分かりました」
岸辺さんのグループの席は企画開発室の一番端にあり、2人に指示が出しやすいように、岸辺さんの右前が部下の吉本さん、左前が私の席とコの字型になっていた。私専用のパソコンも1台、机の上に用意されていた。
そうこうしていると、吉本さんが出社して席に着いた。入社2年目とか、おそらく私と同い年のはず。
「吉本君、こちらが先週話していた横山さん、今日から僕のアシスタントに来てもらった」
「よろしくお願いします」
「よろしく、総務部にいたのかな、見かけたことがあるけど」
「そうです。私は派遣社員で総務部にいました」
「吉本君に言っておくけど、僕のアシスタントに来てもらったので、横山さんに仕事を頼みたいときは僕を通してくれ、いいね。横山さんもいいね。吉本君の仕事をするときは僕の許可を得てくれ」
岸辺さんは私に気を使ってくれている。岸辺さんの前では吉本さんと対等な立場にしておいてくれる。気遣いのできる人だ。
これで、吉本さんに仕事を頼まれることなく、岸辺さんの仕事に専念できる。総務部では何人もの人の小間使いだったけど、それが仕事だった。
9時になったので、岸辺さんはまず私を室長に紹介してくれた。
「室長、総務部から来てくれた横山さんです」
「室長の竹本です。岸辺君のアシスタントをよろしくお願いします」
「できるだけがんばります。よろしくお願いします」
室長は私を見て不思議そうな顔をしていた。きっとなぜ岸辺さんが私を指名したのだろうと考えていたのだと思う。
それから、企画開発室のメンバーに紹介してくれた。大きなチームがほかに3つあるので、それぞれのリーダーの席でチーム全員に紹介された。
私を知っていて手で合図する顔見知りの女子社員もいたが、大概は型通りの挨拶をするだけ。企画開発室の女子社員は手で合図してくれた派遣の子が一人いるが、他は全員大学卒の正社員で仕事ができそうな雰囲気のひとばかり。
独身の男性社員も何人かいるようだが、私には全く無関心だった。それというのも、私の服装はいうまでもなくいつものようにとても地味。新しい職場に変わったので、今日は気を使って、まるでリクルートスタイルになっている。まあ、その方が好都合だけど。
挨拶を終えて二人で席に戻る。吉本さんは席にいた。
「今日、仕事が終わったら、横山さんの歓迎会をしたいけど、二人の都合はどう? もちろん、費用は僕が負担するから」
「わざわざ私のために申し訳ありません。私は大丈夫ですけど」
「今日は人と会う約束がありますが」
「吉本君、それは何時から?」
「7時です」
「それなら30分位付き合ってくれないか。今日を逃すともうできないから、場所は会社の近くのビアレストランにするから」
「30分位ならいいですよ」
「それじゃ、5時になったらすぐに3人で行って始めよう」
「それから、横山さん、今日10時から、新規のプロジェクトの事前打合せをするので、3人で一緒に出席してほしい。打合せの議論をメモに取って会議録にまとめてもらいたい」
「そんな仕事、私で大丈夫ですか」
「大丈夫、僕もメモを取るから。そのメモもあとで渡すから、まとめてくれればよい」
「分かりました」
事前打合せは10時から昼頃までかかった。会社の会議にはお茶を出したことはあるけど、メンバーとなって出席するのは初めてで緊張した。ひな壇に岸辺さんを挟んで吉本さんと私が座った。
出席者はほかに10名くらいで、すべて管理職クラスの人だった。会議では岸辺さんが上手くリードしてメンバーにいろんな意見や要望を出させる。これをすべてメモに取っておいてあとでまとめるのが私の最初の仕事だった。
高校生の時は授業をノートに書き留めることは得意だったので、特別に難しいとは思わなかった。岸辺さんは発言者名と意見のポイントだけメモしている感じ。
私は名前が分からないので、座っている位置に番号を付けて発言をメモした。専門用語が出てきて意味が分からない発言もあったので困った。
