織田くんと出会って1ヶ月、病状にこれといった変化はないが、私は前よりも学校に通うのが楽しみになっていた。


心療内科の先生にも『笑顔が増えたね』と言われたくらいだから、いい方向に向かっているのだと思う。

そのことを織田くんにも報告しようと思ったのだけれど、この日、織田くんはまだ保健室には来ていなかった。

織田くんを待つこと5分、10分……。

いくら待っても織田くんは来ない。


「今日は織田くん来ないのかしら。珍しいわね?休んでる生徒もいないし、このまま待ってみる?」


《ありがとうございます》


畑中先生の言葉に甘えて、そのまま保健室で織田くんを待つ。


けれど、予鈴が鳴っても織田くんは姿を見せなかった。

(織田くんどうしたんだろう……?)



「気になるなら会いに行けばいいんじゃない?」

教室へ戻り、里菜ちゃんに事情を説明するとそんな言葉が返ってきた。


「本人に直接どうしたのって?それに、もしかしたら休みって可能性もあるかもしれないでしょ」

(そっか、お休みの可能性もあるのか)

そんな単純なことにすら気づけなかった。


「私も一緒に行きたいんだけど、次の休み時間にノート提出しないとダメなんだよね」

《大丈夫!一人で行ってみるよ。ありがとう里菜ちゃん》



そして、5限の授業を終えたあと、私はやや駆け足気味でA棟へと向かった。

10分しかないから早く織田くんを見つけないと。


というか、1組は次何の授業なんだろう。

場合によっては教室にいない可能性もある。


そんな不安を抱えながら歩いていると、廊下に見覚えのある二人組を発見した。


(あれってミヤくんと幸太郎くんだよね?)


二人は窓の外を見ながら楽しそうに会話をしている。

けれど、そこに織田くんの姿はない。

織田くんのことを知りたいなら、二人に聞くのが一番だろう。

だけど、そのためには自分から話しかけないといけない。