レイナは各地のゴミ捨て場を回ってミニコンサートを開いていった。
ゴミ捨て場の住人や作業員がその様子をスマホで撮影して、動画サイトで公開する。その再生回数はあっという間に億を超えた。
レイナの活動について取材をしたいという申し込みも多かった。だが、宣伝のためにやっているのではないと、レイナたちは自分からは語らないことにした。
それでも、レイナが次にどのゴミ捨て場に行くのか予測をする人たちが現れ、現地に行くと数十人のファンが待ち構えていたりする。
レイナは誰とでも分け隔てなく接するが、ゴミ捨て場の住人とファンとの間でいざこざが起きたときもあった。
ある日、最前列に陣取ってスマホで撮影している少女が3人いた。赤いバレッタをしているので、「街の人」であるのは明らかだ。
「前の人、後ろが見えないから、座って!」
ゴミ捨て場の住人が抗議しても、3人は知らんぷりしている。
レイナは見かねて、「後ろの人が見えないみたいだから、座ってもらえる?」と3人に声をかける。
「やだあ、こんな汚いところに座れないもん」
「後ろの人も立って見ればいいじゃない」
素直に従うと思っていた3人が、反発したことにレイナは驚く。
「だって、足が悪い人もいるんだよ? 座りたくないなら、後ろの人たちに前に来てもらうよ?」
「えーっ、なんで? 私たちが一番最初にここに来たのに。あの人たちは、来るのが遅かったじゃない」
「そうだよ。一番前で見たかったら、早く来て並んでいればよかったのに」
「おい、ここはオレたちの住処だ!」
業を煮やした住人が3人に向かって怒鳴る。
「汚いところとか、おとなしく聞いてれば失礼なこと言いやがって。ここが気に入らないなら、さっさと出て行けよ!」
「そうだ、そうだ!」
「お前たちが来る場じゃない!」
少女たちは「え~、何これ。怖ーい」「頭の中、わいてるんじゃない?」と薄ら笑いを浮かべて、住人にスマホを向けた。
「おいっ、やめろ! 撮るんじゃない!」
住人が少女に向かって靴を投げる。
靴は当たらなかったが、「ひっどーい、暴力ふるったあ。役所に訴えるからね?」「そうしたら、あんたたち、ここから追い出されるよ?」と少女たちは騒ぎ立てる。
住人が少女たちにつかみかかりそうになったので、裕が間に割って入る。
「レイナ、場所を移そう。ここで歌えばいい。そうしたら、みんなに見てもらえるから」
「そうだね」
レイナが少女たちと住人の間に立つと、3人はきまり悪そうに顔を見合わせる。
レイナは3人をじっと見つめた。
「私は今、ゴミ捨て場の人たちのために歌ってるの。だから、ゴミ捨て場の人たちにひどいことを言うなら、もう来ないでほしい」
キッパリ言うと、住人から「そうだそうだ!」「いいぞ、レイナちゃん!」と拍手喝采が起きる。
「せっかく来てあげたのに」
少女の一人が不満をぶつけると、「レイナは来てほしいなんて言ってない。ここは本来なら、君たちが来る場所じゃないんだ。君たちがお邪魔してる立場なんだから、ここに住む人たちに敬意を払うべきじゃないだろうか」と裕が冷静に言う。
少女たちは何も言い返せない。
「いいよ、もうっ」
「行こ行こっ」
3人はムッとした表情のまま去って行った。
住人は「帰れ帰れ~!」「もう来るなよー!」と大きな拍手をする。
「はーい、それじゃ、次の曲を歌います!」
レイナは再び歌いだす。
住人はみな嬉しそうに聴いているが、裕は何かが気にかかっているような表情をしていた。
ゴミ捨て場の住人や作業員がその様子をスマホで撮影して、動画サイトで公開する。その再生回数はあっという間に億を超えた。
レイナの活動について取材をしたいという申し込みも多かった。だが、宣伝のためにやっているのではないと、レイナたちは自分からは語らないことにした。
それでも、レイナが次にどのゴミ捨て場に行くのか予測をする人たちが現れ、現地に行くと数十人のファンが待ち構えていたりする。
レイナは誰とでも分け隔てなく接するが、ゴミ捨て場の住人とファンとの間でいざこざが起きたときもあった。
ある日、最前列に陣取ってスマホで撮影している少女が3人いた。赤いバレッタをしているので、「街の人」であるのは明らかだ。
「前の人、後ろが見えないから、座って!」
ゴミ捨て場の住人が抗議しても、3人は知らんぷりしている。
レイナは見かねて、「後ろの人が見えないみたいだから、座ってもらえる?」と3人に声をかける。
「やだあ、こんな汚いところに座れないもん」
「後ろの人も立って見ればいいじゃない」
素直に従うと思っていた3人が、反発したことにレイナは驚く。
「だって、足が悪い人もいるんだよ? 座りたくないなら、後ろの人たちに前に来てもらうよ?」
「えーっ、なんで? 私たちが一番最初にここに来たのに。あの人たちは、来るのが遅かったじゃない」
「そうだよ。一番前で見たかったら、早く来て並んでいればよかったのに」
「おい、ここはオレたちの住処だ!」
業を煮やした住人が3人に向かって怒鳴る。
「汚いところとか、おとなしく聞いてれば失礼なこと言いやがって。ここが気に入らないなら、さっさと出て行けよ!」
「そうだ、そうだ!」
「お前たちが来る場じゃない!」
少女たちは「え~、何これ。怖ーい」「頭の中、わいてるんじゃない?」と薄ら笑いを浮かべて、住人にスマホを向けた。
「おいっ、やめろ! 撮るんじゃない!」
住人が少女に向かって靴を投げる。
靴は当たらなかったが、「ひっどーい、暴力ふるったあ。役所に訴えるからね?」「そうしたら、あんたたち、ここから追い出されるよ?」と少女たちは騒ぎ立てる。
住人が少女たちにつかみかかりそうになったので、裕が間に割って入る。
「レイナ、場所を移そう。ここで歌えばいい。そうしたら、みんなに見てもらえるから」
「そうだね」
レイナが少女たちと住人の間に立つと、3人はきまり悪そうに顔を見合わせる。
レイナは3人をじっと見つめた。
「私は今、ゴミ捨て場の人たちのために歌ってるの。だから、ゴミ捨て場の人たちにひどいことを言うなら、もう来ないでほしい」
キッパリ言うと、住人から「そうだそうだ!」「いいぞ、レイナちゃん!」と拍手喝采が起きる。
「せっかく来てあげたのに」
少女の一人が不満をぶつけると、「レイナは来てほしいなんて言ってない。ここは本来なら、君たちが来る場所じゃないんだ。君たちがお邪魔してる立場なんだから、ここに住む人たちに敬意を払うべきじゃないだろうか」と裕が冷静に言う。
少女たちは何も言い返せない。
「いいよ、もうっ」
「行こ行こっ」
3人はムッとした表情のまま去って行った。
住人は「帰れ帰れ~!」「もう来るなよー!」と大きな拍手をする。
「はーい、それじゃ、次の曲を歌います!」
レイナは再び歌いだす。
住人はみな嬉しそうに聴いているが、裕は何かが気にかかっているような表情をしていた。