せっかくだからちょっと買い物をしようということで、まず本屋さんに向かう。心七も私も本が好きなので、よく一緒に行く。
「私の好きな作者さんが新刊出してたんだよね。だから新刊コーナー行きたいな。」
「心七が好きな作者さんって言ったら塩野さん?前借りたのすごくおもしろかったから買ったんだー。」
 塩野さんの小説は、高校生くらいの子が主人公で、悩みながら成長していくストーリーが多い。私も心七から全作品借りて読んだ。とても共感できて、感動した。
「そうそう!『私の夜明け』っていう本が出たはずなの。前貸したって言ったら『青空を見上げて待つ』かな。気に入ってもらえて嬉しい。」
 そんな心七の言葉を聞いて、塩野さんの小説のタイトル、いつも素敵だなと思う。そのことを心七に言うと、「そうなの!題名からもう好きすぎる!」と盛り上がる。しばらく塩野さんの話をしていると、いつの間にか本屋さん。まっすぐ新刊コーナーへ行くと、目立つところにお目当ての本があった。綺麗な表紙だ。まだ薄暗い空に、太陽が輝いているイラスト。とてもリアルで、でもどこか写真とは違う。そりゃあ当たり前って感じだけど、不思議に思った。 
 心七はもう手に取っている。私も気になり、そっと手を伸ばした。想像していたより分厚い。帯を読んでみる。
『大丈夫。私はもう、大丈夫。私の夜が明けた。』
 内容も気になり、あらすじを読む。
『高校ニ年生の愛優(あゆ)は、友人関係に悩んでいた。愛優は人見知りで、なかなか人に話しかけられない。そんな愛優は、ある日落としものをした男の子、悠(ゆう)に、頑張って「これ、落としましたよ。」と話しかける。すると、悠にすごく感謝され、お礼に何かすると言われる。愛優は、断ろうとしたが断りきれず、悠にお礼を決めてもらうことにした。果たして悠は何をしたのか。そして愛優の悩みは解決するのか。』
 うん、読みたい。心七に借りるか迷う。でも毎回借りるのも悪いし、買おうかな。うん、買おう。
「心七、私もこの本買ってもいい?あらすじ読んだら読みたくなって。」
「もちろんいいよ!でも読みたいだけなら私読み終わったら貸すことできるよ?いいの、買っちゃって。」
「うーん。迷うけど、心七優しいから私に貸すとなるとじっくり読まずに急いで読んじゃうでししょ?それに、私も塩野さんすごいハマっちゃったから、やっぱり買おうかな。」
 心七は本当に優しいなぁ。私のことすごく考えてくれる。私も心七みたいに優しくできるようになりたいな。
 心七は「そう言うことならもちろん買いな!」と言ってくれる。それからも本屋さんで本を見て、これはどうだった、あれはどうだった、などと言って楽しんだ。