会議を終えて席にもどると、岸辺さんが自分の取ったメモを私にくれた。そして、以前に行った同じような会議の会議録を例に示してまとめ方を教えてくれた。あとは私にまかせるから、午後から早速取りかかるよう言われた。
私は昼休みを終えると自分のメモと岸辺さんのメモを見ながらパソコンで会議録を作り始めた。
3時ごろには一応完成したので、プリントアウトして読み返してみたが、意味の通じないところが何か所かある。直しようがないので、3時半ごろ、岸辺さんに「分からないところもありますが」と言って、会議録を見せた。
岸辺さんはそれを読んで「よくまとまっている」と言ってくれたので、ほっとした。そして、私の分からないところを直してくれた。そして「来たばかりだからプロジェクトの内容を理解していないので、つじつまの合わないところはしかたないから気にしないで」と言ってくれた。
そして、再度プリントアウトして、吉本さんにも内容を確認してもらうように言われた。吉本さんに見てもらったけど、よくできていると言われた。
それから、岸辺さんは室長のところへ会議録を持って今日の打合せの報告に行った。岸辺さんはニコニコしながら席に戻ってきた。
「室長に会議録で報告しておいた。横山さんが作ったことも。いつもなら報告が次の日になるところなので、助かった。来てもらってよかったよ」
「要領が分かりましたので、次からは大丈夫です」
5時になると3人ですぐに退社して、私も以前行ったことのあるビアレストランに向かった。まだ5時過ぎなので客がほとんどいない。
奥の方のテーブルに席を取って、生ビールを3つ注文して、あとソーセージなどのつまみを注文。ビールが来たのですぐに乾杯。
はじめに3人が改めて自己紹介をした。私は24歳で、高校卒業後に人材派遣会社に就職して、この会社が3つ目の会社だとか、3年前にこの会社へ来て、業務室、総務部にいたことなどを話した。
吉本さんは入社2年で24歳、独身。有名大学の出身で、今日は学生時代から付き合っている彼女の誕生日で、このあと誕生祝いを予定しているとか。私に関心がないので、あまり話しかけない。そして5時40分くらいに次の約束のために退席した。
「今日はまだ月曜日だから6時半には終わりにしよう。それまでならいいね」
「6時半なら、総務部にいたらまだ仕事をしている時間です」
「残業代が少なくなるかもしれないけど悪いね」
「心配ご無用です。それよりもチャンと仕事をさせてもらえて嬉しいです。私専用のパソコンまで用意してもらってありがとうございます」
「でもコピーも頼むよ」
「もちろんです」
「会議録の出来は上々だよ、僕が作るよりもずっと正確だし、これなら安心して任せられる。メールもできる?」
「できますが」
「会議の日程調整に随分時間と手数がかかって大変なので今度調整を頼みます。要領を教えるから」
「やってみます」
岸辺さんと二人きりでお話ができて嬉しい。私は生ビールのお代わりをした。少し酔ったみたいで、遠慮がなくなって、聞きたいこと、話したいことが次々浮かんでくる。
「岸辺さんはお付き合いしている人はいないんですか?」
「残念だけどいない。本社へ転勤になってしばらくして取引のある会社の女性と付き合ったことがあるけど別れた。それからずっと彼女なし」
「総務部に女子の派遣社員が私のほかに二人いるのですが、岸辺さんのことを知っていて、カッコいい独身のエリートの部下になるんだ!と羨ましがられました」
「僕がカッコいい?」
「はい、スーツもカッコいいし、ネクタイもセンスがいいし、それにそのカバンも、ブランドでしょう」
「特にブランドに拘っているわけじゃないけど、良いものを選んではいる。その方が飽きも来ないし、長持ちすることが分かっているから。このスーツも4年前のものだよ。それに、僕はエリートなんかじゃない、地方大学出身で、吉本君のような有名大学を出ているわけでもない。仕事も精一杯で何とかこなしているだけ」
「女子は見る目がシビヤーですから。出身大学じゃなくて仕事ができるかを見ているんです。将来性を見ているんです」
