三階に行く途中、足を止めずにそのまま四階に上がり、階段近くの扉から外に出た。
そして、校舎の裏にある焼却炉まで歩いて行くと、少女は足を止めた。
そこには、一人の少年が座っていたからだ。
少女に気付いた少年は立ち上がり、「……あ、こんにちは。
……えっと……」と言うと、少女は何かを言いかけようとして口を開きかけた時、友人に呼ばれた少年はその場を離れてしまう。
教室から見える中庭に、一人の女生徒が見えた。
(ああいう人もいるし……。
きっと大丈夫)少女はその女生徒に目を向けていたが、すぐに視線を戻した。
午後の授業が終わり、少女が帰りの準備をしていると、「ねぇ、ちょっと」と声をかけられる。
振り向くとそこには女子生徒がいた。
彼女は先日一緒に食事をした友人の一人だ。
少女は彼女と一緒に教室を出た。
そして、近くのファミレスに入って、向かい合うように座ると、彼女が話しかけてくる。
「ねぇ、あの時言った事、嘘だったの?」と聞いてくるので、自分は首を振る。
彼女は続ける。
「じゃあ何で?」……どうすれば良かったのか分からないからです、とは答えられない。
彼女は言葉を続ける。
「あなたが何を思ってるのか、正直言って、私には全然分からない」……分かってほしいと思ったことはない。
自分だって、人の考えている事が全部分かるわけではないのだ。
それに、自分が思っている事なんて、きっと誰にも分からないだろう。
だから自分は黙っていたのだが、それを伝える方法も、分からなかった。
ただ、自分が彼女を傷つけてしまった事は分かった。
だから謝ろうと思って口を開いたが、何も言えなかった。
「……何が言いたいの?」……ごめんなさい。
「それで、許してくれるとでも思ったの?」……はい。
「ふざけないでよ」……本当に、すみませんでした。
「何でよ」
……もう、分かりません。
「ふざけんなよ」……本当に、申し訳ありませんでした。
「何なのよ」……自分でもよく分かりません。
「意味わかんない」……そうですね。
「あんたのせいよ」……そうかもしれません。
「ふざけんなよ」……はい。
「何なのよ」……
「もういい」……
「ふざけんなよ」……
「いい加減にしてよ」……
「うるさいんだよ」……
「いい加減にしろよ」……
「お前のせいで」
……
「死ねよ」……
「あんたなんか死ねばいいのよ」………………。
…………私、死にます。
そう言って席を立った彼女を、彼は呼び止めなかった。
それから一週間程して、彼女は死んだ。
遺書には、こう書かれていたそうだ。
「私は最低の人間です。
私は友達を殺しました。
私は自殺します。
今までありがとうございました」
この話をしてくれた人の名前は知らない。
というか、誰も知らなかった。
何故ならその人は、自分の事を話した後すぐに死んでしまったかららしい。
ある日突然現れて、いつの間にかいなくなっていた。
そんな不思議な人だ。
今思えば、あの話は本当だったのかもしれないと思う。
そして僕は思うのだ。
もしかしたら、僕はその人に会った事があるのかもしれないと。
いや、確実に会ったはずだと。
なぜなら、僕自身が、彼女の言う「彼」だったからだ。
これは僕が経験した話だ。