夢見る気持ち

「はい、そんな暗い顔してないで、アップルティーがきたよ」
成美の声で我に返ると、理恵がアップルティーをポットからカップに注いでくれた。
「ほら、元気だして桃子」
「うん……」
「もう、桃子ったら、今日は理恵のことで集まったんだからね」
「わかってるって」
私は一口アップルティーを飲みながら、二人の顔を見回した。理恵は、あの時の公園の時と違って、すっきりとした顔つきをしていた。
「ごめんね、二人には心配かけちゃったみたいで」
「ううん、私は別にいいんだけど」
「私もいいけど」
私と成美がそう言うと、理恵は決めてきたことを明かしてくれた。
「私、今の会社で、もうちょっとがんばることにしたの」
「え、大丈夫なの?」
「大学へは行かないってこと?」
理恵は、未来を見据える目つきで、私達二人を見た。
「大学にも行くわよ。もうしばらく今の会社で働いてお金を貯めてから行こうかと思ってる」
「でも仕事やりづらいなら、すぐに辞めた方がいいんじゃない」
と、成美が言うと、理恵は首を横に振った。
「それもなんか嫌だなあと思ったの。なんか負けたみたいな感じじゃない。それに大学行けるだけのお金も貯まってないしね」
「それはいいけど、仕事辛いのは平気なの」
私は心配になって訊いてみた。
「うん、もう大丈夫。だって大学に行くって目標があるもん。何もないわけじゃないからね」
理恵は笑ってそう言った。
強いなあと思った。羨ましいぐらい強くて、尊敬してしまう。自分だったら、あっというまに逃げ出してしまうに違いない。でも、自分も自分で逃げちゃいけない目標ができたのだ。これからは理恵とも対等でいけるだろうか。
「そんなにはっきり決めてるんじゃ、理恵の方はもう大丈夫ね」
成美は、なんの心配もなさそうに、あっさり言った。
「さあ、桃子の方はどうなのかな? 私らが聞いてあげるわ」
「私の方も大丈夫だよ。むしろ成美の就職活動はうまくいってるの?」
「私はばっちりよ。一流企業のアポもとれたしね」
「へえ、一流企業ってどこ?」
「それはまだ内緒」
「なんで内緒なの」
私が不思議に思って訊くと
「だって入らなかったらかっこわるいじゃん」
と成美は悪びれた様子もなく言い切った。
「そんなに簡単にうまくいくわけないから、そんな心配しなくていいんじゃないの」
「なによ、それ」
「まあまあ、二人とも、紅茶でも飲んで落ち着いて」
怒る成美、笑っていさめる理恵。この関係はいつまでも変わらないんだなあと思うと、なんだか嬉しくなった。
「ちょっと、桃子、何、にやにやしてるのよ」
「ううん、なんでもない」
きっとこれからも私達三人はいい友達でいられる、そう思った。