「はたから見ていてそんなこと分かるもんなのかね」
「分かります。仕事ができる人は相手の気持ちや立場が分かってうまく仕事をまわしています。それに他人への心遣いができます」
「そういうもんかね。僕は強引に進めたいといつも思っているけどなかなかうまくいかなくて、調整ばかりしている」
「岸辺さんは仕事の進め方が上手だと思います。会議に出て分かりました。室長も一目置いているのではないですか?」
「入社以来の長い付き合いなので信頼はされていると思っているけどね」
仕事の話などをしていたらすぐに6時半になった。岸辺さんの話をもっと聞きたかったけど、今日はここまで。岸辺さんがだらだらと飲むのは嫌いだと言って切り上げるので仕方がない。
帰る方向が同じなので一緒に帰る。ほろ酔い気分で電車に乗ったけど、丁度帰りのラッシュで車内ではもうとても話などできない。岸辺さんは、目で合図して二子新地で降りて行った。ごちそうさまでした。
1日目は無事に終わった。カッコいい岸辺さんとこれから仕事ができると思うと嬉しくなる。岸辺さんはチョットせっかちだけど、私にも心遣いをしてくれて、いい人だ。
仕事も室長の右腕と言われていたように、そつなくこなしている。ついて行くのは大変そうだけど、私でも何とか務まりそうなので安心した。
ブログにはこう書き込んだ。
〖カッコいい人の部下になって初仕事をした。何とか務まりそう! 歓迎会をしてもらってお話しした。35歳、独身、彼女なし!〗
コメント欄
[しっかり仕事してチャンスをものにしなくちゃ!]
[上手くおだてて仕事をさせるつもりかもしれないから気を付けて!]
[あまり期待しないで淡々と仕事をこなすべし!]
企画開発室の中に入るのは初めてだった。4つの島(グループ)があるみたい。きょろきょろしていると一番端の小さな島に座っている岸辺さんが手招きしている。
「おはようございます。今日からお世話になります。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく。来てもらえてよかった」
「指名していただいたみたいですが、お役に立てますか?」
「横山さんなら大丈夫だと思ったから。ただ、指名したのは内緒にしておいて、何かとまずいから」
「分かりました」
岸辺さんのグループの席は企画開発室の一番端にあり、2人に指示が出しやすいように、岸辺さんの右前が部下の吉本さん、左前が私の席とコの字型になっていた。私専用のパソコンも1台、机の上に用意されていた。
そうこうしていると、吉本さんが出社して席に着いた。入社2年目とか、おそらく私と同い年のはず。
「吉本君、こちらが先週話していた横山さん、今日から僕のアシスタントに来てもらった」
「よろしくお願いします」
「よろしく、総務部にいたのかな、見かけたことがあるけど」
「そうです。私は派遣社員で総務部にいました」
「吉本君に言っておくけど、僕のアシスタントに来てもらったので、横山さんに仕事を頼みたいときは僕を通してくれ、いいね。横山さんもいいね。吉本君の仕事をするときは僕の許可を得てくれ」
岸辺さんは私に気を使ってくれている。岸辺さんの前では吉本さんと対等な立場にしておいてくれる。気遣いのできる人だ。
これで、吉本さんに仕事を頼まれることなく、岸辺さんの仕事に専念できる。総務部では何人もの人の小間使いだったけど、それが仕事だった。
9時になったので、岸辺さんはまず私を室長に紹介してくれた。
「室長、総務部から来てくれた横山さんです」
「室長の竹本です。岸辺君のアシスタントをよろしくお願いします」
「できるだけがんばります。よろしくお願いします」
室長は私を見て不思議そうな顔をしていた。きっとなぜ岸辺さんが私を指名したのだろうと考えていたのだと思う。
それから、企画開発室のメンバーに紹介してくれた。大きなチームがほかに3つあるので、それぞれのリーダーの席でチーム全員に紹介された。
