ただもう一度、君に会いたかった

「萌百~!起きなさ〜い!」
お母さんの呼ぶ声で目を覚ました。
昨日海に行って、帰ってきてからいつの間にか寝てしまったみたい。時間を確認するためにスマホを見た。
「えっ!」
言葉を失った。
普通はありえないことだが、なんと時間が巻き戻っている。
「お母さん、今日って何月何日だっけ。」
信じられず、お母さんに確認する。でもやっぱりお母さんはスマホで見たものと同じ日付を答えた。それに、蓮が亡くなるちょうど一ヶ月前に戻っている。ということは、蓮はまだ生きているということになるはずだ。
混乱する頭を整理する時間が欲しかったが、お母さんにどう説明したらいいかわからなかったし、頑張って合格した高校なので、休むわけにも行かず、とりあえず学校へ行くことにした。
「行ってきまーす。」
高鳴る胸をしずめて扉を開けた。
足を外に一歩踏み出した時、
「ガチャ」
隣の家の扉が開き、そこから出てきたのは、蓮だった。
本当に時間が戻ったんだ!あの夜願ったことが叶った!自然と涙が溢れそうになるが、ぐっと堪える。
中学は同じ学校だったため、見かけることはあったが、高校生になってからは顔すら見ていなかった。
「えっとー、、、元気か?」
しばらく話していなかったからか、ぎこちなさそうに蓮は言った。
「うん。元気だよ。蓮は?」
「俺も元気。」
蓮の返事を聞いて、「嘘つき」と思った。蓮は普通に答えているが、少なくとも健康ではないはずだ。
多分。
「ガチャ」
また蓮の家の扉が開いた。そこから出てきたのは、蓮のお母さん。
「あら、萌百ちゃん。久しぶりね。」
「お久しぶりです。」
おばさんは昔と変わらず、優しく微笑みかけてくれた。
「そろそろ行かないと遅刻するわよ。」
スマホの画面を見て、おばさんが言った。
「そうだな。またな、萌百。」
「うん。またね。」
蓮をもう一度見れただけじゃなくて、話までできたことがすごく嬉しかった。
でも私にはやることがある。これからどうしようか考えながら学校へ向かった。
「おはよぉ~。」
靴箱で上履きに履き替えていたとき、澪が話しかけてきた。
「おはよう。」
すると、急に澪が私の顔を覗いてきた。
「なんか考え事でもしてるの?」
さすが親友、顔を見ただけで見抜いてしまう。
「ううん。なんにもないよ。」
時間が戻ったことを伝えたところで、信じてもらえるか不安だったので、言うのはやめた。ごめんね、澪。
「ならいいけど、なんかあるなら言ってよ?いつでも相談のるから。」
「うん。ありがとう。」
本当にいい友達をもったなと思う。
いつか私の覚悟が出来たら、澪に話すつもりだ。二人で他愛のない話をしながら、階段を上り教室に入った。珍しくぎりぎりの登校だったので、話している暇もなく,それぞれの席に座る。
これからどうするべきかちゃんと考えて、自分が納得する行動を取らないと、一生後悔する。
集中しなければいけないと分かっているけど、授業中も蓮のことが頭から離れなかった。
「萌百?萌百?」
「えっ!あっ、ごめん。どうしたの?」
ぼーっとしてしまっていたみたい。澪に話しかけられていることに全く気づかなかった。
「もう時間だから帰ろ?」
「うん。」
いつの間にかもう下校時間になったみたい。席を立ち、澪と一緒に歩き出す。
「ねえ聞いてよ〜、昨日の夜にさぁ〜、、、」
澪は私に気を使ってか、今朝のようにどうしたのかなど、深く追及してこない。今の私にとっては有難いことだ。
「澪、心配かけてごめん。」
「何言ってんの、友達でしょ。」
「うん。今はまだ話せる状態じゃなくて。いつか絶対話すから。」
「分かった。待ってる。」
「ありがとう。」
だんだんと沈んでいく夕日が、オレンジ色に輝いてとても綺麗だった。