夢見る気持ち

理恵は肩にかけたショルダーバックをかけ直しながら、そう言った。
やっぱりあの時、理恵は大学に行きたかったんだ。あの時も今も力になるよと言えない自分自身の無力さに情けなくなった。それでも私は何かを言わなくちゃいけない。そう思って、ありのままの自分の気持ちを伝えた。
「もし理恵が今の会社を辞めて大学に行くことになっても、理恵の行きたかった大学と私が今行っている大学じゃ、分野も違うから助言も何もできないけれど。でも理恵とは幼稚園の頃からのつき合いだから、理恵には芯の強さがあるのが、私には分かる。理恵は、今は会社行きづらいって言ってるけど、理恵だったらどんな困難も乗り越えて行ける強さがあると思うよ。彼のおかげで仕事が乗り越えられたって言ってるけど、それだけじゃないと思うよ。もともと理恵にはそういった能力があるんだと思う。だから、理恵が、がんばって今の会社にいるのもいいし、思い切って辞めて大学に行くのもありかもしれない。今は焦らないで、ゆっくり考えることが必要だと思うよ」
 理恵は私の言葉に、じっと耳を傾けて聞いてくれた。熱心に聞く理恵の瞳には、一粒の涙が浮かんでいた。理恵は私の知らないところで苦しんでいたのだ。背伸びをしながら、がんばって、がんばっていたのだ。それなのに、私は友として気づいてあげられなかった。悔しい思いがふとこみあげてきた。
「ありがとう。そう言ってくれてありがとう、桃子」
 涙を見せて、くぐもった声で言う理恵に、私は首を振った。
「ううん、ごめんね、理恵。いろんなこと気づいてあげられなくてごめんね」
「それは私も同じだよ。桃子のことも気づいてあげられなかったもの」
 理恵は涙を流しながらも、笑顔になってそう言った。
「しかたないよ。私達は、みんな変わっていくんだもん」
「そうだね」
 理恵は、遥か遠くを見つめながら、呟いた。