私を知っていて手で合図する顔見知りの女子社員もいたが、大概は型通りの挨拶をするだけ。企画開発室の女子社員は手で合図してくれた派遣の子が一人いるが、他は全員大学卒の正社員で仕事ができそうな雰囲気のひとばかり。
独身の男性社員も何人かいるようだが、私には全く無関心だった。それというのも、私の服装はいうまでもなくいつものようにとても地味。新しい職場に変わったので、今日は気を使って、まるでリクルートスタイルになっている。まあ、その方が好都合だけど。
挨拶を終えて二人で席に戻る。吉本さんは席にいた。
「今日、仕事が終わったら、横山さんの歓迎会をしたいけど、二人の都合はどう? もちろん、費用は僕が負担するから」
「わざわざ私のために申し訳ありません。私は大丈夫ですけど」
「今日は人と会う約束がありますが」
「吉本君、それは何時から?」
「7時です」
「それなら30分位付き合ってくれないか。今日を逃すともうできないから、場所は会社の近くのビアレストランにするから」
「30分位ならいいですよ」
「それじゃ、5時になったらすぐに3人で行って始めよう」
「それから、横山さん、今日10時から、新規のプロジェクトの事前打合せをするので、3人で一緒に出席してほしい。打合せの議論をメモに取って会議録にまとめてもらいたい」
「そんな仕事、私で大丈夫ですか」
「大丈夫、僕もメモを取るから。そのメモもあとで渡すから、まとめてくれればよい」
「分かりました」
事前打合せは10時から昼頃までかかった。会社の会議にはお茶を出したことはあるけど、メンバーとなって出席するのは初めてで緊張した。ひな壇に岸辺さんを挟んで吉本さんと私が座った。
出席者はほかに10名くらいで、すべて管理職クラスの人だった。会議では岸辺さんが上手くリードしてメンバーにいろんな意見や要望を出させる。これをすべてメモに取っておいてあとでまとめるのが私の最初の仕事だった。
高校生の時は授業をノートに書き留めることは得意だったので、特別に難しいとは思わなかった。岸辺さんは発言者名と意見のポイントだけメモしている感じ。
私は名前が分からないので、座っている位置に番号を付けて発言をメモした。専門用語が出てきて意味が分からない発言もあったので困った。
会議を終えて席にもどると、岸辺さんが自分の取ったメモを私にくれた。そして、以前に行った同じような会議の会議録を例に示してまとめ方を教えてくれた。あとは私にまかせるから、午後から早速取りかかるよう言われた。
私は昼休みを終えると自分のメモと岸辺さんのメモを見ながらパソコンで会議録を作り始めた。
3時ごろには一応完成したので、プリントアウトして読み返してみたが、意味の通じないところが何か所かある。直しようがないので、3時半ごろ、岸辺さんに「分からないところもありますが」と言って、会議録を見せた。
岸辺さんはそれを読んで「よくまとまっている」と言ってくれたので、ほっとした。そして、私の分からないところを直してくれた。そして「来たばかりだからプロジェクトの内容を理解していないので、つじつまの合わないところはしかたないから気にしないで」と言ってくれた。
そして、再度プリントアウトして、吉本さんにも内容を確認してもらうように言われた。吉本さんに見てもらったけど、よくできていると言われた。
それから、岸辺さんは室長のところへ会議録を持って今日の打合せの報告に行った。岸辺さんはニコニコしながら席に戻ってきた。
「室長に会議録で報告しておいた。横山さんが作ったことも。いつもなら報告が次の日になるところなので、助かった。来てもらってよかったよ」
「要領が分かりましたので、次からは大丈夫です」
5時になると3人ですぐに退社して、私も以前行ったことのあるビアレストランに向かった。まだ5時過ぎなので客がほとんどいない。
奥の方のテーブルに席を取って、生ビールを3つ注文して、あとソーセージなどのつまみを注文。ビールが来たのですぐに乾杯。
