そうだ。ここでアリスは庭園に行くためのドアの鍵をとるために、いろんな物を食べたり飲んだりするんだった。見ると、アリスは瓶の中の液体を飲み干して、身体がどんどん小さくなっていくところだった。
それからが大変だった。アリスと一緒となって『不思議の国のアリス』の物語を追体験することになったのだ。身体が小さくなったり、ドードー鳥や、ねずみと出くわしたり帽子屋たちのお茶会に出たり、トランプの女王に首をはねよと言われたり、ともかくあらゆることが、一気に押し寄せてきて、目が回りそうだった。
けれども、ストーリーを追う中で、周りの景色は、うっとりとするぐらい綺麗だった。特にトランプの女王達がいる庭園は、あまりの美しさにため息の連続だった。そしていろんな個性の登場人物が、物語の中の人物というより、生きた人間、生き物として私の胸に迫ってきた。彼らは生きてるんだ! そう思ったとたん、急に私は深い森の中にいた。
少し歩いて行くと、白いテーブルクロスのかかった小さなテーブルが置いてあって、その上には、ティーポットやティーカップ、クッキーの、のっかった皿が置いてあった。これからまさにお茶会が開かれるのだろうか。私は、テーブルに備わっていた椅子に座って、このお茶会の主が来るのを待ってみることにした。
しばらくすると、アリスがやってきた。アリスはアリスでも、飼い犬だった私のアリスだ!
「アリス! いったい今までどこにいたの」
私の心配をよそに、アリスは、しっぽを振りながら、ご機嫌な様子で歩いて来た。口には、なぜかスケッチブックをくわえていた。アリスは器用にテーブルの椅子の上に、ぴょんと跳びのり、くわえていたスケッチブックをテーブルの上に置いた。そうして、ワンと一声吠えた。アリスは、つぶらな瞳で私の顔をまじまじと見つめてきた。何か言いたそうな表情をしている。
「何、アリス」
アリスは、口でスケッチブックを開くと、足をぺたんと押しつけた。その後アリスはその足をどかすと、ワンとまた吠えた。何かと思って、その足のどいたところを見ると、驚いた。
今まさに追体験したアリスの物語が絵として描かれているのだ。それはとても綺麗な色彩で描かれていた。
「そうか! これなんだね、アリス」
私はとっさにそんなことを叫んだ。一瞬アリスが、にっこり笑ったような気がした。まるでそれは、チェシャ猫みたいな笑いだった。
ふと気づくと、私は自分の部屋で寝ていた。そばにはアリスのスケッチブックが落ちていた。やっぱり夢だったんだ。そう思ったけれど、私の中には確かなものがあった。私の目指すもの。それは……。
「挿し絵画家」
声に出してみると、とてもしっくりくるような気がした。もちろん、油絵も好きだけれど、そうじゃない分野もいいんじゃないかと思えた。くすんでいた未来が、一瞬だけ鮮やかに輝き、私はアリスに感謝した。
「ありがとう、アリス」
スケッチブックのアリスは、穏やかな表情を浮かべ、私に微笑んでいた。
それからが大変だった。アリスと一緒となって『不思議の国のアリス』の物語を追体験することになったのだ。身体が小さくなったり、ドードー鳥や、ねずみと出くわしたり帽子屋たちのお茶会に出たり、トランプの女王に首をはねよと言われたり、ともかくあらゆることが、一気に押し寄せてきて、目が回りそうだった。
けれども、ストーリーを追う中で、周りの景色は、うっとりとするぐらい綺麗だった。特にトランプの女王達がいる庭園は、あまりの美しさにため息の連続だった。そしていろんな個性の登場人物が、物語の中の人物というより、生きた人間、生き物として私の胸に迫ってきた。彼らは生きてるんだ! そう思ったとたん、急に私は深い森の中にいた。
少し歩いて行くと、白いテーブルクロスのかかった小さなテーブルが置いてあって、その上には、ティーポットやティーカップ、クッキーの、のっかった皿が置いてあった。これからまさにお茶会が開かれるのだろうか。私は、テーブルに備わっていた椅子に座って、このお茶会の主が来るのを待ってみることにした。
しばらくすると、アリスがやってきた。アリスはアリスでも、飼い犬だった私のアリスだ!
「アリス! いったい今までどこにいたの」
私の心配をよそに、アリスは、しっぽを振りながら、ご機嫌な様子で歩いて来た。口には、なぜかスケッチブックをくわえていた。アリスは器用にテーブルの椅子の上に、ぴょんと跳びのり、くわえていたスケッチブックをテーブルの上に置いた。そうして、ワンと一声吠えた。アリスは、つぶらな瞳で私の顔をまじまじと見つめてきた。何か言いたそうな表情をしている。
「何、アリス」
アリスは、口でスケッチブックを開くと、足をぺたんと押しつけた。その後アリスはその足をどかすと、ワンとまた吠えた。何かと思って、その足のどいたところを見ると、驚いた。
今まさに追体験したアリスの物語が絵として描かれているのだ。それはとても綺麗な色彩で描かれていた。
「そうか! これなんだね、アリス」
私はとっさにそんなことを叫んだ。一瞬アリスが、にっこり笑ったような気がした。まるでそれは、チェシャ猫みたいな笑いだった。
ふと気づくと、私は自分の部屋で寝ていた。そばにはアリスのスケッチブックが落ちていた。やっぱり夢だったんだ。そう思ったけれど、私の中には確かなものがあった。私の目指すもの。それは……。
「挿し絵画家」
声に出してみると、とてもしっくりくるような気がした。もちろん、油絵も好きだけれど、そうじゃない分野もいいんじゃないかと思えた。くすんでいた未来が、一瞬だけ鮮やかに輝き、私はアリスに感謝した。
「ありがとう、アリス」
スケッチブックのアリスは、穏やかな表情を浮かべ、私に微笑んでいた。


