水星の逆行にかこつけた大胆不敵な実験は寝耳に水だったらしく思念の漏出が魔導通信工学的にどのような影響を及ぼすか環境評価を急いでいる。
ただ法的には抵触する部分は見当たらずむしろ規制が前代未聞を追う状態だ。
「残留思念のブレンド…パルスマギメーター。懸念事項山積で頭痛がする」
こめかみを揉みつつディック氏は俺を尋問した。
「地縛霊の存在に関してまったく聞いてなかったんですか?」
俺はそこで思い返したことがある。ハルシオンは本当に一匹狼だがオオカミ少女ではなかったので研究のことはほとんど誰にも話したことが無かったのだ。だから俺は何も知らなかったがハルシオンは違うはずだ。
「俺はただハルシオンの提案を形にしただけです」
「地縛霊の固定化は慧眼だったね。地縛霊はグルッパという少年という」
ディック氏は赤い宝石のペンダントを取り出した。
俺はそれを一目見て「中性長石《アンデシン》はとても俺の月収で買えません。かわりに救世主の血潮といわれる赤めのうの霊力を使いました。これだって俺の研究予算から持ち出しですよ」、と補足した。あとでノースに請求するけどな!
ディック氏はうなづき「知りたいのは宝珠の出処でなく幽霊と君の関係だ」
なぜ用意できたのか。周到な準備を勘繰っている。うたぐり深い奴だな。
「新しい寮には終夜営業の魔法具店があるじゃないですか。引っ越しの問題解決を頼まれて俺は動いてたんですよ。メッセンジャーですからね!」
嘘はついていない。幽霊の説得が膠着していて悪魔祓い師の出動を視野にいれていた。拘束具に使うアンデシンは事前に水晶で清めなくてはいけないが、それらのパワーストーンは店に入荷していた。
「なるほど。借方科目というわけか。店の帳簿と合う。不正はなかった」
ディックはまだ腑に落ちないらしくオプスとハルシオンの親交を突いてきた。
「たしかに一匹狼の研究者ですが、みんながみんな人間嫌いではないですよ」
彼女がハルと接触を持つことができたのはハルと仲良くなりたいからだと聞いている。だとすれば彼女が知っていて不思議ではないのかもしれないと思ったがどうやら違った。俺はここでやっとハルが言っていた事を思い出す。
>「君の事がよく知りたい」「約束しよう」
>心と心が混ざり合う研究……
ハルシオンは研究成果をとっくに実用化していたのだ。だからオプス先生に仕掛けたのがバレて大目玉を喰らったというわけか。
サリーシャが居ても立っても居られず弁護をはじめた。
メルクリウス寮の幽霊問題は歴代の申し送り事項だったにもかかわらず、塩漬けにした学院側にも責任がある。情報漏洩でなく情報の抱え込みを論うのなら風通しの悪い魔導査察機構はどうなのか、と。
地縛霊の言い分を聴取し環境改善を先送りした点をディック氏に問いただす。
しかし彼とて匙を投げていたわけでなく、膠着状態のまま息苦しい日々を送っていたことを必死に弁明した。
どうにもならない状況を孤軍奮闘する一生懸命さはハルシオンの可愛らしさにつながる。
まったくもって血は争えないというか。
それはハルとハルの母の行動を見ているかのようで、あの時母がとった行動がハルが母を真似しているかのように思えるものだったのを。
だから俺はハルシオンが研究について何も言わず、隠していたことに気づいていることを今改めて知ったのだ。
ただ法的には抵触する部分は見当たらずむしろ規制が前代未聞を追う状態だ。
「残留思念のブレンド…パルスマギメーター。懸念事項山積で頭痛がする」
こめかみを揉みつつディック氏は俺を尋問した。
「地縛霊の存在に関してまったく聞いてなかったんですか?」
俺はそこで思い返したことがある。ハルシオンは本当に一匹狼だがオオカミ少女ではなかったので研究のことはほとんど誰にも話したことが無かったのだ。だから俺は何も知らなかったがハルシオンは違うはずだ。
「俺はただハルシオンの提案を形にしただけです」
「地縛霊の固定化は慧眼だったね。地縛霊はグルッパという少年という」
ディック氏は赤い宝石のペンダントを取り出した。
俺はそれを一目見て「中性長石《アンデシン》はとても俺の月収で買えません。かわりに救世主の血潮といわれる赤めのうの霊力を使いました。これだって俺の研究予算から持ち出しですよ」、と補足した。あとでノースに請求するけどな!
ディック氏はうなづき「知りたいのは宝珠の出処でなく幽霊と君の関係だ」
なぜ用意できたのか。周到な準備を勘繰っている。うたぐり深い奴だな。
「新しい寮には終夜営業の魔法具店があるじゃないですか。引っ越しの問題解決を頼まれて俺は動いてたんですよ。メッセンジャーですからね!」
嘘はついていない。幽霊の説得が膠着していて悪魔祓い師の出動を視野にいれていた。拘束具に使うアンデシンは事前に水晶で清めなくてはいけないが、それらのパワーストーンは店に入荷していた。
「なるほど。借方科目というわけか。店の帳簿と合う。不正はなかった」
ディックはまだ腑に落ちないらしくオプスとハルシオンの親交を突いてきた。
「たしかに一匹狼の研究者ですが、みんながみんな人間嫌いではないですよ」
彼女がハルと接触を持つことができたのはハルと仲良くなりたいからだと聞いている。だとすれば彼女が知っていて不思議ではないのかもしれないと思ったがどうやら違った。俺はここでやっとハルが言っていた事を思い出す。
>「君の事がよく知りたい」「約束しよう」
>心と心が混ざり合う研究……
ハルシオンは研究成果をとっくに実用化していたのだ。だからオプス先生に仕掛けたのがバレて大目玉を喰らったというわけか。
サリーシャが居ても立っても居られず弁護をはじめた。
メルクリウス寮の幽霊問題は歴代の申し送り事項だったにもかかわらず、塩漬けにした学院側にも責任がある。情報漏洩でなく情報の抱え込みを論うのなら風通しの悪い魔導査察機構はどうなのか、と。
地縛霊の言い分を聴取し環境改善を先送りした点をディック氏に問いただす。
しかし彼とて匙を投げていたわけでなく、膠着状態のまま息苦しい日々を送っていたことを必死に弁明した。
どうにもならない状況を孤軍奮闘する一生懸命さはハルシオンの可愛らしさにつながる。
まったくもって血は争えないというか。
それはハルとハルの母の行動を見ているかのようで、あの時母がとった行動がハルが母を真似しているかのように思えるものだったのを。
だから俺はハルシオンが研究について何も言わず、隠していたことに気づいていることを今改めて知ったのだ。