父親は彼女の身体を調べ、子宮が2つあることを確認した。通常、子宮は1つしか存在しないはずだが、なぜか2つの子宮が存在したのだ。さらに調べてみると、片方は正常に機能していたが、もう片方は機能していなかった。そこで、父親たちは彼女を殺すことにした。
2つの子宮のうち、片方を切除すれば正常な子宮が手に入ると考えたからだ。しかし、その手術は失敗した。なぜなら、摘出されるはずの子宮から新たな生命が誕生したから。その日、彼女の弟は誕生した。
こうして彼女は双子となり、命を取り留めた。そして、それと同時に彼女は実験体となった。
父親の話では、通常の実験は行わない。なぜなら、貴重な検体を無駄にするわけにもいかないし、そもそも前例のないことだったからだ。
しかし彼女は、『成功』した数少ないサンプルだった。
彼女の身体は普通ではなかったのだ。子宮がないのにもかかわらず妊娠し、そして子供を2人も産み出したのだ。それはまさに奇跡だった。父親は喜んだ。そして彼は彼女に告げた。『もっと実験をしたい』と。
彼女は悩んだ末、父親と弟の研究を手伝うことに決めた。自分が生きている理由を知るためでもあったし、単純に彼らが好きだったということもあった。
「私はね、お姉さんになったんだよ!弟がいるの」
「そうなんだ。可愛い?」
「うん、すごく!」
彼女は満面の笑顔を見せ、そう言い切った。真也はその言葉を聞き、安心した。そして思った。冴月が元気そうにしていて良かった、と。彼女は真也の目を見て、「それでね」と話し始める。
「お父さんは私のために研究所を大きくしてくれたの」
「えっ?」
「私の子宮から採取された細胞を使って、新しい薬を開発したんだ」
「……どういう事?」
真也は疑問を口にする。冴月晶の話を聞いていて、彼は違和感を感じていた。
「んとね、私の細胞が他の人に移植できることがわかったの」
「……でも……」
真也は言葉を失う。冴月晶の言っていることは、明らかに常軌を逸していたからだ。
「私、頭おかしいと思うでしょ?」
「……うん」
その言葉に冴月は少しだけ微笑むと、話を続ける。
冴月晶の細胞は、他の人間にも適合した。もちろん、拒絶反応が起こることもなく、臓器を再生させたのだ。さらに、彼女の細胞から取り出されたタンパク質は、ガン治療に有効だということが証明された。それはつまり、彼女の持つ特別な細胞を使えば誰でも不治の病を克服しうるという事だ。
冴月晶の父親はそれに目をつけた。そして、彼女の父親が協力を要請しに来たとき、彼の研究チームはまだ発展途上であった。だから、父親はその申し出を断った。そして彼らは秘密裏に研究を始めた。それは秘密裏といっても、父親以外に知っている人は何人かいたが。
冴月晶はその様子を、ガラス越しに見ていた。
彼女の研究は順調に進んでいた。彼女自身に異変が起きるまでは。
ある日を境に、彼女の身体は異常な変化を遂げた。髪は白くなり、瞳の色が赤く染まった。
「私ね、アルビノだったの」
「じゃあ、目が赤いのは……」
「うん、アルビノだから」
「そっか……」
真也はその答えを聞くと、少し考え込む。そして、恐る恐る質問をした。
「もしかして、その目は……」
真也の言葉に冴月は首を振る。
「違うよ」
「……そうなの?」
真也はホッと胸を撫で下ろす。
「でもね、真也くん」
冴月は真也の手を握り、真剣な表情になる。その手は冷たく、氷のように感じられた。
彼女はゆっくりと口を開いた。
冴月晶の弟は、実験によって生まれた子供だった。
2つの子宮のうち、片方を切除すれば正常な子宮が手に入ると考えたからだ。しかし、その手術は失敗した。なぜなら、摘出されるはずの子宮から新たな生命が誕生したから。その日、彼女の弟は誕生した。
こうして彼女は双子となり、命を取り留めた。そして、それと同時に彼女は実験体となった。
父親の話では、通常の実験は行わない。なぜなら、貴重な検体を無駄にするわけにもいかないし、そもそも前例のないことだったからだ。
しかし彼女は、『成功』した数少ないサンプルだった。
彼女の身体は普通ではなかったのだ。子宮がないのにもかかわらず妊娠し、そして子供を2人も産み出したのだ。それはまさに奇跡だった。父親は喜んだ。そして彼は彼女に告げた。『もっと実験をしたい』と。
彼女は悩んだ末、父親と弟の研究を手伝うことに決めた。自分が生きている理由を知るためでもあったし、単純に彼らが好きだったということもあった。
「私はね、お姉さんになったんだよ!弟がいるの」
「そうなんだ。可愛い?」
「うん、すごく!」
彼女は満面の笑顔を見せ、そう言い切った。真也はその言葉を聞き、安心した。そして思った。冴月が元気そうにしていて良かった、と。彼女は真也の目を見て、「それでね」と話し始める。
「お父さんは私のために研究所を大きくしてくれたの」
「えっ?」
「私の子宮から採取された細胞を使って、新しい薬を開発したんだ」
「……どういう事?」
真也は疑問を口にする。冴月晶の話を聞いていて、彼は違和感を感じていた。
「んとね、私の細胞が他の人に移植できることがわかったの」
「……でも……」
真也は言葉を失う。冴月晶の言っていることは、明らかに常軌を逸していたからだ。
「私、頭おかしいと思うでしょ?」
「……うん」
その言葉に冴月は少しだけ微笑むと、話を続ける。
冴月晶の細胞は、他の人間にも適合した。もちろん、拒絶反応が起こることもなく、臓器を再生させたのだ。さらに、彼女の細胞から取り出されたタンパク質は、ガン治療に有効だということが証明された。それはつまり、彼女の持つ特別な細胞を使えば誰でも不治の病を克服しうるという事だ。
冴月晶の父親はそれに目をつけた。そして、彼女の父親が協力を要請しに来たとき、彼の研究チームはまだ発展途上であった。だから、父親はその申し出を断った。そして彼らは秘密裏に研究を始めた。それは秘密裏といっても、父親以外に知っている人は何人かいたが。
冴月晶はその様子を、ガラス越しに見ていた。
彼女の研究は順調に進んでいた。彼女自身に異変が起きるまでは。
ある日を境に、彼女の身体は異常な変化を遂げた。髪は白くなり、瞳の色が赤く染まった。
「私ね、アルビノだったの」
「じゃあ、目が赤いのは……」
「うん、アルビノだから」
「そっか……」
真也はその答えを聞くと、少し考え込む。そして、恐る恐る質問をした。
「もしかして、その目は……」
真也の言葉に冴月は首を振る。
「違うよ」
「……そうなの?」
真也はホッと胸を撫で下ろす。
「でもね、真也くん」
冴月は真也の手を握り、真剣な表情になる。その手は冷たく、氷のように感じられた。
彼女はゆっくりと口を開いた。
冴月晶の弟は、実験によって生まれた子供だった。