そこまで考えて、時計を見ると、五時を過ぎていた。この間描いたあのワンちゃん達は今日も散歩に来るだろうかと思って、外を見やると、さっきの女子高生が一人で未だにベンチに座っていた。どうやら部活動というわけでもなさそうだ。かといって、誰かを待っているわけでもない。そして大きな荷物を見ると、ひょっとしてという思いがよぎっていく。まさかとは思うけど、家出してきた子とかじゃないよね。そう考えると、心配になってきた。こういう場合って声をかけた方がいいんだろうか。見ず知らずの子に、何しているのなんて訊くのは、ちょっとハードルが高いけど。知らん振りしていようか、それとも……。窓の外を見るとぼんやりと座っている女子高生の後ろ姿は、寂しげだった。
『やっぱり声をかけよう』
私は気持ちを固めると、喫茶店のお会計を払って、外へと出た。公園に足を運ぶと、すぐに女子高生の姿が目に入った。うつむきかげんの彼女の顔を見て、私は驚いた。
「美香さん?!」
私の声を聞いて、美香さんは、顔をあげた。なぜ私がここにいるのかと、美香さん自身も驚いたような様子だった。
「なんだ美香さんだったのか。荷物が多いから、私はてっきり、家出でもしてきた子なのかと思っちゃった」
私が、ほっとして笑うと、美香さんの顔が張りついたように、こわばった。そして、しゅんと縮こまって彼女は下を向いた。
「まさか……。ほんとに家出してきたの?」
私は目を大きく見開くと、彼女をまじまじと見つめた。しばらくして美香さんは、はいと小さくうなずいた。私は美香さんの隣に座りながら、訊いた。
「なんで家出してきたの」
「親がどうあっても美大には行くなって聞いてくれないんです。画家になんかなれるわけないだろの一点張りで」
美香さんの言葉を聞きながら、まるでそれは自分にも言われているような気がして、胸が痛かった。今の私に何が言えるだろうか……。
「ともかく家出はよくないよ。親御さんが心配するよ」
「でもこうでもしないと私の本気が伝わらないと思うんです」
一瞬、松林教授の言葉が浮かんでくる。
『教員、学芸員、それとも……画家かい?』
私は美香さんと違って、美大に行かせてもらっているけど、それなのに画家になりたいと言えずにいる。心が弱いのか、それとも才能がないだけないのか、それとも両方ともないからなのか。それを考えると美香さんがとても羨ましかった。どうしても画家になりたいと言える美香さんの強さと才能が。
『やっぱり声をかけよう』
私は気持ちを固めると、喫茶店のお会計を払って、外へと出た。公園に足を運ぶと、すぐに女子高生の姿が目に入った。うつむきかげんの彼女の顔を見て、私は驚いた。
「美香さん?!」
私の声を聞いて、美香さんは、顔をあげた。なぜ私がここにいるのかと、美香さん自身も驚いたような様子だった。
「なんだ美香さんだったのか。荷物が多いから、私はてっきり、家出でもしてきた子なのかと思っちゃった」
私が、ほっとして笑うと、美香さんの顔が張りついたように、こわばった。そして、しゅんと縮こまって彼女は下を向いた。
「まさか……。ほんとに家出してきたの?」
私は目を大きく見開くと、彼女をまじまじと見つめた。しばらくして美香さんは、はいと小さくうなずいた。私は美香さんの隣に座りながら、訊いた。
「なんで家出してきたの」
「親がどうあっても美大には行くなって聞いてくれないんです。画家になんかなれるわけないだろの一点張りで」
美香さんの言葉を聞きながら、まるでそれは自分にも言われているような気がして、胸が痛かった。今の私に何が言えるだろうか……。
「ともかく家出はよくないよ。親御さんが心配するよ」
「でもこうでもしないと私の本気が伝わらないと思うんです」
一瞬、松林教授の言葉が浮かんでくる。
『教員、学芸員、それとも……画家かい?』
私は美香さんと違って、美大に行かせてもらっているけど、それなのに画家になりたいと言えずにいる。心が弱いのか、それとも才能がないだけないのか、それとも両方ともないからなのか。それを考えると美香さんがとても羨ましかった。どうしても画家になりたいと言える美香さんの強さと才能が。


