年内に未希の離婚についての一切が片付き、いつもの生活が戻ってきた。未希が近くに戻って来たと思うと嬉しくてならない。俺は午後8時前には帰宅する。アパートに着くと必ず外から未希の部屋に明かりが点いているかを確認する。
今日は点いていないので、どうかしたのかと心配になる。でもいつ帰るかは未希の自由だ。電話してどうしているのかと聞く訳にもいかない。俺は未希のことになると変だ。まるでストーカーの心境だ。
9時に携帯が鳴った。未希からだった。
「何かあったのか?」
「山内さんが元気にしているかと思って?」
「そうか、ありがとう。8時に帰ってきたが、今日は未希の部屋の明かりが点いていないので心配していた」
「今日は社員食堂でパーティーがあったので、今帰ってきたところです。こういうパーティーや歓送迎会が月に2~3回あるので、その時は遅くなります。心配してくれてありがとう。パーティーの残り物ですが、貰ってきました。食べに来ませんか?」
「ありがとう、すぐに行く」
未希が新しい職場に勤め始めてからここのところ俺から未希の部屋に行くのは遠慮していた。でも呼ばれたら遠慮はしないでとんで行く。
「折角だから、ご馳走になるよ」
「本当は持ち帰ってはいけないけど、どうせ捨てるのだから、もったいないでしょう。今日中に食べることで貰って来た」
「仕事はどう?」
「コックをしていた時のようにシフトもないし、働く時間が決まっているから、時間に余裕があります。土日は休みだし、山内さんとデートもできます」
未希は冷蔵庫から小さな缶ビールを2本出して、俺と未希の前に置いた。
「ビールを飲むんだ」
「仕事から帰って食事をするときには、少しだけどお酒を飲みます。山内さんはいつも缶ビールを飲みながらお弁当を食べていましたが、今はなぜビールを飲んでいたのか分かります」
「未希がクリスマスプレゼントにくれたグラス、今も大事に使っているよ。未希がいなくなってからは未希を思い出すので片付けておいたけど、ここのところ、また使い始めた」
「大切にしてくれてありがとう」
「未希との思い出の品だからね」
未希が缶ビールを持っている俺の手を握りしめた。その上から俺の手を重ねる。
「この唐揚、未希が作ったのか?」
「私が味付けしましたけど、どうですか?」
「おいしい、腕をあげたな。学校に通っていたときよりもうまい」
「ホテルで仕込まれたから、腕は上がったみたい」
「そうか、ホテル勤務が役に立っているのか? 彼を思い出すか? 別れたことを後悔していないか?」
「一から教えてくれたことは今でも感謝しています。彼を尊敬もしていました。でもそれは先輩として指導者としてでした。私はそのことと好きになるということを混同していたと思います。一生を共にする人としてどうなのかを良く見て考えていませんでした。別れたことを後悔はしていません」
「未希にはそういう目で俺を見てもらいたいと思っている」
「ここしばらく山内さんの言っていることがようやく分かるようになってきました」
「ごちそうさま、明日も仕事だろう。じゃあ、引き上げる」
俺が立ち上がると未希が抱きついて来た。俺も未希を抱き締める。
「寂しいんです」
「すぐそばにいつもいる。呼べばとんでくる。自立している大人の女だろう。そんな弱音を吐いたらいけない。俺はもう回復しているが、今は我慢する。今度の休みは二人でどこかへ行こうか?」
「うん、久しぶりに二人で出かけたい」
「どこがいい?」
「銀座のデパートで全国のおいしい料理のフェスタがあると聞いたので、行ってみたい」
「じゃあ、土曜日の10時ごろから出かけようか」
「はい、楽しみにしています」
部屋に戻ってきた。未希とデートの約束ができた。まるで恋人とデートするような浮かれた気分だ。俺は未希に恋をしている!
今日は点いていないので、どうかしたのかと心配になる。でもいつ帰るかは未希の自由だ。電話してどうしているのかと聞く訳にもいかない。俺は未希のことになると変だ。まるでストーカーの心境だ。
9時に携帯が鳴った。未希からだった。
「何かあったのか?」
「山内さんが元気にしているかと思って?」
「そうか、ありがとう。8時に帰ってきたが、今日は未希の部屋の明かりが点いていないので心配していた」
「今日は社員食堂でパーティーがあったので、今帰ってきたところです。こういうパーティーや歓送迎会が月に2~3回あるので、その時は遅くなります。心配してくれてありがとう。パーティーの残り物ですが、貰ってきました。食べに来ませんか?」
「ありがとう、すぐに行く」
未希が新しい職場に勤め始めてからここのところ俺から未希の部屋に行くのは遠慮していた。でも呼ばれたら遠慮はしないでとんで行く。
「折角だから、ご馳走になるよ」
「本当は持ち帰ってはいけないけど、どうせ捨てるのだから、もったいないでしょう。今日中に食べることで貰って来た」
「仕事はどう?」
「コックをしていた時のようにシフトもないし、働く時間が決まっているから、時間に余裕があります。土日は休みだし、山内さんとデートもできます」
未希は冷蔵庫から小さな缶ビールを2本出して、俺と未希の前に置いた。
「ビールを飲むんだ」
「仕事から帰って食事をするときには、少しだけどお酒を飲みます。山内さんはいつも缶ビールを飲みながらお弁当を食べていましたが、今はなぜビールを飲んでいたのか分かります」
「未希がクリスマスプレゼントにくれたグラス、今も大事に使っているよ。未希がいなくなってからは未希を思い出すので片付けておいたけど、ここのところ、また使い始めた」
「大切にしてくれてありがとう」
「未希との思い出の品だからね」
未希が缶ビールを持っている俺の手を握りしめた。その上から俺の手を重ねる。
「この唐揚、未希が作ったのか?」
「私が味付けしましたけど、どうですか?」
「おいしい、腕をあげたな。学校に通っていたときよりもうまい」
「ホテルで仕込まれたから、腕は上がったみたい」
「そうか、ホテル勤務が役に立っているのか? 彼を思い出すか? 別れたことを後悔していないか?」
「一から教えてくれたことは今でも感謝しています。彼を尊敬もしていました。でもそれは先輩として指導者としてでした。私はそのことと好きになるということを混同していたと思います。一生を共にする人としてどうなのかを良く見て考えていませんでした。別れたことを後悔はしていません」
「未希にはそういう目で俺を見てもらいたいと思っている」
「ここしばらく山内さんの言っていることがようやく分かるようになってきました」
「ごちそうさま、明日も仕事だろう。じゃあ、引き上げる」
俺が立ち上がると未希が抱きついて来た。俺も未希を抱き締める。
「寂しいんです」
「すぐそばにいつもいる。呼べばとんでくる。自立している大人の女だろう。そんな弱音を吐いたらいけない。俺はもう回復しているが、今は我慢する。今度の休みは二人でどこかへ行こうか?」
「うん、久しぶりに二人で出かけたい」
「どこがいい?」
「銀座のデパートで全国のおいしい料理のフェスタがあると聞いたので、行ってみたい」
「じゃあ、土曜日の10時ごろから出かけようか」
「はい、楽しみにしています」
部屋に戻ってきた。未希とデートの約束ができた。まるで恋人とデートするような浮かれた気分だ。俺は未希に恋をしている!