はじめに3人が改めて自己紹介をした。私は24歳で、高校卒業後に人材派遣会社に就職して、この会社が3つ目の会社だとか、3年前にこの会社へ来て、業務室、総務部にいたことなどを話した。
吉本さんは入社2年で24歳、独身。有名大学の出身で、今日は学生時代から付き合っている彼女の誕生日で、このあと誕生祝いを予定しているとか。私に関心がないので、あまり話しかけない。そして5時40分くらいに次の約束のために退席した。
「今日はまだ月曜日だから6時半には終わりにしよう。それまでならいいね」
「6時半なら、総務部にいたらまだ仕事をしている時間です」
「残業代が少なくなるかもしれないけど悪いね」
「心配ご無用です。それよりもチャンと仕事をさせてもらえて嬉しいです。私専用のパソコンまで用意してもらってありがとうございます」
「でもコピーも頼むよ」
「もちろんです」
「会議録の出来は上々だよ、僕が作るよりもずっと正確だし、これなら安心して任せられる。メールもできる?」
「できますが」
「会議の日程調整に随分時間と手数がかかって大変なので今度調整を頼みます。要領を教えるから」
「やってみます」
岸辺さんと二人きりでお話ができて嬉しい。私は生ビールのお代わりをした。少し酔ったみたいで、遠慮がなくなって、聞きたいこと、話したいことが次々浮かんでくる。
「岸辺さんはお付き合いしている人はいないんですか?」
「残念だけどいない。本社へ転勤になってしばらくして取引のある会社の女性と付き合ったことがあるけど別れた。それからずっと彼女なし」
「総務部に女子の派遣社員が私のほかに二人いるのですが、岸辺さんのことを知っていて、カッコいい独身のエリートの部下になるんだ!と羨ましがられました」
「僕がカッコいい?」
「はい、スーツもカッコいいし、ネクタイもセンスがいいし、それにそのカバンも、ブランドでしょう」
「特にブランドに拘っているわけじゃないけど、良いものを選んではいる。その方が飽きも来ないし、長持ちすることが分かっているから。このスーツも4年前のものだよ。それに、僕はエリートなんかじゃない、地方大学出身で、吉本君のような有名大学を出ているわけでもない。仕事も精一杯で何とかこなしているだけ」
「女子は見る目がシビヤーですから。出身大学じゃなくて仕事ができるかを見ているんです。将来性を見ているんです」
「はたから見ていてそんなこと分かるもんなのかね」
「分かります。仕事ができる人は相手の気持ちや立場が分かってうまく仕事をまわしています。それに他人への心遣いができます」
「そういうもんかね。僕は強引に進めたいといつも思っているけどなかなかうまくいかなくて、調整ばかりしている」
「岸辺さんは仕事の進め方が上手だと思います。会議に出て分かりました。室長も一目置いているのではないですか?」
「入社以来の長い付き合いなので信頼はされていると思っているけどね」
仕事の話などをしていたらすぐに6時半になった。岸辺さんの話をもっと聞きたかったけど、今日はここまで。岸辺さんがだらだらと飲むのは嫌いだと言って切り上げるので仕方がない。
帰る方向が同じなので一緒に帰る。ほろ酔い気分で電車に乗ったけど、丁度帰りのラッシュで車内ではもうとても話などできない。岸辺さんは、目で合図して二子新地で降りて行った。ごちそうさまでした。
1日目は無事に終わった。カッコいい岸辺さんとこれから仕事ができると思うと嬉しくなる。岸辺さんはチョットせっかちだけど、私にも心遣いをしてくれて、いい人だ。
仕事も室長の右腕と言われていたように、そつなくこなしている。ついて行くのは大変そうだけど、私でも何とか務まりそうなので安心した。
ブログにはこう書き込んだ。
〖カッコいい人の部下になって初仕事をした。何とか務まりそう! 歓迎会をしてもらってお話しした。35歳、独身、彼女なし!〗
コメント欄
[しっかり仕事してチャンスをものにしなくちゃ!]
[上手くおだてて仕事をさせるつもりかもしれないから気を付けて!]
[あまり期待しないで淡々と仕事をこなすべし!]