週明けの月曜日、茜音たち三人は東京駅の新幹線ホームで萌を待っていた。
「やっぱ早く着きすぎだよぉ……」
「仕方ないじゃん。今日はうちらだけじゃないんだからさぁ」
夏休みの東京駅は、通勤時間以外でもそれなりの混雑を見せる。これがお盆などになると大変なことになるのだけど、今日はまだそれほどでもない。
「しかし、よく食べるねぇ……。朝ご飯食べてこなかったのぉ?」
茜音がペットボトルのお茶を飲みながら菜都実を見る。
「だってぇ、今日はお店お休みにして船を出すって朝早くから準備始めちゃったから、あたしの朝ご飯なんて……」
ふくれ顔の菜都実。それにしても、東京駅で買った駅弁をすでに2つも平らげているのは、それだけではないような気もする。
「そういえば、萌ちゃんもう一人一緒に行くって言ってたよね」
食べっぱなしの菜都実をあきれ顔で見ていた佳織が、茜音に言ったとき、
「おはようございます」
聞き覚えのある声がして、三人はそちらを見た。
「えっ?」「ほぇ~~!!! 分裂してるぅ!」
最初、全員が見間違いではないかと目を疑った後、茜音は思いきり叫んだ。
ボストンバックを提げて立っている萌の横に、全く同じ顔をしたもう一人が立っていたのだから。
「脅かすつもりではなかったんです。わたしの双子の姉で、美保と言います」
「そっかぁ。双子じゃぁ仕方ないよねぇ。見分けるの大変だぁ……」
萌に紹介され挨拶をした美保。服装を除けば見た目は全く同じなので、佳織が苦笑するのも仕方ない。
「萌とあたしは性格と服装が全然違うから、それでみんな見分けてます」
「それじゃぁ、学校の制服着たら大変でしょう!?」
「うんうん。制服着て黙ってたら絶対に分からなさそう」
「もう、周りも慣れたみたいです……」
「そうかぁ。あれ? 菜都実どうしたの?」
さっきまで猛烈な勢いで弁当を平らげていたはずの菜都実の表情が、この美保と萌姉妹が現れてから、突然冴えないものになってしまった。
「え? なになに? ほら、揃ったなら早く行かないと席なくなるよ!」
茜音に言われて我に返った様子の菜都実は、荷物を担ぎ上げると列車を待つ列に並んだ。
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「そうなんだぁ、それじゃあもう慣れたって仕方ないよねぇ」
無事に自由席に五人分の席を確保した一行を乗せた新幹線は定刻で東京駅を発車した。
茜音たち三人とも、ここまでそっくりな一卵性の双子を見たのは初めてだったので、どうしても話題はそこに集まってしまった。
「生まれたときからずっと一緒ですから、もう気にならないですよ」
萌が話す。
ここまでの短い時間でも分かったことは、彼女たち双子は見た目は同じでもその性格や趣味などが全く正反対だというものだ。